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蛍川・泥の河 の商品レビュー

4.1

210件のお客様レビュー

  1. 5つ

    68

  2. 4つ

    77

  3. 3つ

    39

  4. 2つ

    7

  5. 1つ

    1

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2012/05/15

芥川賞受賞作螢川。太宰治賞受賞のデビュー作泥の河。大阪、富山の川面を舞台に、少年の成長と人間の生き様が刻まれている。

Posted byブクログ

2012/04/27

蛍川もいいのですが 泥の河がばつぐん。 少年のキラキラした純粋さと 家庭環境が作る影があいまって 泥の河が流れる。 こういう哀切と愛情のかみ合う 人間模様は貧しい時代でこそなのかな。 現代小説ではあんまみられない。

Posted byブクログ

2012/06/28

『泥の河』 「目をそむけたいが、そむけられない事実」というものは、誰しも経験したことはあるのではないでしょうか。この小説は、戦争の傷跡を昭和30年代の大阪を舞台に描いた少年と大人との琴線に触れた切ない物語です。川沿いに住む主人公、信雄少年の近辺に現れた一艘の舟(廓舟)が、又どこか...

『泥の河』 「目をそむけたいが、そむけられない事実」というものは、誰しも経験したことはあるのではないでしょうか。この小説は、戦争の傷跡を昭和30年代の大阪を舞台に描いた少年と大人との琴線に触れた切ない物語です。川沿いに住む主人公、信雄少年の近辺に現れた一艘の舟(廓舟)が、又どこかに去るまでの短い期間を描いたものです。 この作品は、言葉が丁寧に書かれており、重層的であるため読み返すたびに新たな発見があるように感じます。 大人の世間話の中にどうしても残酷な言葉が、多く含まれていることに、この作品を読んで気づきます。子供の会話は素直であるだけに、恐ろしさもあり、また、やさしさもあります。 作中に信雄の母が、おしつけでなくやさしさから服を廓舟の娘(喜一の姉)にあげようとするが拒否する場面での「銀子は黙っていた。」という地文があります。なにも語らないということが全てを語っているということに考えさせられました。 <消えていく小説> この作品は、次から次へと消えていきます。荷馬車の所有者の男が自分の馬と馬車にひかれて死んでいきます。ゴカイ取りのやました丸の爺さんが突然川の中へ消えていきます。信雄の父が語る戦友村岡も復員後三カ月、五尺ほどの高さからおちて死んでしまいます。鳩の雛が喜一に握りつぶされて消えていきます。何匹もの蟹が油を飲まされ火にあぶられて消えていきます。おもちゃのロケットが消えていきます。廓舟が別の場所に去っていきます。そして、お化け鯉=(業であろう)もその舟についていきます。現れては消えていきます。宿業というもの考えさせられる作品です。 『蛍川』 和歌には枕詞というものがありますが、「セピア色」というのは「写真」「映画」という言葉の「記憶」という意味を含んだ現代の枕詞なのでしょう。 本作品は「雪」「桜」「蛍」の3章でできています。冬、春、夏と季節は別ですが、共通点があります。これらは一瞬見た目では美しいということです。しかし、じっくりと観察すると、これらには憂鬱にする要素があります。また、これらには単体ではなく、集合してはじめて「美」になるという点です。 本作品では、2枚の写真がでてきます。主人公竜夫の思いを寄せる英子の写真と竜夫の父の若き頃に友人大森亀太郎と映った写真です。この2枚の写真は人生の一部分の記憶ということなのでしょう。そして、輝いた時期としての記憶なのでしょう。だれもがこの一瞬をどうしてもとどめておきたいということはあるでしょう。 「記憶」といえば、この作品は、父の匂いでサーカスを思いおこし、英子の匂いを気にします。一見華やかに見えるサーカスの暗い部分、英子という生々しい部分を匂いから感じ取ります。匂いとは強い刺激により、鮮烈で活き活きとした記憶を脳に蘇らすとともに植えつけるものなのでしょう。 見る(視角)⇔三味線の女(見えない)、聞く(聴覚)、匂う(臭覚)、話すというという身体的特徴をみごとにとらえた作品ですね。 川は上流から下流へ姿をかえ名前をかえ流れていきます。人も人類も川の流れのように流転していきます。「蛍の綾なす妖光が人間の形で立っていた。」という箇所は、仮の形にかえての生命の表現とともに人間の「サガ(性)」という強いインパクトがあります。

