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蛍川・泥の河 の商品レビュー

4.1

210件のお客様レビュー

  1. 5つ

    68

  2. 4つ

    77

  3. 3つ

    39

  4. 2つ

    7

  5. 1つ

    1

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2012/05/30
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

泥の河 …戦争の傷跡を残す大阪で、河の畔に住む少年と廓舟に暮らす姉弟との短い交友を描いた作品。 身分の違うもの同士の交友が難しいことを痛感した。廓舟で商売をする母親を持つ姉弟との交友。いじめられるのを庇うも、環境のせいなのか、主人公との価値観が違いすぎる。 最後のすれ違いが切なかった。 螢川 …北陸富山の春から夏への季節の移ろいのなか、父の発病・友達の事故死、そして父の他界と、初恋を描く物語。 季節や風景の描写がキレイだった。このあとのことをもっと読みたいと思える作品だった。

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2011/11/23

一番すきな小説を挙げろと言われたらこれかもしれない 「生活していくこと」の虚しさを美しく描写している

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2011/12/18

偏に言い表せない本作の持つ抒情感は、読み手に多くの感情や示唆を与えてくれる。昭和の古い情景を描きつつ、そこに巧みに抒情的描写を鏤めるバランス感覚は芸術の域と言って良い力量。二筋の川面に映る人の世の哀歓を綿密に捉えそれをバランス良く二編の短編物語として仕上げた宮本輝氏の代表的な名作...

偏に言い表せない本作の持つ抒情感は、読み手に多くの感情や示唆を与えてくれる。昭和の古い情景を描きつつ、そこに巧みに抒情的描写を鏤めるバランス感覚は芸術の域と言って良い力量。二筋の川面に映る人の世の哀歓を綿密に捉えそれをバランス良く二編の短編物語として仕上げた宮本輝氏の代表的な名作。

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2011/11/12

昭和30年  安治川を舞台に  淀川の支流が大川と名を変え、大川はさらに中之島をはさむように堂島川と土佐堀川となる。その二つの川が合流して、安治川と名を変えるところに、三つの橋が架かっている。  そのひとつ、端建蔵橋のたもとにある古ぼけた食堂「やなぎ食堂」が小説「泥の河」の舞台...

昭和30年  安治川を舞台に  淀川の支流が大川と名を変え、大川はさらに中之島をはさむように堂島川と土佐堀川となる。その二つの川が合流して、安治川と名を変えるところに、三つの橋が架かっている。  そのひとつ、端建蔵橋のたもとにある古ぼけた食堂「やなぎ食堂」が小説「泥の河」の舞台となっている。  時代は、戦後の姿があちこちに残骸をさらけだしていた昭和30年-。この食堂へ、いつも来る荷馬車曳きの男が、坂か登り切れず後戻りした馬車の下敷きとなって死ぬ。  食堂の一人息子で、九歳になる信雄は、ある雨の日、その死んだ男が残した鉄屑を盗もうとする少年、喜一に会う。少年からこの川に棲みついている巨大なお化け鯉の正体を見せられ、誰にも口外しないことを約束する。そしてこの秘密を共有することでお互いの心がつながってゆく。  彼は対岸につながれたみすぼらしい廓舟に、姉の銀子と、声だけで姿を見せない母の三人で住んでいた。信雄は、姉弟になぜか心魅せられていくが、父親は、「夜はあの舟へ行ってはいけない」と言うのだった。 泥々とした 風景と少年の眼  第十三回太宰治賞を受賞したこの作品は、信雄と家族、そして食堂に出入りする労働者、さらにこの川に浮かぶ廓舟の姉弟とその母との交友を通じて少年の眼にうつる大人の世界と、泥々とした川にまつわる風景を描いている。  作者の宮本輝は『泥の河」についてこう語っている。  「私の心の中には、絶えずひとつの風景があった。大都会のはずれで合流する二本の大きな川と、陽を受けて黄土色に輝く川面のさざなみ、(中略)。『泥の河』という小説は、つまり私の中にひそんでいた不鮮明な映像をときほぐしていくことによって、つむぎ出されていった作品である」  私達は心の中に、少年の頃の風景を持っている。それは作者が言うように、不鮮明な映像であるが何かのきっかけがあれば、あざやかに浮かんでくる風景でもある。  昭和三十年。赤銅鈴之助の放送がラジオから流れてくる場面や、喫茶店のガラス越しに、大相撲のテレビを観るシーンは、高度成長以前の貧しい少年時代を思い起こさせる。あの頃は、みんなが貧しかった。そして大人と子供は、全く別の世界に住んでいた。戦争の傷痕をカスのようにひきずって生きている大人もいた。 ある日、黙って、喜一の郭船が去っていったように、子供たちの別れは、突然、それもいたって日常的に訪れていた。 内部に残る戦争の痕跡 映画「泥の河」は昨年数々の賞を受賞した。マイナー系の映画としては、あまりにも多くの観客を動員したといえるかも知れない。それは白黒スタンダードの古い手法の画面構成と相まって、「団塊の世代」における、過去への追想とともに、高度成長時代への批判にもなりえていたためかも知れない。  今、小説の舞台となった、端建蔵橋へと歩く。阪神福島駅から阪大病院へと歩いていくと、三分ぐらいで、福島の天満宮がみえてくる。原作で、浄止橋の天神さんと書かれている神社だ。  祭り囃子にせき立てられるように、信雄と喜一が露店の並ぶ黄昏の街を駈けていき、大事なお金を落とす場面はここである。  しかし、今や戦争の残骸は全くなく、近代的なビル街が並んでいるばかり。高度成長が、大阪の街を変貌させてしまったのか。はたして、戦争の残骸はこの街のどこにも残っていないといえるのだろうか。  黄土色の川をみつめながら、私は、廓舟は川上へのぼっていったが、それは川上ではなく、私の内部へ去っていったのではないかと思わずにおれなかった。

