蛍川・泥の河 の商品レビュー
必要最低限の言葉で本来あるがままの意味以上のものを表現する。それは美しく力強い、日本語が本来持っているべき性質なのかな。飾り立てた修飾語や流行や機知に富んだ比喩なんて要らない。ああ、読むのがもったいない。
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こどもってこういうものですね。何でもまっすぐ見えているのに。どうして大人になると、忘れてしまうんでしょうね。忘れて、したり顔でえらそうに「こどもは分かっていない」なんて思ってしまうんでしょうね。
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P181のスカートから入り込んだ螢を出す表記がとても素敵だった。 宮本輝さんの作品は、行動の中で、はじらいと色気と驚きが入り交じっていることが多く、やられた!とよい衝撃を受けることが多いです。
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何一つ無駄を感じさせない、淡々とした文章なのに、物凄く力がこもっています。 “感動”って、ハッピーエンドだけじゃない。と、改めて感じた一冊。 短編二話。 『泥の河』 舞台は戦後から高度経済成長へと向かう昭和31年の大阪安治川の河口。主人公は8歳の少年。 強く優しい少年と両親、少年が心を交わした姉弟。 信雄と喜一の最後のシーンがとても切なく、その期待の裏切りさえ胸が熱くなりました。 『蛍川』 やはり戦後復興へと進む昭和37年の富山市、雪の3月。主人公は14歳の少年。 父親の死。 父親が築き、残してくれたもの、残ってしまったもの全てが、強くて儚い。輝きは短かったかもしれないけど、とてつもなく大きな光だったんだろうと思います。 思春期にある主人公達の言葉にできない感情と、儚いストーリーに胸がいっぱいになった二作。 宮本輝、素晴らしいです。
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蛍川・泥の河 泥の河。 戦後の雰囲気を色濃く感じさせる背景に、 うどん屋の少年が感じる言葉にできない 感情を描いた話。 個人的には白昼夢を見ているような印象を受けた。 それが年端のいかない少年目線だからなのか、 読者である自分が歳をとって久しい記憶を手繰り よせているから...
蛍川・泥の河 泥の河。 戦後の雰囲気を色濃く感じさせる背景に、 うどん屋の少年が感じる言葉にできない 感情を描いた話。 個人的には白昼夢を見ているような印象を受けた。 それが年端のいかない少年目線だからなのか、 読者である自分が歳をとって久しい記憶を手繰り よせているからなのか。判別がつかない。 蛍川。 泥の河が少年を主人公にしたのに対して、 こちらは思春期の男の子の話。 体が成長して外の世界とのチャンネルが 大きく開く。そんな過程が、生々しく感じられる。 泥の河から続けて読むと、 ぼやけた空間から宙に放り出されるような錯覚を覚える。 どちらの物語も流れるような文章。 知らないようでいてノスタルジーを感じる 日本人の原風景がある。
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日本語が美しすぎる……。薄い本なんだけど読むのがもったいなくて読み返し読み返しちょっとずつ読んでたらものすごい時間かかった。
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共に映画化されており、既に観賞済み。『泥の河』では哀切感溢れるモノクロ映像が明確に残り続けているので、小説との比較を楽しめた。『蛍川』ではホタル狩りの場面しか覚えていなかったので、物語に耽ることができた。粗筋的には後の代表作『流転の海』の内容と大いに重なり、この短編をモチーフにあの大長編が生まれてことが分かる。 共に少年を主人公として、瑞々しい視点の中から戦後の混乱期に生きる大人たちの苦難を描写しております。
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好きな本を聞かれたら必ず名前をあげる作品。 戦後の混沌とした日本を明るく、でも悲しく描いた作品。 私はこれを読んで涙が止まらなかった。 戦後の日本とは言え、分かりやすい言葉で書かれた作品なので心に入ってきます。 何回も読みたい本。
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素晴らしく完成度の高い作品。 読み終わった後のなんとも口から漏れる溜息は心地よかった。 特に何が良いとかを感じるところはなかったのに、どっぷりとその世界で生きて来たような気持ちにさせてもらった。 文章に匂いと触り心地みたいなものを感じさせてもらった。
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日本文学。戦後の貧しい日本が生き生きとした姿で、描かれている。これは、中学受験とか高校受験とかの国語の問題の物語文でとてつもなく使われそうな作品だなあ、というのが率直な感想。力ない所謂一般大衆の姿を美しく捉える試み。それにしてもなんで、人間が色々なことを考えながらもがきながら生き...
日本文学。戦後の貧しい日本が生き生きとした姿で、描かれている。これは、中学受験とか高校受験とかの国語の問題の物語文でとてつもなく使われそうな作品だなあ、というのが率直な感想。力ない所謂一般大衆の姿を美しく捉える試み。それにしてもなんで、人間が色々なことを考えながらもがきながら生きる姿がこれほどまでに胸につまるんだろうとおもうと、ほんとうに、このくらいの死の近さとか、アスファルトで舗装されていない地面の土煙とか、そういうのが本来のあるべき姿であって、そこで毎日毎日生きるというのが本来の姿であって、それを失った哀しみが胸に迫ってくるのかとおもった。とにかく美しいけどかなしい。この本をイメージすると思い出すのは多分、まだ舗装されていない道路を荷馬車が通ったときにもくもくと舞い上がって様々なものをうす茶けた色に染めてゆく土煙。
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