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不実な美女か貞淑な醜女か の商品レビュー

4.2

132件のお客様レビュー

  1. 5つ

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  2. 4つ

    35

  3. 3つ

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2018/08/09

逐次通訳と同時通訳では求められるものが違うが、通訳と翻訳の差よりははるかに近しい関係だと思っている。通訳を生業とするときの自分の向かっている方向、取り組むスタンスは決して明後日の方向を向いているものではないのだろうな、とちょっと安心することができた。 読み物として、かなり面白く、...

逐次通訳と同時通訳では求められるものが違うが、通訳と翻訳の差よりははるかに近しい関係だと思っている。通訳を生業とするときの自分の向かっている方向、取り組むスタンスは決して明後日の方向を向いているものではないのだろうな、とちょっと安心することができた。 読み物として、かなり面白く、興味深いエッセイだと思います。

Posted byブクログ

2019/12/14

何をどこまでどう訳すか。 同時通訳中、未知の言葉に出くわしたら、ダジャレを連発されたら、ののしり・シモネタ・差別語には…。 いやはや、日々の努力である。機転である。そしてきっと度胸も。 ご本人及び同業者たちの実感のこもった体験談から小咄裏話まで、あふれそうなほどにびっしり! ど...

何をどこまでどう訳すか。 同時通訳中、未知の言葉に出くわしたら、ダジャレを連発されたら、ののしり・シモネタ・差別語には…。 いやはや、日々の努力である。機転である。そしてきっと度胸も。 ご本人及び同業者たちの実感のこもった体験談から小咄裏話まで、あふれそうなほどにびっしり! どれをとってもそのままコントになりそうだし、実際寸劇仕立てのも。 時に殺意を覚えるともいうこれらの話に、絡めて語られているのが論理的に解析された彼女の通訳論。 バサバサときっぷのいい米原節炸裂である。 まだまだたくさんの引き出しをもっていそうな米原さんの話にもう触れることができないのかと思うと、つくづく残念である。 通訳さんって、もっと尊敬されてもいいんじゃないかしら。

Posted byブクログ

2018/03/31

図書館でお借りしたんだけど、これは買わないとダメな本だ。ハードカバーほしいけど文庫本しかないらしい。600円なんて安すぎて申し訳ない、と思ってしまう… 実は大学の時、副専攻で翻訳コース(通訳コースが別にあったので、通訳は学ばず翻訳に特化)をとっていたのです。幸い、卒業してから今...

図書館でお借りしたんだけど、これは買わないとダメな本だ。ハードカバーほしいけど文庫本しかないらしい。600円なんて安すぎて申し訳ない、と思ってしまう… 実は大学の時、副専攻で翻訳コース(通訳コースが別にあったので、通訳は学ばず翻訳に特化)をとっていたのです。幸い、卒業してから今まで、仕事で日常的に英語を使う機会に恵まれ、自分が通訳することはほぼないけれども通訳者さんに依頼をして、通訳のお仕事を目の当たりにする機会も時折あります。初めて通訳者さんをお願いしたあの日から今日まで、私にとって通訳者さんは超能力者。どういう頭の構造をしていれば、外国語を聞くことと日本語を話すこと、あるいはその逆を同時にこなしてしまうのか、あのブラックボックスでどんな処理プロセスが走っているのか。。。その疑問に応えてくれる、貴重な資料。 実用書かエッセイかこれまた悩ましいんだけど、本当にすごくためになる、かつときどきふふって笑ってしまう通訳お仕事エッセイ。タイトルの「不実な美女」「貞淑な醜女」は通訳のアウトプットを表現したもので、「原文を裏切っているが美しく整った訳文」と「原文に忠実ではあるが、翻訳的でぎこちない訳文」のことなのだけど、適訳だなぁと感心する。ちなみに米原さんの文章は(本書に限らず)ユーモアを兼ね備えた美女なので、あっという間に読み終わってしまった。 あまり中身に触れているところがないのですが、読みたい方、必要としている方にぜひ読んでいただきたいので、大まかな章立てをまとめておきます。 第一章:通訳翻訳は同じ穴の貉か  通訳と翻訳に共通する3つの特徴を紹介 第二章:狸と貉以上の違い  通訳と翻訳の大きな違い  通訳は同時に「二人の主人」に仕えるお仕事 第三章:不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か  訳の正しさと文章の美しさについての考察  美女の作り方  めっちゃ悩んだ挨拶文の解決方法がここに!   第四章:初めに文脈ありぎ  正確な通訳に求められる要素とは?  テクニックやヒント、アドバイスがたくさん 第五章:コミュニケーションという名の神に仕えて  ただ正しく伝わるだけの訳文を超えて…  文化や状況や背景を汲み取ることや、日本語の大切さ 特に第五章で、母語(日本語)の大切さ、母語を学ぶことが外国語を豊かにするために必須だとおっしゃっていたことが強く記憶に残った。幼少期からの英語教育が大切だと叫ばれる昨今において、たくさんの幼児向け英語教材や講座が用意されているけれども、確かに日本語があやふやな時分に英語を平行して詰め込んでいくのは危険を伴う気もする。米原さんが日本の日本語教育の不十分さを嘆いている点も、とても印象的。 -- 同時通訳者の頭の中って、一体どうなっているんだろう?異文化の摩擦点である同時通訳の現場は緊張に次ぐ緊張の連続。思わぬ事態が出来する。いかにピンチを切り抜け、とっさの機転をきかせるか。日本のロシア語通訳では史上最強と謳われる著者が、失敗談、珍談・奇談を交えつつ同時通訳の内幕を初公開!「通訳」を徹底的に分析し、言語そのものの本質にも迫る、爆笑の大研究。

