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不実な美女か貞淑な醜女か の商品レビュー

4.2

132件のお客様レビュー

  1. 5つ

    54

  2. 4つ

    35

  3. 3つ

    22

  4. 2つ

    3

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2016/01/16

言語を学ぶ人間としては、筆者の「言語」に対する考え方・捉え方は新鮮で、読んでいて新しい世界の見方を得れる感覚があった。 その見方も突飛過ぎず、「言われてみればそうだね」という適度な距離感なのがさらに印象深いものにしている。 また、全体を通してユーモアが散りばめられており、思わず吹...

言語を学ぶ人間としては、筆者の「言語」に対する考え方・捉え方は新鮮で、読んでいて新しい世界の見方を得れる感覚があった。 その見方も突飛過ぎず、「言われてみればそうだね」という適度な距離感なのがさらに印象深いものにしている。 また、全体を通してユーモアが散りばめられており、思わず吹き出してしまうこともあった。 伝えたいメッセージは散発的に出てくる印象で、読後に一言でまとめようとするとまとめにくいが、全体を通して「言語」に対する新しい角度からの見方を教えてくれる、そんな気がする。

Posted byブクログ

2016/01/09

ロシア語通訳の米原万里さん ロシア旅行後、TRANSITでこの方の存在を知って、ほぼ日の対談を追いかけ、手にした本 http://www.1101.com/webshinsho/01/yonehara/01.html ほぼ日を読んだあとに読むと、読みやすい (その意味で、改めて...

ロシア語通訳の米原万里さん ロシア旅行後、TRANSITでこの方の存在を知って、ほぼ日の対談を追いかけ、手にした本 http://www.1101.com/webshinsho/01/yonehara/01.html ほぼ日を読んだあとに読むと、読みやすい (その意味で、改めて糸井さんもすばらしい訳者なのだなあと思う) 通訳という仕事についてまとめたエッセイ。読んでいるだけでヒヤリとしたり、くすりと笑えたり。母語以上に外国語はうまくはならない=母語の実力を向上せよ そのためには母語を客観的に見ることが大切たいう話(意訳)に同意。解説を読むと、米原さんの大胆で簡潔、信頼されている仕事ぶりがよくわかる。動いている姿をお見かけしたかったなあ。

Posted byブクログ

2015/10/05

 鳥飼久美子著『歴史をかえた誤訳』を読んでこの本の存在を知った。鳥飼氏は私が中学生の頃から憧れた同時通訳者で、ほとんどアイドル的存在だった。本書の著者米原万里氏は今回初めて知った。ロシア語通訳で、エリツィンやゴルバチョフが大統領の頃から活躍しているという。  ロシア語通訳として...

 鳥飼久美子著『歴史をかえた誤訳』を読んでこの本の存在を知った。鳥飼氏は私が中学生の頃から憧れた同時通訳者で、ほとんどアイドル的存在だった。本書の著者米原万里氏は今回初めて知った。ロシア語通訳で、エリツィンやゴルバチョフが大統領の頃から活躍しているという。  ロシア語通訳としての豊富な経験から多くの実例を挙げ、通訳者あるいは翻訳者の使命を語る。また同業者や通訳としての先駆者たちの著書からの引用も的確で面白い。ロシア語通訳でありながらロシア語だけに偏らない書きぶりも好感が持てる。とにかく面白くて直ぐに読み終えた。素晴らしい通訳者はアウトプットに優れているのだろう。  本書の『不実な美女か 貞淑な醜女か』というタイトルが目を引くが、これは訳文が原文に忠実かどうかを「不実」と「貞淑」で表し、訳文が美文かどうかを「美女」と「醜女」で表すという、今ならおよそやってはいけないようなことをしていた。あまりに面白い例えで、思わず唸ってしまった。  先日読んだ吉村昭の『黒船』も幕末のペリー来航時に通詞を勤めた男の物語であった。この通訳という家業が如何に大変な仕事かわかる。  この手の話になると、どうしても自らの失敗を思い出してしまう。地元の港湾と米国の港湾との協定の下訳を誤訳してしまった経験がある。後にきちんと訂正されたが、まだどこかに原稿が残っているかもしれないと思うと、いまだに顔から火が出るようだ。

