陰翳礼讃 の商品レビュー
谷崎さんの価値観で語られる日常の様々なこと。何気ないことにも谷崎さんなりの独特な視点で可笑しく描かれている。陰翳があると情緒感じるよね。写真好きだから大切にしたい。
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だがその羊羹の色合いも、あれを塗り物の菓子器に入れて、肌の色が辛うじて見分けられる暗がりへ沈めると、ひとしお瞑想的になる。 ひとはあの冷たく滑かなものを口中にふくむ時、あたかも室内の暗黒が一箇の甘い塊になって舌の先で融けるのを感じ、ほんとうはそう旨くない羊羹でも、味に異様な深みが...
だがその羊羹の色合いも、あれを塗り物の菓子器に入れて、肌の色が辛うじて見分けられる暗がりへ沈めると、ひとしお瞑想的になる。 ひとはあの冷たく滑かなものを口中にふくむ時、あたかも室内の暗黒が一箇の甘い塊になって舌の先で融けるのを感じ、ほんとうはそう旨くない羊羹でも、味に異様な深みが添わるように思う。
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教科書で漆についての一部分を読んでから、漆の食器の本来に気づいた。漆の椀はなんだか安っぽいと常々思っていたが、使う環境が間違っていたのだ。 能や文楽もなるほど、仄暗さが大切なのかもしれない。 表題とは別のトイレ談義がおもしろい。今の生活様式を享受している私からすれば、何はともあ...
教科書で漆についての一部分を読んでから、漆の食器の本来に気づいた。漆の椀はなんだか安っぽいと常々思っていたが、使う環境が間違っていたのだ。 能や文楽もなるほど、仄暗さが大切なのかもしれない。 表題とは別のトイレ談義がおもしろい。今の生活様式を享受している私からすれば、何はともあれ水洗がいいと思うし、トイレが野の匂いがするのは嫌だ。
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・『灯に照らされた闇』の色を経験してみたい ・明るさになれてしまっているからこそ、普通のチェーン店等では、いまの明度から暗くすることは、もうできないのだろう、昼下がり停電になった時にその美しさや落ち着きに気付くだろうがまた通常に戻ってしまうもどかしさ ・青い口紅が日本人に妙に似合...
・『灯に照らされた闇』の色を経験してみたい ・明るさになれてしまっているからこそ、普通のチェーン店等では、いまの明度から暗くすることは、もうできないのだろう、昼下がり停電になった時にその美しさや落ち着きに気付くだろうがまた通常に戻ってしまうもどかしさ ・青い口紅が日本人に妙に似合うのは、隠しきれない肌白の中の陰にあったのかと感嘆
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「陰影礼讃」谷崎潤一郎著、中公文庫、1975.10.10(1995.09.18改版) 214p ¥500 C1193 (2020.11.03読了)(2020.10.28借入)(2011.06.20/21刷) 10月のEテレ「100分de名著」で「谷崎潤一郎スペシャル」が放映されま...
「陰影礼讃」谷崎潤一郎著、中公文庫、1975.10.10(1995.09.18改版) 214p ¥500 C1193 (2020.11.03読了)(2020.10.28借入)(2011.06.20/21刷) 10月のEテレ「100分de名著」で「谷崎潤一郎スペシャル」が放映されました。 その中で紹介された作品は、以下の4作品でした。 第1回 『痴人の愛』―エロティシズムを凝視する 第2回 『吉野葛』―母なるものを探す旅 第3回 『春琴抄』―闇が生み出す物語 第4回 『陰翳礼賛』―光と影が織りなす美 「吉野葛」と「陰影礼讃」が未読だったので、この機会に「陰影礼讃」を読むことにしました。「陰影礼讃」が書かれたのは、昭和8年ですので、「支那事変」(昭和12年)の前です。 「陰影礼讃」は、小説ではなく随筆です。この文庫本には、6つの随筆が収録されています。 【目次】 陰翳礼讃 (1934年1月) 懶惰の説 (1930年5月) 恋愛及び色情 (1931年6月) 客ぎらい (1948年10月) 旅のいろいろ (1935年7月) 厠のいろいろ (1935年8月) 解説 吉行淳之介 ●厠(12頁) 日本の建築の中で、一番風流に出来ているのは厠であるとも云えなくもない。 やはりああ云う場所は、もやもやとした薄暗がりの光線で包んで、何処から清浄になり、何処から不浄になるとも、けじめを朦朧とぼかして置いた方がよい。