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2013/09/14

こういうの読みたかった! こういうのというと…センター試験現国の問2でちょっと読んで結末が気になったけど、そのまま読んでなかった感じ。 実際この話に出会っていたかは覚えてないけど、あの問2っぽい本です!笑 最近の本を読んでいると、「何とも言えない気持ち」とか「何となく」と...

こういうの読みたかった! こういうのというと…センター試験現国の問2でちょっと読んで結末が気になったけど、そのまま読んでなかった感じ。 実際この話に出会っていたかは覚えてないけど、あの問2っぽい本です!笑 最近の本を読んでいると、「何とも言えない気持ち」とか「何となく」とか、軽々しく使われているなぁ、と感じます。 そこを絶妙な比喩やステキな文章力で、見事に表現しきるのが作家だろ!って思うんよ。 それまでに本の舞台や時代、登場人物にすっかり入り込んでいないのに、「わかる?この言葉で表現しきれない感じ!」ってやられても、作者だけ盛り上がっちゃって言葉が出ないのか、万人受けを狙って言及を避けたのかと感じちゃうんだよね。 それね、解釈の余地をつけたんじゃなくて、芸術・表現の道から逃げたんだと思う。今のJ-POPと同じだ!(別に悪かない。エンターテイメント!!) 宮本さんは貧しい場末の様子や不幸な暗さを、筆者目線と主人公目線で拡縮巧みに表現する。言葉で織り織り、会話も駆使して文章を紡ぐ。 時々「何となく」を使うし、人物の素振りしか書かず心理描写はしない時もたくさんあるんだけど、それまでにちゃんとこの世界に入れてるから、置いてきぼりにならない。 「うんうん、そりゃ何とも言えんわ!」ってなるし、「わー、きっちゃんココ何考えてんだろ。千代さん…色々思うとこあるな…。」って、一つ一つ説明するのは野暮!という気持ちになる。 あとはお好きにどうぞ~って読者に投げているんじゃなくて、絵画で作者が全部言葉で説明しないで強いメッセージを発するのに似た、全てを語らない芸術に触れた感覚です。 同じ「説明しない」なのに、肯定的に捉えられたり、始めに書いたみたいに叩きまくったり(笑)感じ方の違いってどこから生まれるんだろうね。今はわからないから、もっと勉強がいるな! 言葉を尽くす表現と、語らない表現っていう、2種類の芸術があるんだなーと改めて気づかせてくれた1冊。 綺麗と思ってたけど、実際近づいてみるとあまりに生々しくて息を飲んじゃう。 螢火の柱と人間の生きるとか死ぬとかが重なった。 文芸ってこういうののこと…? もう大人になってるけど、これからでも間に合うよね!文学史に出てくるような、日本の名作をちゃんと読んでみよ~!

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2011/10/20

泥の河目的で読み始めたけれど、蛍川の方が断然イイ。 作者の表現の仕方がスキ。 とても叙情的だけれども、それに流されすぎないところのバランスが秀逸。 泥の河の映画をもっぺん見直そうかなと思ったり・・・ 読んでる間も、田村高廣が頭の片隅でチラチラするんだもん…

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2012/08/07

表現力が素晴らしく引き込まれずにはいられませんでした。幼い男の子視点なのがまた良くて、どうしようもないもどかしさと畏ろしいほどの美しさで胸が詰まった。すごい。宮本輝さんの作品はもっと読んでみたい。好きです。

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2011/09/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

流転の海シリーズで宮本輝を知って、初期作品を読んでみたくて千種で買った本。 昔の少年独特の繊細でもどかしい感情や心情が生き生きと伝わってきて、少年に同調しながら読めた。戦後の混沌を少年と同じ目線で共感できた気がする。ホタルが乱舞する幻想的な描写がよかった。

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2011/08/29

螢川は最後が印象的。 沢山の人物の過去や心情が描かれてていて、生も病気も死も友情も愛情もごっちゃごちゃだと思ったけど、そういうのを全て合わせて人間の「命」なんだなって思った。 必死で努力しても運命のような見えない力で負けて、それすらもちっぽけなあがきなのか。 泥の河は出てくる大...

螢川は最後が印象的。 沢山の人物の過去や心情が描かれてていて、生も病気も死も友情も愛情もごっちゃごちゃだと思ったけど、そういうのを全て合わせて人間の「命」なんだなって思った。 必死で努力しても運命のような見えない力で負けて、それすらもちっぽけなあがきなのか。 泥の河は出てくる大人が悉く優しくて切なかった。時代を感じます。

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2011/08/21

忘れていたような昔に蛍川のドラマを見ていたのを本を読んで思い出した。 おじいさんは笠智衆さんだったと思う。 おばさんが電車に乗り込む少年に、 「お金が何ね、そんなものみんなあんたにあげったっていい」と言って泣くところを覚えている。(言葉とかは絶対正確じゃないけど)

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