Posted byブクログ

2015/09/22

通訳は翻訳と違うこと。 通訳をする際の特殊性,難しさ(正確さと表現のトレードオフ,変換不可能な言葉,・・・) 同じ言葉でも文脈によって意味がまったく異なること 人のスピーチは冗長である。ゆえに同時通訳が成り立つ。冗長な部分を削除するから。しかし,あまりにも削除や換言をすると内容や...

通訳は翻訳と違うこと。 通訳をする際の特殊性,難しさ(正確さと表現のトレードオフ,変換不可能な言葉,・・・) 同じ言葉でも文脈によって意味がまったく異なること 人のスピーチは冗長である。ゆえに同時通訳が成り立つ。冗長な部分を削除するから。しかし,あまりにも削除や換言をすると内容や意図から乖離することがある。 ソ連やロシアの話はあまり聞かないし読まないから新線だった。

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2015/08/16

刺激的なタイトルに惹かれて思わず購入。 ロシア語の同時通訳者として活躍する著者の『通訳』という仕事の妙を教えてくれる作品。 外国語もからきしだめ、日本語もおぼつかない私からすれば、バイリンガルな人の頭の中は奇々怪々にしか感じられないが、この本にはわかりやすくそれを解説してくれて...

刺激的なタイトルに惹かれて思わず購入。 ロシア語の同時通訳者として活躍する著者の『通訳』という仕事の妙を教えてくれる作品。 外国語もからきしだめ、日本語もおぼつかない私からすれば、バイリンガルな人の頭の中は奇々怪々にしか感じられないが、この本にはわかりやすくそれを解説してくれている。更には著者や他の通訳の方々の失敗談、体験談を通し、異なる文化異なる価値観での会話の中で、日本という国の文化の輪郭を確かめることもできる。 気軽なエッセイ、異国への紀行本のように、通訳を目指していない人でも楽しく読むことが出来るだろう。 この本では通訳という仕事は多様な表現を受けている。たったその場限りに重宝がられ、事が終わればおさらばされる売春婦、ふたりの主人に仕える従僕、絶対的な時に抗う存在でありながら、異なる宇宙を繋げる存在でもあり、コミュニケーションの神に仕える信徒だ。通訳という仕事の大変さと興味深さを広げてくれる。 元より人が何かを表現する、何かを伝えるにあたっては必ず齟齬が生じるのは必然。それは通訳ではなく、普通の日常会話の中でも勿論発生する事態だ。 伝言ゲームはもちろんのこと、一対一であっても伝えていたものが伝わっていない、意図していないものが伝わり相手が不愉快を呈することもしばしば。 人との対話の難しさと、それが通じたときの心の底から溢れ出る歓喜を思い出させてくれる本だった。

