全国アホ・バカ分布考 の商品レビュー
テレビでもやっていま…
テレビでもやっていましたが、全国でも言葉一つでこんなにも方言の種類があるんだと感心します。身近なところではどんな表現をしているのか見てみては?
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出発はテレビ番組の企画だが、松本さんの考察と行動力がすごい。 方言とはなんなのか?認識が新たになる本である。 方言はかつてはほぼ必ず京の言葉だったのだ! (もっと言うと京の言葉はさらに中国の言葉だった) 柳田國男の方言周圏論を念頭に、アンケート調査からその適用を見事に果たすプロ...
出発はテレビ番組の企画だが、松本さんの考察と行動力がすごい。 方言とはなんなのか?認識が新たになる本である。 方言はかつてはほぼ必ず京の言葉だったのだ! (もっと言うと京の言葉はさらに中国の言葉だった) 柳田國男の方言周圏論を念頭に、アンケート調査からその適用を見事に果たすプロセスが見事。 沖縄の「ふりむん」=「惚れ者」の解き明かしは一つのクライマックス。 そこから、罵倒語をめぐる日本人のメンタリティにも迫る。 バカの元々の意味が「狼藉者」という把握もすごい。そして、バカがもともと東京の言葉ではなく、実は京の言葉であったことも! 事実としては、かつて言葉が京から広まる速度が1年に1キロというのが面白い。
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この本を読んでいる、と50代半ば以上の知人に言うと、決まって「ナイトスクープの?」と言う。「探偵!ナイトスクープ」自体は知っていて、見ていたが、一企画がこれほど世に知られていたとは!テレビ界の色んな賞を獲っていたそうだ。 番組は、例の如く一視聴者からの調査依頼から始まった。関西...
この本を読んでいる、と50代半ば以上の知人に言うと、決まって「ナイトスクープの?」と言う。「探偵!ナイトスクープ」自体は知っていて、見ていたが、一企画がこれほど世に知られていたとは!テレビ界の色んな賞を獲っていたそうだ。 番組は、例の如く一視聴者からの調査依頼から始まった。関西はアホ、関東はバカ、果たしてその境界線は?! 当初の予定では、探偵のロケを見せ、失敗して終わるはずだった。しかし、番組終了後の上岡局長の指示により、調査は続行。さすがインテリ上岡龍太郎。 視聴者からのハガキに始まり、調査そのものの方法に試行錯誤し、全国の教育委員会へのアンケート調査、多数のアルバイトを雇い、伝手を駆使しての大学の先生方への聞き込み、数多くの一次史料をあたり、ともはやテレビマンの域を越えた学者ばりの調査。しかし学者と違ってテレビ局と言う一気に全国調査できる組織網と資金で調べ上げていく。 調べた結果は、柳田國男『蝸牛考』を遥かに超える、京を中心とした円が何重にも広がって行く、豊かな「アホ・バカ」のバリエーションだった。 番組では、その調査結果を元にした、大きな日本地図を作って見せた。 当初は言語の周圏分布ではなく関ヶ原あたりで分断、、という論調であった上岡局長も、今や作家・放送作家として活躍の百田尚樹も、著者の執念の調査に、完全に納得したようだった。 本では、その調査の過程、つまり著者の思考過程をも詳細に記し、ある時は同僚とのバカ話、ある時は故郷の思い出等も盛り込み、楽しい読み物になっている。 調べるにつれ、柳田國男が途中で自説を引っ込めた言語の周圏分布論に対して、紛れもない自信を持って行く著者。ついには、苦心して「アホ」と「バカ」の語源にまでたどり着く。 著者の一貫した考えとして、「アホ・バカ」は、人をストレートにけなす言葉であるはずがない。必ずなにかワンクッション置いた柔らかな意味が語源であるはずだ、と言う論で進めていく。 この姿勢が最終的な語源へとたどり着く拠り所となる。 読み終わった時、この本の副題にもなっている、はるかなる言葉の旅路を並走してきた感覚になる。私も日頃しゃべっている方言の見方が変わる。 ちなみに、この調査で調べ上げた「アホ」と「バカ」の語源については、かの有名な日国(『日本国語大辞典』日本最大の国語辞典)にも後に収蔵されるところとなる。
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上岡師匠が亡くなられたということで再読。 ほとんど内容覚えておりませんでしたが、なかなか面白かった。本当に方言周圏論が理論的に正当なのか?この内容だけでは判断できませんでしたが、良い意味でテレビだから許されると。 とにかく楽しませること、そこには若干のいかがわしさがあっても、作り...
