読書術 の商品レビュー
「読まない事も読書の…
「読まない事も読書の一つ」。こんなキュートな発言をするとは…。加藤周一侮れません。
文庫OFF
著者がみずからの読書経験をもとに、精読術や速読術、さらに外国語の本との向きあいかた、新聞や雑誌、難解な本とのつきあいかたなどを語っている本です。 戦後日本を代表する知識人の一人である著者が、平明な語り口で若い読者に向けて読書のたのしみかたを開陳するという内容になっています。著者...
著者がみずからの読書経験をもとに、精読術や速読術、さらに外国語の本との向きあいかた、新聞や雑誌、難解な本とのつきあいかたなどを語っている本です。 戦後日本を代表する知識人の一人である著者が、平明な語り口で若い読者に向けて読書のたのしみかたを開陳するという内容になっています。著者は巻末の「あとがき、または30年後」で、「あらためて読み返してみると、三十年前の私の議論の大筋は今でもそのまま通用する」と感じたことを明かし、「それならば、出版社が変って、新しい読者も得られるだろう」と考えて、本書の再刊を決意したという経緯を述べています。 なるほど著者がいうように、「そもそも「読書術」なるものが、三十年やそこらで簡単に変るはずもない」のでしょうが、本書のたどった経緯は、著者の生きた時代そのものの変化を映し出しているのではないかとも思えます。 本書は光文社の「カッパ・ブックス」から刊行された本で、編集者から「高校生に向けて「読書術」という本を書かないか、書けば新書版の「ベストセラー」にしてみせる」と説得されて、執筆されることになったという経緯が明かされています。著者は、政治的には戦後啓蒙の潮流と並走しつつも、戦前の教養主義の雰囲気をのこしている著述家のような気がするのですが、大衆化の路線を明確にとって商業的な成功を収めた「カッパ・ブックス」というレーベルとは、二回りくらい時間差があるようにも感じます。そうした本書が、1990年代に岩波同時代ライブラリーで、さらに岩波現代文庫から再刊されることになったという経緯にも、いわゆる「教養」がたどることになった歴史がかいま見られるようにも感じました。
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【信州大学附属図書館の所蔵はこちらです】 https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BA49242879
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本屋さんで、何となく手に取った本。古い本だし、読めるか自信がなかったけど、どうにか読み通した。(一部、興味が持てなかったところもあった) 使う言葉に馴染みがなく、ググリながら読み進めた。それにしては、部分的に引き込まれ、今、私が関心を持っている領域で出てくる事象と重なる部分が...
本屋さんで、何となく手に取った本。古い本だし、読めるか自信がなかったけど、どうにか読み通した。(一部、興味が持てなかったところもあった) 使う言葉に馴染みがなく、ググリながら読み進めた。それにしては、部分的に引き込まれ、今、私が関心を持っている領域で出てくる事象と重なる部分が多く、唸りながら読めた。 もう少し時を置いて、再読したい。
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日頃からある程度の読書をしている身からすると、著者の大体の認識が理解できる、だが再認識する意味でも読んでいて無駄ではなかったと思う。
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時々、こういった読書についての本が読みたくなります。古典はゆっくり読む、わからない本は読まない(読んで理解できないものは自分には必要がない本であるため)というのが目新しく感じました。また「パリに住んでいた当時、現代劇を片っ端から見たが、二年の後にうちに興味を失い、というのも皆うち...
時々、こういった読書についての本が読みたくなります。古典はゆっくり読む、わからない本は読まない(読んで理解できないものは自分には必要がない本であるため)というのが目新しく感じました。また「パリに住んでいた当時、現代劇を片っ端から見たが、二年の後にうちに興味を失い、というのも皆うちからどれも同じような劇的対立しか含んでいないと思うようなり、同時に古典劇に強い興味を持つようになった。古典劇以外に見たいものがなくなってしまった。それはこれまでの沢山の現代劇を見た経験によって発見されたことである」と著者が述べている箇所があり、私も近年現代のベストセラー作品から遠ざかっているのは恐らく、同じような理由なのだろうと納得しました。何を読んで、何を読まないかの選択は、限られた時間を有効に使うためにもかなり重要だと改めて思いました。
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たくさん読まなければわからないことがある。だから速く読む。当たり前だけど極めて合理的。速く読むのが目的ではない。 読みたい本、好きな文章だから、わかりやすく、興味がないから難しい本になる。 読書の楽しみ。相手もいらない。お金もかからない。
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何を読んだら良いのか、ではなくどう読んだら良いか、を説いてくれる読書術。 古典は遅く読む、現代文学は速読する、なんなら本を読まないことも読書術のひとつ、わからない本は読まない…などなど、多岐にわたり筆者の読書術が展開されている。 中でも面白いところをピックアップする。 ・蔵書...
