朗読者 の商品レビュー
一読の価値あり
ナチスによる、数々の歴史犯罪を背負った戦後ドイツ。今も深く残る虐殺の爪痕に対して、またそれを行った者に対して、現在を生きる者たちはどう向かい合うべきか?贖罪とは何か?いくつもの問いかけを包み込む一冊。
yui
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ハンナはディスレクシアなんかな〜と思って読んでいたらやっぱりそうで、文字から物語に触れることができない彼女には朗読してもらって知る物語たちは、読める人には計り知れないくらい感情を揺り動かすものだったんだなと思った。 文盲であるハンナがここまで生きてきて、それをひた隠しにして裁判に臨んだことは本当に大変で過酷で壮絶だったろうし、真摯に罪を償おうとしている姿勢も読んで取れたけど、でもわたしはどうしても、死んでしまったら全て無かったことになる、生きて償うべきだって思ってしまう。ハンナほど罪に向き合っていた人ならなおさら。まあこれも何の当事者でもない外野だからこういう感想を持ってしまうんだろうけどな〜
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映画を観てて,原作を読んだ。ハンナシュミッツの生涯。15のときに出会った大事な人。その人の秘密と罪。ネタバレは是非なしで読むことをおすすめします。
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ハンナはミヒャエルに対して、どんな気持ちで抱いていたのか。若い頃に行った行為への贖罪の気持ち?だが、裁判の光景から、収容所の女性に対する態度と変わりはなく、どちらも抗えない行為であり、彼女の意思がより、人生を受動的に受け止めてきた結果ではないか。
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小学生から高校生ぐらいまで使っていた机の右上の鍵がかかる引き出しにそっとしまっておきたいような、大切なお話に出会えた。
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以前、大学のゼミでお世話になった教授から「愛を読む人」という映画が「教育」を考えるうえで大変参考になるし、映画としても面白い作品だ、と聞いたことがあって気になっていました。 その映画の原作が本書です。 恋愛小説のひとつとしてネットで紹介されていましたが、この本が語るテーマは様々...
以前、大学のゼミでお世話になった教授から「愛を読む人」という映画が「教育」を考えるうえで大変参考になるし、映画としても面白い作品だ、と聞いたことがあって気になっていました。 その映画の原作が本書です。 恋愛小説のひとつとしてネットで紹介されていましたが、この本が語るテーマは様々で、とても奥深い作品だと思います。 恋愛に没頭する思春期の青年の昂ぶり、周囲の目を意識して恋人を「裏切る」ことへの罪悪感、家族からの自立、生涯の恋人との別れ、ナチス支配下でのユダヤ人迫害をめぐる裁判と「罪」と「許し」の意味、教育を受けることの意味、本当の意味で「個人を尊重する」とはどういうことか。 なにを求めて、どのような人生を歩むのか、非常に考えさせられる作品でした。 前半部分は性行為の描写も少しあるので、中学生には少し薦めにくい本ではありますが、大学生や大人向けの小説としてぜひ多くの方に読んで欲しいと思える作品です。 人生の中では「後悔」することは多々あるのですが、それを「乗り越える」のではなく、その思い出とともに生きてゆくこと、そしてそのことを受け入れることこそが人生なのだと示されたように思います。
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15才のミヒャエル・ベルクと36才の路面電車の車掌ハンナ・シュミッツの出逢いと熱烈な恋愛に始まる物語は、ハンナの突然の失踪、戦争犯罪裁判の法廷での再会、そして悲劇的結末へと進む。個人に選択の自由のない戦時下で命令や規則に従って行なった行為を断罪する裁判で、ハンナが裁判長に「あなた...