上岡師匠が亡くなられたということで再読。 ほとんど内容覚えておりませんでしたが、なかなか面白かった。本当に方言周圏論が理論的に正当なのか?この内容だけでは判断できませんでしたが、良い意味でテレビだから許されると。 とにかく楽しませること、そこには若干のいかがわしさがあっても、作り手も見る側も承知の上で虚構の中で真摯に踊る。 これ読んでいると現在のテレビってその使命を終えたのかなぁと思わなくもなく。
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相手を罵倒する時に「アホ」というか「バカ」というか。その地域差…どこが区切りになるか。そもそもアホとかバカとかの語源は何か。 を、突き詰めて行く過程は非常に熱っぽく面白かった。 が、結論はどうも承服しがたい(感覚的にだけど)。
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謎の関西パトリオティスムが。 若干、「ポリコレに基づいてフリムンと呼ばれるものが放送禁止用語になる」嘆かはしい状況を、ポリコレに基づいて言っていいと解釈する著者がうざい半分、他のホンジナシ、アヤ、タクラタは別にかすらないのでいいんだけど、なんか。 バカ起源のいろいろが面白かっ...
謎の関西パトリオティスムが。 若干、「ポリコレに基づいてフリムンと呼ばれるものが放送禁止用語になる」嘆かはしい状況を、ポリコレに基づいて言っていいと解釈する著者がうざい半分、他のホンジナシ、アヤ、タクラタは別にかすらないのでいいんだけど、なんか。 バカ起源のいろいろが面白かった。
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書名とカバー絵に惹かれて購入。「探偵! ナイトスクープ」というTV番組を千葉に在住の自分は知らなかった。前半は番組制作の過程を中心に「アホ・バカ」分布をどうしたら視聴者に楽しんでもらえるかという熱い思いが伝わる筆致。そして後半は、一気に方言周圏論を中心にアカデミックな内容になって...
書名とカバー絵に惹かれて購入。「探偵! ナイトスクープ」というTV番組を千葉に在住の自分は知らなかった。前半は番組制作の過程を中心に「アホ・バカ」分布をどうしたら視聴者に楽しんでもらえるかという熱い思いが伝わる筆致。そして後半は、一気に方言周圏論を中心にアカデミックな内容になっていく。それも視聴者を楽しませるがごとく、実に平易な書きぶりだ。それにしても言語学とは何と奥の深いものだろう。一つの言葉の語源を突き止めるには無数にある言語の同心円を辿らなくてはならないのだから。
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バラエティ番組「探偵!ナイトスクープ」から発生した調査。番組は1度も見なかったが、当時、人から話は聞いていた。柳田國男の蝸牛考(方言周圏論)が登場するほか、古い文献を丁寧に分析しているのは圧巻で、半ばあたりの細かい分析は読み飛ばしたくなったほど。後半のバカやアホの語源を探っていく...