(13頁) ●漆器(25頁) 「闇」を条件に入れなければ漆器の美しさは考えられないと云っていい。 ☆関連図書(既読) 「痴人の愛」谷崎潤一郎著、新潮文庫、1947.11.10 「刺青・秘密」谷崎潤一郎著、新潮文庫、1969.08.05 「細雪(上)」谷崎潤一郎著、新潮文庫、1997.04.10(1955.10.30) 「細雪(中)」谷崎潤一郎著、新潮文庫、1997.04.10(1955.10.30) 「細雪(下)」谷崎潤一郎著、新潮文庫、1997.04.10(1955.10.30) 「鍵・瘋癲老人日記」谷崎潤一郎著、新潮文庫、1968.10.25 「源氏物語 巻一」紫式部著・谷崎潤一郎訳、中公文庫、1973.06.10 「源氏物語 巻二」紫式部著・谷崎潤一郎訳、中公文庫、1973.07.10 「源氏物語 巻三」紫式部著・谷崎潤一郎訳、中公文庫、1973.08.10 「源氏物語 巻四」紫式部著・谷崎潤一郎訳、中公文庫、1973.09.10 「源氏物語 巻五」紫式部著・谷崎潤一郎訳、中公文庫、1973.10.10 (2020年11月11日・記) (表紙カバーより) 人はあの冷たく滑らかなものを口中にふくむ時、あたかも室内の暗黒が一箇の甘い塊になって舌の先で融けるのを感じ、本当はそう旨くない羊羹でも、味に異様な深みが添わるように思う。(本文より) ―西洋との本質的な相違に眼を配り、かげや隈の内に日本的な美の本質を見る。
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思いの外読みやすく、自分が意識している外側を刺激されている感覚に落ちていった。 技術の先端を追い求めるのも良いが、陰影による美しさを感じ取る感性を常日頃から持ち、必要なだけの明かりの中で「心地よい」と感じる風情を意識的に残していかなくては、自分の身の回りから大切なものが抜け落ち...
思いの外読みやすく、自分が意識している外側を刺激されている感覚に落ちていった。 技術の先端を追い求めるのも良いが、陰影による美しさを感じ取る感性を常日頃から持ち、必要なだけの明かりの中で「心地よい」と感じる風情を意識的に残していかなくては、自分の身の回りから大切なものが抜け落ちてしまいそうだ。 不必要な明かりによって生じる熱を、また電気を使って冷ますというようなわずわらしさからも、是非解放されたいと思う。
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面白い、特に「恋愛及び色情」はまるで谷崎潤一郎にマンガ・アニメ批評でもしてもらっているようで、私の中のありとあらゆる「何故日本のマンガ・アニメの絵は女の子を此の様に描くのだろう」という種の疑問が解消した。
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明度についての視点。 それだけで、こんなにも掛けるなんて脱帽。 しかも、旅情を誘う描写であったり、祖母の昔の家を思わせる景色や、小説家ならではの苦悩や特性が書かれてあって、深いところで共感する部分があった。 谷崎潤一郎の感覚の鋭さ、小説家としての審美眼にうなった一冊。
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正直な感想を言うと、難読であまり関心の持てる内容ではなかった。一方で、谷崎潤一郎の様々な生活や自身の経験を知ることができる一冊。
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日本人が昔から持っている、持っていた 美意識 を感じられる本だった。 陰翳礼讃を読んでいるとき、その光景がありありと思い出すことができた。 でも、今の家にしか住んだことのない人たちには、 家の奥にある暗闇 には気が付けないのかもしれない。 この作者の時代でさえそうなのであるか...
日本人が昔から持っている、持っていた 美意識 を感じられる本だった。 陰翳礼讃を読んでいるとき、その光景がありありと思い出すことができた。 でも、今の家にしか住んだことのない人たちには、 家の奥にある暗闇 には気が付けないのかもしれない。 この作者の時代でさえそうなのであるから、 今の時代ではなおさらかもしれない。 少し寂しいなと感じた。 もう少し時間がたって、 私がもう少し年をとった時にまた読みたいと思う作品だった。
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