Posted byブクログ

2018/01/29

「役得で、人間のありとあらゆる活動分野の現場を経験する機会に恵まれる。単にのぞくというよりも、言葉という媒体を通して、ほとんど当事者になりきって実にさまざまな職業、さまざまな人々の立場を追体験できるのだ。その意味では、古今東西多種多様な人間の営みを、演ずるという行為を通して、追体...

「役得で、人間のありとあらゆる活動分野の現場を経験する機会に恵まれる。単にのぞくというよりも、言葉という媒体を通して、ほとんど当事者になりきって実にさまざまな職業、さまざまな人々の立場を追体験できるのだ。その意味では、古今東西多種多様な人間の営みを、演ずるという行為を通して、追体験する俳優に似てなくもない。しかし、俳優のそれはあくまでも虚構の世界でのことであるのに対して、通訳が相手にするのは、常に生きた現実の世界なのである。 そして同時にいろいろな立場の人、各分野の人々の頭の中を垣間見ることが出来る。言葉というのは、表現の手段であるだけでなく、思考の手段でもあり、いわば人間の考え方の型を如実に反映するものである。通訳するとき、あるいは翻訳するとき、訳者はスピーカーや原文作者の思考の型をも他の言語に移し替えるのである。だから、さまざまな他人のものの考え方の構造と筋道を、受動的にだけでなく、能動的に実体験できる。まさにこの点が、通訳・翻訳稼業の苦行と魅力の源である。醍醐味である。少なくとも飽きと退屈だけには無縁な商売であると断言しても許されるのではないだろうか。」 ・ 「消極語彙、積極語彙という概念をご存じだろうか。語彙に限らず、知識は一般にパッシブなレベルで身についているものと、アクチブなレベルにまで達したものと、大きく二つに分けることができる。そしてどんなに逆立ちしてみたところで、積極的知識が、消極的知識を上回ることはない。読めば分かるけれども、書こうと思うと書けない漢字は山ほどある。森鴎外の文章を読んで、感動するほどまでにそれを理解できても、では森鴎外並みの文章を書いてみろ、と言われて、果たせる人はそういるものではない。 要するに、消極的な知識とは、他人が話したり、書いたりしたものを理解できる、受け身の知識や語彙を意味し、積極的知識とは、自ら話したり書いたりする際に能動的に使える語彙や知識を指す。 話し手が述べたことを理解するのには、消極的な知識で十分。ところがそれを別な言語に転換して伝えようとするとき、表現の手段である語彙も知識も技術も自家薬籠中のものでなくては、使いこなせない。通訳は、両方の言語の間を絶え間なく往復するため、その両方の言語で消極語彙と積極語彙の差を縮めていかざるを得ないのだ。 外国の文献を常日頃スラスラと読みこなしておられる大学教授が、その得意なはずの外国語で発言しようとすると、学識と知能レベルにふさわしい的確な表現が出来ずに、ご自分も周囲もイライラしてしまうなんてことがよくあるのは、まさに積極的知識と消極的知識の格差のせいである。 あるとき、わが師匠の徳永晴美氏が、 「他人の通訳を聞いて、『コイツ、なんて下手なんだ』と思ったら、きっとその通訳者のレベルは、君と同じくらいだろう。『ああ、この程度の通訳なら、私だって出来る』という感触を持ったなら、その人は、君より遥かに上手いはずだからね」 と述べたのは、別に「自分に厳しく、他人にやさしく」という人の道を説いたわけではない。他人の通訳を聞くときは、消極的知識を動員すれば事足りるのに、自分でプレゼンテーションするときは、積極的知識で当たらねばならず、消極的知識は積極的知識を常に量的に凌駕するものである以上、客観的に当然の真理なのである。」