バラエティ番組「探偵!ナイトスクープ」から発生した調査。番組は1度も見なかったが、当時、人から話は聞いていた。柳田國男の蝸牛考(方言周圏論)が登場するほか、古い文献を丁寧に分析しているのは圧巻で、半ばあたりの細かい分析は読み飛ばしたくなったほど。後半のバカやアホの語源を探っていくくだりは、ほとんど研究者のようで脱帽した。 国立国語研究所の「日本言語地図」によると、285語のうち76語(27%)が周圏分布を見せている。著者の調査でも30%足らずで、評価を与えるための表現は価値が下がりやすく、新しい表現が要求されたからではないかと考える。 バカの語源について、「鹿を指して馬と言う」の史記の故事説は、「バロク」と発音されなければならないという音韻上の無理がある。唐の白楽天の詩の中に「馬家の宅」が、大金を投じて造営した邸宅の虚しい例として登場する。平安時代の宮中では白楽天の漢詩は誰でもそらんじていたと推測される。奈良時代は中国の六朝時代で、呉国から漢字文化が流入したため、漢字は呉音で読まれていた。隋・唐との交渉が始まった平安時代には北方の漢音が入ってきた。馬家は呉音で「バカ」となる。 上方で「アホ」が「アホウ」を追い払うのは18世紀後半以降で、同時に「バカ」が消えていく。著者は、15世紀頃に禅僧または商人によって日本にもたらされた明の白話文学の中に「阿呆」があり、「アホウ」と読まれたと推論している。
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アホとバカの境界線はどこかという探偵ナイトスクープの企画から始まった全国のアホ・バカ分布調査を、ドキュメンタリーっぽくまとめた一冊です。 バラエティの企画から、方言周圏論を立証するという学術的にも重要な問題を松本さんが執念を持って調べていきます。 一生懸命で、一つ一つの言葉に愛情...
アホとバカの境界線はどこかという探偵ナイトスクープの企画から始まった全国のアホ・バカ分布調査を、ドキュメンタリーっぽくまとめた一冊です。 バラエティの企画から、方言周圏論を立証するという学術的にも重要な問題を松本さんが執念を持って調べていきます。 一生懸命で、一つ一つの言葉に愛情を持って接する松本さんの姿に感動しました。物事を突き詰めて考えていく松本さんの姿勢は僕らも見習う必要があると思います。 #読書 #読書記録 #読書倶楽部 #全国アホバカ分布考 #松本修 #探偵ナイトスクープ #アホ #バカ #方言 #2016年45冊目
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(*01) エピグラフに柳田國男(*02)が掲げられ、全編を通じて柳田が提示した方言周圏論をアホバカ語により実証することを試みている。アホバカの多様な現れは痛快で、この多様をどのように掬っていったか、「探偵ナイトスクープ」という人気テレビ番組の方法論の展開として、プロセスそのもの...
(*01) エピグラフに柳田國男(*02)が掲げられ、全編を通じて柳田が提示した方言周圏論をアホバカ語により実証することを試みている。アホバカの多様な現れは痛快で、この多様をどのように掬っていったか、「探偵ナイトスクープ」という人気テレビ番組の方法論の展開として、プロセスそのものの読み物としても読み応えがある。 (*02) しかし、柳田の「烏滸の文学」で示されたアホバカ同源説については直感のみが先行し、根拠が薄いということで一蹴されている。著者は、周圏的な分布から、アホが新しく、バカはより古いと仮定し、それぞれ大陸の典籍に語源があるのではないかと結論付けている。 残念に思われるのは、柳田がアホバカを受け入れる素地(*03)を議論していたのに対し、単に語としてのアホバカに拘泥したことで、多様な現れとその多様な連関については、あまり考察されてはいないことである。周圏論の伝播モデルについても古代や中世に遡れる語が果たして京から発信されたかは疑問が残る。文字として京で記録されたものは地方の習俗が採録され文化として地方に逆移入されるルートについても検討が必要かと思われる。 また、本書の前半部の考察を構成するハンカ、タクラダ、ホンジ、ホレモノ、アヤカリ、ホイトなど周囲に残る語についても他の類語との通じ方から検討する余地はまだ大きく残っているように思う。 (*03) 本書では差別語としてのアホバカとそれに連なる多様な語を「愚か」の方言や翻訳として扱っていた。オロカの語源についても問題があるが、現代ではアホバカの明るさや指導的な語感がともなわれることも考慮し、愚かにあたる語には差別的なニュアンスはなかったであろうと推察している。社会的な関係に多くを負う差別観から過去の語のニュアンスを探るのは同意できない。差別や罵倒が語が流行していた時代に、愚かな語がどのように機能していたかについて先行的な判断を導いてしまうからである。こうしたアホバカ語を纏っていた人たちがどのような人たちでどのように動いていたかは、語そのものよりも改めて考えてみなければならない問題でもある。例えば、ホイトと呼ばれる人たちであるとか、アヤを刻印された人たちであるとか。
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