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2015/04/26
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 通訳から言語、国際関係まで自身の経験から面白くかつ、鋭く切り込んでいる。外国語を学んでいる人には是非読んでほしい。久しぶりに人に薦めたいと思う本に出会えた。  通訳という職業について様々な苦労と失敗談が語られているが、エピソードの紹介に留まらず考察を深めているところが凄い。差別語から差別の実態についての意見には思わず納得。卑猥な会話が仲間の雰囲気を作り出すということが、国を超えてあることだということも面白かった。  訳の仕事は大きく翻訳と通訳に分けられる。私のような素人は対象の言語を熟知していればどちらもできるのではないか、と思ってしまう。しかし両者の間には大きな隔絶がある。まず音声と文字では頭での認識の仕方が異なる。同音異義語などは音声から認識する場合、誤認識する可能性がある。また訳すまでの時間の違いも両者の決定的な違いだ。通訳は即時に変換しなければならないが、翻訳は納得のいく訳を考え吟味できる時間がある。  なぜ通訳が機械にとって代わられないのか、という疑問にも説得力のある説明をされている。単語は言語間で一対一の関係ではないし、同じ言葉でも会話の流れ、前後の文脈でまったく異なる意味になる。さらに文化という大きな文脈が異なるために機械で自動的に翻訳しようとしてもうまくいかないのだ。  通訳者が発言者の言葉を聞いて、正しく理解し、それを正確に表現する外国語の言葉を組み立てて、相手が正しく理解する。これは相当大変なことであることが分かった。通訳者は単に言語に堪能というだけでなく、集中力、知識、事前準備など様々な努力があって為し得ることなのだ。しかもどんなに通訳者がうまく訳そうにも、原発言がとんちんかんでは手の施しようがないという宿命を背負っている。  最後に、外国語は母国語よりうまくならない、ということを肝に銘じておきたい。今盛んに英語力の向上が叫ばれているが、まず日本語が未熟では英語もそれ以上にはなりようがない。また自国のことを知らない人は尊敬の対象にはならず、国際力があるとは言えない。 

Posted byブクログ

2018/03/20

わたしの尊敬する作家が、著作の中で『この世に面白くない本などない。面白くないと思うなら、それは内容が理解できないだけだ』というようなことを言わせているが、ほんとにそうだと思う。 この本の内容などほとんど知らず、タイトルが面白かったので読んでみた。 ロシア語通訳者のエッセイ。 通訳...

わたしの尊敬する作家が、著作の中で『この世に面白くない本などない。面白くないと思うなら、それは内容が理解できないだけだ』というようなことを言わせているが、ほんとにそうだと思う。 この本の内容などほとんど知らず、タイトルが面白かったので読んでみた。 ロシア語通訳者のエッセイ。 通訳という仕事について、いろいろと知ることができた。 知らないことを知る、それが本を読むことの醍醐味だと思う。 実に勉強になったし、面白かった。 外国語を習得したいと思うなら、まず母国語を磨けという一言に感銘を受けた。 第一言語以上に第二言語が上達するはずはないのだから、日本語が下手なら外国語はもっと下手ということになる、と。 言葉を習得するだけではなく、操るのならその国の文化や習俗、歴史なども知らなければダメだということも。 確かに、日本語の上手い言い回し、みたいなものって、知識と教養がないと使えないし理解できないよな。 東京生まれ東京育ちのバイリンガルが、地方に行って駐留米軍兵に現地の人との通訳を頼まれ、何を言ってるのかサッパリ理解できず、別の現地の人に標準語に訳してもらってから英訳したなんて話も面白く読んだ。 確かに、わたしも夫の親族に方言が強すぎて言ってることが理解できない人がいる。 日本人なら日本語がわかって当たり前だろ、とはならないこともあるなぁ、と。

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2014/11/13

早世されたロシア語同時通訳者、米原万理さんの初めてのエッセイ。彼女の著作を読んだのはこれが4冊目だが、渾身の一冊といえよう。彼女の魂が入っている。 第一線で活躍した米原さんの、通訳業にまつわる苦労ややりがいや失敗の経験がつづられている。言語に関すること以上に文化人類学の視点からも...

早世されたロシア語同時通訳者、米原万理さんの初めてのエッセイ。彼女の著作を読んだのはこれが4冊目だが、渾身の一冊といえよう。彼女の魂が入っている。 第一線で活躍した米原さんの、通訳業にまつわる苦労ややりがいや失敗の経験がつづられている。言語に関すること以上に文化人類学の視点からも考察があり、興味深い。通訳に求められるのは、外国語能力以上に母国語能力だという。 米原さんは少女時代を外国で過ごしたが、母国語の日本語がとても美しく、この本も十分なリサーチをしたうえで、理路整然と書かれている。通訳を目指す人もそうでない人も、一度は米原さんの本を手に取ってもらいたい。

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2017/12/16

20171215蔵書 20141104読了 ロシア語同時通訳をされていた方のエッセイ。すんごい題名に目が丸くなったが「内容は原文に遠いけれど美しい訳=不実な美女」か、「内容は原文に忠実だけれど訳文の滑らかさはそこそこ=貞淑な醜女」か…ということで、中身は通訳の話。おもしろい…!2...