15才のミヒャエル・ベルクと36才の路面電車の車掌ハンナ・シュミッツの出逢いと熱烈な恋愛に始まる物語は、ハンナの突然の失踪、戦争犯罪裁判の法廷での再会、そして悲劇的結末へと進む。個人に選択の自由のない戦時下で命令や規則に従って行なった行為を断罪する裁判で、ハンナが裁判長に「あなただったら何をしましたか?」と問う場面、命令に逆らい処罰されることを選択する勇気がある人間がどれほどいるのか、また、犯罪が行われた時点で禁止されていなかった行為を、後に成立した法律によって裁く「遡及的処罰の禁止」についてミヒャエルは「当時は収容所職員の行動が刑法に照らされることなどなかった点を重視すべきなのか? 法律とは何だろう?」と苦悩する。ルールに従って戦った後にルールが変更され敗者となる不条理。何故ミヒャエルはハンナの秘密に辿り着きながらそれを露わにすることを躊躇ったのか。重罪覚悟で罪を認め、自由への扉を永遠に閉じたハンナの心理的葛藤。独房に残されたナチの犠牲者やナチの研究書が彼女に与えた影響等々、読み解くのに必要な知識不足を痛感させられた。
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ハンナ。最初に戻って会話を拾い読み。読み終わっても涙が止まらず余韻に浸っている。正直この本を読むまでアウシュビッツで働いていた人のこと、その後の人生を想像したことはなかった。その時代を生きた人達の背負ったものにショックを受けている。これは別の本でも掘り下げてみたい。年の差21歳。...
ハンナ。最初に戻って会話を拾い読み。読み終わっても涙が止まらず余韻に浸っている。正直この本を読むまでアウシュビッツで働いていた人のこと、その後の人生を想像したことはなかった。その時代を生きた人達の背負ったものにショックを受けている。これは別の本でも掘り下げてみたい。年の差21歳。この差がなければこの関係は無かっただろうし、物理的にも精神的にもかけ離れていながらもお互いの人生にかけがえの無い存在として支え合っているのって、ありきたりだけど「愛」を感じる。この強烈な出逢いが人生にあったってことは羨ましくもある。別の作品も読んでみよう。
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主人公が、彼女の隠していたことに、裁判まで気付かなかったのは恋のせいか。裁判の関係者、彼女の弁護士すら、それに気付かなかったのは物語の都合か。 他人に対して、当たり前にできることだと思い込んでいて気付けないことが、自分にも沢山あるのだろうと思った。
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この小説をどう読めばいいだろう。 この小説で起こった出来事を受け止め、いったい主人公達の身に何が起きたのかを、正確かつ理性的に判断することはできるだろうか。 ハンナは「読み書きができないと知られるのを恐れて」18年の独房生活を送ることになるが、果たしてその恥の概念が、自分を刑務...
この小説をどう読めばいいだろう。 この小説で起こった出来事を受け止め、いったい主人公達の身に何が起きたのかを、正確かつ理性的に判断することはできるだろうか。 ハンナは「読み書きができないと知られるのを恐れて」18年の独房生活を送ることになるが、果たしてその恥の概念が、自分を刑務所に留め続けるほど罪深いものであったのだろうか?何故それほどまで長く監獄の中にいることを選択したのか? 彼女はナチス時代とミヒャエルと過ごした時代に、朗読を所望している。これは明らかに知識を欲する行為であり、彼女も身の回りの世界を深く理解したいと感じていた。その後18年間の刑務所暮らしの中でやっと読み書きを覚えた彼女は、ナチスの被害者と看守たちの物語を読み漁った。 私は、ここで彼女に自責の念が生じ、彼女を苛んでいったのではないかと思う。だから監獄の中で居場所が出来そうになると、逃げるように孤独の中に身を置いた。釈放間近になり、ミヒャエルとの新しい居場所が出来る寸前、自ら命を絶った。 何故そこまでストイックな生き方をしたのか?それがナチスの被害者に対する彼女なりの贖罪だったのか?この先の真相は闇の中であり、読む人によって異なる結論に至ると思う。 この本は多くの問を読者に投げかける。ミヒャエルが蜜月の思い出の中で美化した彼女と、ナチスの親衛隊で囚人を監視していた時の彼女は、果たして同一人物と言えたのだろうか?彼女は囚人に対して実際に残酷な仕打ちをしたのだろうか?ホロコーストは、冷酷な軍人が無実のユダヤ人を嬲る行為ではなく、判断力も知性も無い一般人が、戦争という特殊な条件下で麻痺した末に行った、ただの無考えの行動ではないのか? 「あなただったらどうしましたか?」ハンナが法廷で裁判長に投げかけた質問は、この小説の読者にも向けられている。
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