ポプラの秋 の商品レビュー
ゆったりと静謐な時間が流れる作品。映画化もされている。 お葬式というのが作品を貫くテーマになっているが、決して喪失感が滲み出るわけではなく、むしろ過去の思い出が蘇ってきてむしろ明るい雰囲気すら持っている。 日常生活のように慌ただしくドタバタする作品も面白いが、この作品のよう...
ゆったりと静謐な時間が流れる作品。映画化もされている。 お葬式というのが作品を貫くテーマになっているが、決して喪失感が滲み出るわけではなく、むしろ過去の思い出が蘇ってきてむしろ明るい雰囲気すら持っている。 日常生活のように慌ただしくドタバタする作品も面白いが、この作品のようにゆっくりとした雰囲気を味わうのも時にはいいものだと思う。
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本当に優しくて、せつなくて、人が恋しくなる本だと思う。私もおばあさんのようになりたいなぁ。 また来年ので秋に再読したい。 『夏の庭』も大好きだけど、こちらも好き。 何だろう。この、悲しいような、せつないような、でもあったかくて、清々しい読後感。
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はあ、ってため息の出るお話 疲れるとか、つまらないとかでは全くなくて ただただ切なくて、美しくて、優しい 愛は、暖かくて幸せで冷たくて苦しい
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
“手紙”は時に、単なる伝達手段以上の意味を持つ。 そんなことを気付かされた小説。 『ポプラの秋』 湯本香樹実 (新潮文庫) 主人公の千秋は小学一年生。 父親を亡くしたばかりで、母とともにポプラ荘に引っ越してきた。 自分が死んだらあの世へ手紙を届けてやる、という大家のおばあさんに父への手紙を預けるため、千秋は毎日、亡き父に宛てて手紙を書く。 千秋は、父親が亡くなったことの意味がまだ理解できずにいた。 まるで蓋の開いたマンホールに落ちてしまったかのように、突然いなくなってしまった父。 千秋は、自分の周りに無数にあるかもしれないマンホールに怯え、学校に行けなくなっていたのだ。 ポプラ荘の大家のおばあさんは、よくある物分かりのよい優しいお年寄りとはちょっと違う。 強かでたくましい。 千秋の本当の祖母(母の実の母親)も、おじ夫婦の家では、“何もできない弱い年寄り”を演じているが、実はしっかりとした考えを持っている女性だった。 理解の乏しい者、弱い者、助けを必要とする者、という簡易な枠でつい括られてしまいがちな年寄りと子供が、湯本さんの小説では、実に個性的に生き生きと描かれている。 さて、十八年後、ポプラ荘のおばあさんが亡くなる。 その時のポプラ荘の場面は圧巻だ。 やっぱりおばあさん、只者じゃなかった! おばあさんの家には、千秋と同じようにおばあさんに手紙を預けたたくさんの人たちが集まっていた。 こわばった顔をしている人や、泣いている人など誰もおらず、あちこちに所狭しと座り込み、のんびりと世間話をしながらおばあさんの思い出を語り、ゆったりとお茶を飲んでいる。 爽やかな秋の日差しの中、一面に桜の花の模様のついた派手なぴかぴかの大型バスで火葬場へ。 まるで遠足に行く子供のように楽しそうなお年寄りたち。 こんなふうに送られたら幸せだろうな。 亡くなった人に手紙を書くということは一見無意味なことのように思えるけれど、これで救われた人がいっぱいいて、本当はもうあの世へ手紙を届ける必要はないのかもしれないけれど、おばあさんは、律儀に手紙を全部持って天国へ旅立った。 最後の夜、千秋は、母が父に宛てて書いた当時の手紙を読み、父の死の真相を知る。 ありったけの睡眠薬を鞄に詰めて、ポプラ荘に帰ってきた千秋だったが、十八年たってやっと母とともに父の死を受け入れることができたのだった。 夫とよく似ている娘を、夫と同じところに行くのではないかと心配する母の手紙は、とてもリアルで胸に迫る。 それだけでなく、七歳の幼い千秋の発する言葉の一言一言も、実際にあったことのようにこれまたリアルで、大人から見た子供、ではなく、本当の子供の姿を書いているように思える。 「手紙というのは、何かに運ばれて行ってこそ、書いた者の心がほんとうに解き放たれるもの」 おばあさんの言葉だ。 喪失感、というのは何も人を亡くした時だけのものじゃない。 よほど幸せな人生だった人でなければ、誰もが多かれ少なかれ感じたことがあるのではないだろうか。 そんな人のそばに優しく寄り添ってくれる、これはそんな物語だと思う。 湯本さんの書くお話はとても好き。
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父親を亡くした少女。母と二人、ポプラの木があるアパートに移り住む。 そこで繰り広げられる大家のおばあちゃん、隣人との心暖まる交流を描いた話。 戸惑いや悩みを抱えながらも人を大切に思う気持ち、何かを守る気持ちが少女に芽生えていく、そんな場面をポプラの木が揺れる風や光、空気感を感じ...
父親を亡くした少女。母と二人、ポプラの木があるアパートに移り住む。 そこで繰り広げられる大家のおばあちゃん、隣人との心暖まる交流を描いた話。 戸惑いや悩みを抱えながらも人を大切に思う気持ち、何かを守る気持ちが少女に芽生えていく、そんな場面をポプラの木が揺れる風や光、空気感を感じながら読めた。 隣人との関わりや、オサム君との遊び、おかあさんへの思い、おばあちゃんへの思いなど日々の思いをお父さんへ綴る手紙には涙腺が緩む。 ずっと少女目線で読んでいくが、最後のお母さんからの手紙でお母さんの娘への思い、お父さんへの思い、これまで生きてきた葛藤、苦難の時間を感じ、お母さん目線になる。 人は人を許し、受け入れながら前を向いて生きていく大切さを感じた。 読んでいて穏やかな時間が過ごせる本です。
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季節を感じさせる物語。少女の心の傷が癒やされ、成長していく。あたたかい気持ちになりました。また秋になったら読みます。
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夏の庭に続く第2作目。 自分のオススメ欄に出できて鵜呑みにして読んだ、 サラッと読めた最後の方が衝撃だった この事実を持って再読すればなにか違う事が分かる
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幼くした父を亡くした子と母と、移り住んだ先にいた少し風変わりな大家のお婆さん。 「きっとまた、いい日が来る。だって私、まだ生きてるんだから。」
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さらりと読んだ。 疲れ休め(ややこしい読書の後)にはもってこいの作者の資質。こういう癒し系の効用というところ。 ロバート・A・ハイラインの『夏の扉』しかり、スザンナ・タマーロ『心のおもむくままに』もそう。 ポプラの木を見に行きたくなった。
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夏の庭以来二作目。 どちらもお年寄りと子供の交流を 優しく書いた作品で どちらがいいかと聞かれるとなかなか甲乙つけ難い。 夏の庭はやってることが結構インパクトがあるので 印象に残りやすいかな。 こちらは細々したことはあるものの 長い人生を見続けた、という感じなので 穏やかな感...
夏の庭以来二作目。 どちらもお年寄りと子供の交流を 優しく書いた作品で どちらがいいかと聞かれるとなかなか甲乙つけ難い。 夏の庭はやってることが結構インパクトがあるので 印象に残りやすいかな。 こちらは細々したことはあるものの 長い人生を見続けた、という感じなので 穏やかな感じがする。
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