20171215蔵書 20141104読了 ロシア語同時通訳をされていた方のエッセイ。すんごい題名に目が丸くなったが「内容は原文に遠いけれど美しい訳=不実な美女」か、「内容は原文に忠実だけれど訳文の滑らかさはそこそこ=貞淑な醜女」か…ということで、中身は通訳の話。おもしろい…!2つの言語に関わる場面でのエピソードが散りばめられていて、同時通訳という仕事が見えてくる。シモネタがけっこう出てくるので、著者っておじさんだったっけと写真を確認してしまった。●P65翻訳という作業は、まず原文理解、次にそれを適切な日本語に表現し直す、という、まったく別な2つの過程から成り立っている。翻訳者は、語学者として外国語の原文理解ができ、さらには文章家として熟達した自国語を書けなくてはならない。●要点をつかんで伝えたほうがいい時もあるし、むしろ要点をつかまず字句通りでなくてはならない時もある。●一定の年齢(8~10歳くらい)までは徹底的に日本語で意思疎通を図ることで母国語の基礎を固めた上での、外国語学習であるならば、母国語を豊かにし、磨きをかける手段となりうる。ハーフとして幼児期から2言語に接した場合でも、両方の言語とも中途半端にしか獲得できず、かつ、自国の文化的アイデンティティを形成できない人もいる。同じ状況で、2言語とも獲得する人もいるが、個人の資質もさることながら、10歳くらいまで母語(日本語)を優先していたとの話。

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2014/08/13
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

<通訳あるある。プロも日々勉強。> 一流のロシア語通訳者である著者のデビュー作。 ・時間との戦いが、通訳の宿命である。 ・掛けられる時間と、成果物が記録に残るか残らないか、という2点が通訳と本質の大きな違いであること。 ぐらいはある程度想像のつく事であるが、以下の様な事は読んでみて初めて知った。 ・通訳者は新しい分野、例えば軍事工学、医学、原子力etc...の通訳を依頼された際は関連する知識と専門用語を叩き込む。要はプロでも日々是勉強という事。更に、 ◇現在ロシア語通訳協会に百六十名ほどの会員がいる。そのうち理工系出身者はわずか五名で、残りの圧倒的通は大学でロシア語かロシア文学を専攻した人たちだ。78 理科系の出身者が自分の専門分野の複雑さを知りすぎているからこそ、他の分野にはてをだしかねていて、逆に文科系出身者は怖いもの知らずで、難しげな仕事を請け負うのではないかと著者は分析する。そして、 ◇どんな複雑な機器や装置であれ、所詮人間の作ったものである。その人間に対し飽くなき探究心を抱く者にとって、機械だけがどうして無縁で有り得よう。79 これは小町直美氏の引用であるが、熟練の通訳者が辿り着いた、非常に示唆に富んだ意見である。 ◇通訳稼業に振り向ける時間を八とすると、少なくとも二は、翻訳の仕事を引き受けるように、私はつとめている。なぜか。時間の成約(中略)に甘えて絶え間ない妥協を続けていく通訳という営みには、訳が非常に粗雑に、まずしくなっていく危険がつきまとう。限られた時間の範囲内であれ、最良最適の訳を目指すという、翻訳者的性向を併せ持つためには、時々もう少し時間的余裕のある環境に身をおいて、じっくりと辞書や専門書に当たり、より的確な語彙、より含蓄のある表現を探索する機会がどうしても必要になってくるのである。139

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