蛍川・泥の河 の商品レビュー
宮本輝初期2短編。 「泥の河」は戦後しばらくした大阪の庶民の生活を舞台に、少年の目を通して情感豊かに流れる作品である。下町の生活の中に突然あらわれた対岸の舟に住む家族との交流によって誘われる狂気と不条理な死、そしてエロスを雰囲気良く描きだしている。 実は、最後の巨大鯉が去る場面が...
宮本輝初期2短編。 「泥の河」は戦後しばらくした大阪の庶民の生活を舞台に、少年の目を通して情感豊かに流れる作品である。下町の生活の中に突然あらわれた対岸の舟に住む家族との交流によって誘われる狂気と不条理な死、そしてエロスを雰囲気良く描きだしている。 実は、最後の巨大鯉が去る場面が象徴する意味はよくわからなかった。(笑)少年の過ごした別空間の、限られた経験の終わりを示しているのかな? 「蛍川」は戦後しばらくした富山を舞台に、やはり少年の目を通し富山を中心とした北陸の風情をよく伝える作品となっている。ラストの蛍絵が映像的にも豪華で、それに辿りつくまでに描かれる少年一家の宿命を、死とエロスを絡めながらとうとうと描かれる。 街の描写が多々あるのですが、路面電車の軌道が現在と異なっているのでしょうか?地理関係が少しわからなくなりました。(泣) どちらも国語教科書に載るような感じの作品と思いました。自分の試験点数はおそらく悪いでしょうけど・・・。(笑)
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昭和30年代の大阪ってこんなんやったんやなぁっていう感じの”泥の河”、戦後から少し落ち着いてきた時の家族像が浮かんでくる蛍川・・・どちらも切ないなぁと感じるけど、離れられない”宮本ワールド”。。。
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もう、最初から泣きそうだったのだ、「泥の河」。 戦争の影をまだ濃く引きずる昭和30年・大阪。貧しさと、いかがわしさと、死が、すぐ目の前に存在している。実際、さっきまでしゃべっていた人が、次の場面では死んでいて、命の儚さに打ちのめされそうになる。 主人公ののぶちゃんと、廓船...
もう、最初から泣きそうだったのだ、「泥の河」。 戦争の影をまだ濃く引きずる昭和30年・大阪。貧しさと、いかがわしさと、死が、すぐ目の前に存在している。実際、さっきまでしゃべっていた人が、次の場面では死んでいて、命の儚さに打ちのめされそうになる。 主人公ののぶちゃんと、廓船の子ども・きっちゃんのやりとり、そしてきっちゃんたちを取り巻く大人の、蔑むような視線や言動が切ない。どんな大人になったんやろ、きっちゃん。 川の汚さや臭さ、夏のまとわりつくような暑さ、祭りの日に漂う酒の匂いと、酔っ払った大人たちの華やぎとだらしなさ。わたしが生まれたのはもっと後だけど、わたしは確かにこの空気を知っている。知っているからこれほど胸苦しいのだ。 「蛍川」の舞台は富山なのだが、物語の雰囲気が雪の重苦しさに合っている感じ。このストーリーなら、舞台は大阪ではない気がするところがすごい。主人公の少年・竜夫の心理描写もいいのだが、一番心に残っているのが、竜夫の母・千代が、竜夫の父・重竜への恋をはっきりと認識する場面。その情景が、ありありと目の前に浮かんでしまった。宮本輝は、すごいなぁ。 どっちの作品も、大人が子どもに、自分の気持ちや考えを話しまくる。主人公である子どもができたとわかった時の気持ちや、これからどうしたいかといった思いを、とにかく話す。それも子どもだからといって、適当に話したりしないのが、印象的だ。
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「泥の河」は大阪を「蛍川」は富山を舞台に二つの川の周辺で暮らす庶民の貧しく切ない生活が描かれている。時代は戦争の傷跡を まだ、残す昭和30年ごろ、まだ、生まれていない時代の大阪なのに、何とも懐かし風景として目に浮かぶのは、なぜだろう? また、少年の複雑で多感な心の描写(友情/初恋...
「泥の河」は大阪を「蛍川」は富山を舞台に二つの川の周辺で暮らす庶民の貧しく切ない生活が描かれている。時代は戦争の傷跡を まだ、残す昭和30年ごろ、まだ、生まれていない時代の大阪なのに、何とも懐かし風景として目に浮かぶのは、なぜだろう? また、少年の複雑で多感な心の描写(友情/初恋)も、懐かしい 気がする。
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人生には理由のないことが起こる。 今日と明日は続いていない。 ずっと川の音が聞こえていて、深いところの悲しみが漂ってる、ような感覚でした。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
廓船で自分を売りながら幼い姉弟を育てる母。男の背中にうつる街明かりの青い斑の光。板一枚挟んだその隣で、川蟹を油に浸して火をつけ、蟹が青い焔を燃やしながら這いまわる様子をうつろな目で追う少年。その狂気の光に恐怖する僕。螢の大群が放つ死臭を思わせる青い光。人生の運不運は偶然の産物。一歩違っていたら、それは自分の姿だったかもしれない。生きることは悲しい。でも生きてこそ。生きなければならない。
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映画がとてもよかったので読んでみました。子供の頃の同じ様な切ない思い出が甦ります。お祭りでお金を失うシーンが好きです。
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浦野所有 「蛍川」はいいですよ! ぜひ読んでください。 私にとって、 住井すゑ『橋のない川』 井上靖『しろばんば』 小池真理子『恋』 カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』 と並ぶベスト・ワン・タイです。 高2のときに初めて読んだときは、カップリングされている「泥の河」のほ...
浦野所有 「蛍川」はいいですよ! ぜひ読んでください。 私にとって、 住井すゑ『橋のない川』 井上靖『しろばんば』 小池真理子『恋』 カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』 と並ぶベスト・ワン・タイです。 高2のときに初めて読んだときは、カップリングされている「泥の河」のほうに惹かれました。「蛍川」は、強烈な富山弁のセリフが読みづらくて、あんまり作品世界に没入できなかった記憶があります。 ですが、大学生のときに再読したら、もう、「蛍川」のほうがずっといいんですよね! と同時に、「なぜいままでその魅力に気づかなかったのだろう」と、激しい後悔を覚えました。 名作中の名作だと思います。
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なんでもない日常にふと人が死ぬこと。 人を殺すことが仕事だった時期。 こういう感覚、 生と死との距離が大きくなった今の時代には無いからこそ、 描かれる小説を読むと、他では体験できない無常感を覚える。 戦後の下町、下品な民衆の会話、 精神に異常をきたした人間が崩壊していく様。...
なんでもない日常にふと人が死ぬこと。 人を殺すことが仕事だった時期。 こういう感覚、 生と死との距離が大きくなった今の時代には無いからこそ、 描かれる小説を読むと、他では体験できない無常感を覚える。 戦後の下町、下品な民衆の会話、 精神に異常をきたした人間が崩壊していく様。 自分はそういった雰囲気が割と好きなので星五つ。好みの問題だぁね。
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初・宮本輝。 ぐいぐい読んじゃう。体験を元にしながらも、小説として消化・昇華されてるのが素晴らしい。 なぜか三浦哲郎が読みたくなった。
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