何を読んだら良いのか、ではなくどう読んだら良いか、を説いてくれる読書術。 古典は遅く読む、現代文学は速読する、なんなら本を読まないことも読書術のひとつ、わからない本は読まない…などなど、多岐にわたり筆者の読書術が展開されている。 中でも面白いところをピックアップする。 ・蔵書家はかならずしも多読家ではありません。(p.98) ・事実からは「見出し」は出てこないで、「見出し」をつくる者の見方から「見出し」が出てくるのです。(p.161) ・自分のわからない本はいっさい読まないということ、そうすれば、絶えず本を読みながら、どの本もよくわかることができます。(p.173) ・要するに、私にとってむずかしい本は、その本が悪い本である、不必要な本であるか、どちらかです。(p.207) 難しい本を読みがちで、分からない時は自分の理解度の問題だと思っていたが、あえて読まないという選択肢が新しくて衝撃だった。 今後理解のできない本に出会ったら、一旦脇に置いておくことにする。 また、速読のひとつとして書評を活用するとあった。普段本を読まないような人でも短い書評であれば読めるのではないか?書評で読書体験できる新たなビジネスモデルを考えるのも楽しそうだ。
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加藤周一(1919~2008年)氏は、東京帝大医学部卒の医学博士(専門は内科学、血液学)、評論家。上智大学教授、イェール大学講師、ブラウン大学講師、ベルリン自由大学およびミュンヘン大学客員教授、コレージュ・ド・フランス招聘教授、ブリティッシュコロンビア大学教授、立命館大学国際関係...
加藤周一(1919~2008年)氏は、東京帝大医学部卒の医学博士(専門は内科学、血液学)、評論家。上智大学教授、イェール大学講師、ブラウン大学講師、ベルリン自由大学およびミュンヘン大学客員教授、コレージュ・ド・フランス招聘教授、ブリティッシュコロンビア大学教授、立命館大学国際関係学部客員教授、立命館大学国際平和ミュージアム館長などを歴任。北米、欧州各国に在住し、英語、仏語、独語なども操った、戦後日本を代表する国際的知識人の一人。 本書は、1962年に『頭の回転をよくする読書術』(光文社)として刊行されてベストセラーとなり、2000年に岩波現代文庫で復刊されたもの。 本書では、著者の、自然科学から人文科学までの幅広い分野の研究、日本語に留まらない各国言語との接触などの経験に基づいて、おそく読む「精読術」、はやく読む「速読術」、本を読まない「読書術」、外国語の本を読む「解読術」、新聞・雑誌を読む「看破術」、むずかしい本を読む「読破術」という、多角的な視点からの読書術が披露されている。また、もともと口述筆記により作られているため、表現もソフトで非常に読み易い。(丁寧すぎて少々くどさを感じるくらいである) 私はこれまで、『本を読む本』(モーティマー・アドラー他)、『現代読書法』(田中菊雄)、『読書について』(ショウペンハウエル)、『読んでいない本について堂々と語る方法』(ピエール・バイヤール)、『本はどう読むか』(清水幾太郎)、『多読術』(松岡正剛)、『読書力』(斎藤孝)、『本は10冊同時に読め』(成毛眞)等々、古今東西の多数の読書論・読書術の本を読んできて、本書から新たに驚くべき発見があったわけではないが、以下のような気付きはあった。 ◆日本語は漢字、ひらがな、カタカナが混じっているので、ページに目を晒すだけで、重要な漢字やカタカナの単語を見つけることができ、速読に役に立つ。 ◆たくさんの本を読むためには、一冊ではなく、同時に数冊読むほうがよい。 ◆「本を読まない法」の根本は、目的をはっきりさせて、目的に適う本を選び、そのほかの本は一切読まないこと。 ◆政治・社会問題を扱った本・雑誌・新聞は、できるだけ違った種類のものを2つ読むこと。 ◆読んだことのない本を読んだ振りをしたり、よくわからなかった本を分かった風に語ることは知的「スノビズム」の表れであり、文化の向上のためには大切なことである。 ◆難しい本、分からない本は、その本が悪い本か、自分にとって不必要な本である。よく書かれた本で、本当に必要な本であれば、それが難しい、わからないということは本来ないはず。等。 出版から60年を経ても通用する、幅広くオーソドックスな読書術といえる。 (2021年5月了)
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