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2012/03/23

初、宮本輝さん。 日本の泥臭さ、汗臭さがずっしりと伝わってくる文章だった。 決して読者を甘やかしてくれない。 螢川は、私の故郷を描いた作品で、もう冒頭から涙腺がゆるみっぱなし。 何故だか切なくて辛くて泣けてきた。 本当に巧い作家さんで、こっちは黙るしかないという感じ・・・

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2012/03/13

宮本輝 河三部作の2作。太宰治賞と芥川賞受賞作。以前の道頓堀川と合わせて、三部作読了。 戦争の傷跡が生々しく残る日本で懸命に生きる姿。 汚れる選択をしながら必死で子供を育てる姿を、だれが責められよう。

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2012/03/04

泥の河まで読了。 徳井さんの言う平等ってこう言う事なのかなぁって思った。 途中で、あ、これは名作だぞと感じで、大事に読んでみた。 こんな子供時代は送っていないんだけど、 郷愁みたいなものを感じだ。 早く読んでおけばよかった。 早く蛍川読まなきゃ。

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2012/03/02
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

2012.2.29読了。 初めての宮本輝作品。 文章が親しみやすいというか、平易な言葉で書かれていて読みやすかった。勝手にもっと堅苦しい文章を書く作家だと思い込んでいた。 この本には「泥の河」と「螢川」という川にまつわる2作品が収められている。 どちらも情感溢れる良い作品だと感じたけれど、やはり「螢川」が圧巻。 主人公の竜夫の視点と母・千代の思い出から紡がれる物語に感動した。 全体の流れも丁寧に練りこまれていて、飽きずに読める。 巻末の桶谷秀昭氏の解説が素晴らしい。 巻末の解説はつまらない内容のものが多いので、こういう解説が読めるというのはとても嬉しかった。

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2012/02/17
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

注意;最期に引用有ります。 正直なところ、蛍川も、泥の河も、好きではない話でした。 教養として読んでおこうと思い読んだくらい。 でも、所々にぞわっとするシーンがありました。 生と性の後ろめたさ。仄暗い人間の欲望と、生命と感情の輝きや煌きみたいなもの。 少々分からないところもあったので、いつかまた再読をしよう。 ネタバレになりますが、一番ぞわっとしたのは 泥の河の「・・・僕、また足汚れてしもた」でした。 蛍川のラストよりぞわっとした。

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2011/12/06

太宰治賞受賞の「泥の河」と芥川賞受賞の「螢川」。宮本輝の初期の著作物。宮本さんの作品には氏独自の死生観が散りばめられているように思いますが、この初期の2作には特にそれが顕著に現れているような気がします。

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2011/11/27

 僕がこの本を読んで一番感じたのは登場人物がどこか「本物っぽい」ということだった。「本物っぽい」というのは、本当に実在しそうな人間、という意味だ。なぜそのように感じるか考えてみたら、登場人物の誰もがどこか「影」を持っているからだった。  泥の河は、大阪の安治川の周辺でうんど屋を営...

 僕がこの本を読んで一番感じたのは登場人物がどこか「本物っぽい」ということだった。「本物っぽい」というのは、本当に実在しそうな人間、という意味だ。なぜそのように感じるか考えてみたら、登場人物の誰もがどこか「影」を持っているからだった。  泥の河は、大阪の安治川の周辺でうんど屋を営む家の小学生の息子信雄と小さな違法船の中で生活を営む家族の一人息子松本喜一との間を中心に繰り広げられる、とても平凡で繊細な物語だった。ふとした瞬間人は死に、ふとした瞬間別れはやってくる。ふとした瞬間人を好きになって、でもふとした瞬間その人の違う面を見てしまい、その人のことを前のように想うことができなくなる。普通の日常の中に離散的に存在する非日常。その離散的な「非日常」をとてもリアルに日常の中に描いている作品だった。  蛍の河は最後の終わり方が僕には少し分からなかったが、とても面白かった。泥の河同様、登場人物はそれぞれどこか暗い影を落とし、日常を精一杯生きている。富山県の雪山で中学生の竜夫とその母千代、そして物語の冒頭で危篤状態に陥り物語の中で弱く死を遂げる元事業化の重竜の三人を中心に繰り広げられる物語。ある一瞬から昨日までの日常が急変し、新しい「日常」が眼前に現れる。そこで昨日までの「日常」と「今日」からの日常の間で苦しむ登場人物の姿がリアルに描かれている。

Posted byブクログ