Posted byブクログ

2017/08/24

20年近く前に買って読んだが、2006年に内容について読者からの指摘があり、それについての返信が絶筆だったという顛末とそのやりとりが巻末に文庫編集部名で追記されている(「文藝別冊 米原万里」に載ったブックガイドで知る)、ということで買い直し、ついでに読み直し。

Posted byブクログ

2017/07/02

高校生の頃挫折したのをついに読み切る喜びよ 中途半端な知識人は…のくだりにはウッとなってしまった。笑

Posted byブクログ

2017/01/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

1998年刊。露語通訳として著名だった著者(過去形が辛い)による、通訳とは何ぞや、を論じたエッセイ。著者らしいシニカルな目線・指摘にゾクゾク。その中、通訳行為のブラックボックスに関する説明が秀逸。通訳行為には、置換すべき言語がなくどうにもならない時と、置換すべき言語がなくても、その背景・イメージから別の語彙を探索し、表現できる場合があるらしい。ある言語や概念が、その言葉が生まれ初めて成立する面と、言葉なしで当該概念が生成される面があるのを言い当てる。言語や言語を操る人間の脳の深遠さを感じずにはいられない。

Posted byブクログ

2016/08/13

ロシア語同時通訳者、米原万里さんのエッセイ。 時に下ネタもまじえながらユーモラスに展開する。 同時通訳の仕事を現場の視点で書いているため、 将来通訳になりたい人にとっては参考になるのではないでしょうか? 諺をどのように訳すか、方言をどのように表現するのか、抜けのない訳/雰囲気...

ロシア語同時通訳者、米原万里さんのエッセイ。 時に下ネタもまじえながらユーモラスに展開する。 同時通訳の仕事を現場の視点で書いているため、 将来通訳になりたい人にとっては参考になるのではないでしょうか? 諺をどのように訳すか、方言をどのように表現するのか、抜けのない訳/雰囲気重視の訳どちらがいいか・・・などなど。 通訳の仕事とは縁のない私も納得できる内容だった。

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2016/05/23

尊敬する米原さんのエッセイ。米原さんの口調は軽やかだけれども、エッセイと呼ぶには奥深く、同時通訳という特殊な世界での数々の驚きのエピソードが非常に面白いです。私が翻訳の仕事を始めた頃にはすでに故人になられていて、生でその同時通訳の肉声を聞いてみたかったと思えてなりません。軽やかな...

尊敬する米原さんのエッセイ。米原さんの口調は軽やかだけれども、エッセイと呼ぶには奥深く、同時通訳という特殊な世界での数々の驚きのエピソードが非常に面白いです。私が翻訳の仕事を始めた頃にはすでに故人になられていて、生でその同時通訳の肉声を聞いてみたかったと思えてなりません。軽やかなパフォーマンスの裏に血の滲む努力があったこと、記憶に留めておきたいです。

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2020/11/18

言わずと知れたロシア語同時通訳の第一人者であった米原万里の通訳論。何度も読んだがやはり文句なしの名著。通訳を目指す人ではなくても、言語そのものに興味のある人は読んでおいて絶対に損はないだろう。 学校の英語の授業では基本的には字句通りの解釈を求められる。もちろん、それが外国語を学...

言わずと知れたロシア語同時通訳の第一人者であった米原万里の通訳論。何度も読んだがやはり文句なしの名著。通訳を目指す人ではなくても、言語そのものに興味のある人は読んでおいて絶対に損はないだろう。 学校の英語の授業では基本的には字句通りの解釈を求められる。もちろん、それが外国語を学ぶ上で必要不可欠なことは言うまでもない。字句通りの解釈は基礎を学ぶ上では有効であるし、大量のインプットなしにアウトプットもありえないことは本書を読めばよく分かるだろう。しかし、ある程度のインプットが済めば次のステップとして求められるのは「ある外国語の発言や文章が何を言わんとしているのか、その核心をとらえること」だろう。言葉とは意味を伝える媒介であるということは、つまり言葉の根底にある意味を掴まなければ意味がないということだ。そしてそれこそが、つまり言葉によって伝達しようとしている発話者の生み出した概念をつかんで外国語に移し替えることこそが、通訳者の仕事なのだ。尚「通訳の全プロセス」におけるこの「言葉の前の概念」は本書で説明されているが、この考え方は外国語を扱う人にとって何かヒントになるものなのではないだろうか。 それにしても通訳という仕事をこれほどまでに魅力的に語った本が他にあるのだろうか?まぁ自分自身、通訳論について書かれた本を数多く読んだわけではないのだが、おそらく、いや絶対にこれほど面白く通訳について書かれた本はないだろうと言い切れるほどに本書は面白く興味深い。言葉を通して数々の考え方、思考方法を疑似体験できる通訳という仕事の魅力が本当によく理解できる一冊だ。

Posted byブクログ