蛍川・泥の河 の商品レビュー
戦後間もない頃の話。 みんな懸命に生きている。 命を落とす確立の高い戦争から生きて帰ってきた人達がささいなことで亡くなってしまったりした。 それも人生かもしれないけれど、決して胸を張って言える仕事でなくとも懸命に生きる沢山の大人たちを見ている子供たちは その自らの命を大切にするだ...
戦後間もない頃の話。 みんな懸命に生きている。 命を落とす確立の高い戦争から生きて帰ってきた人達がささいなことで亡くなってしまったりした。 それも人生かもしれないけれど、決して胸を張って言える仕事でなくとも懸命に生きる沢山の大人たちを見ている子供たちは その自らの命を大切にするだろう。
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戦後の貧しい時代を生き抜いた人たち。主人公の少年はともに思春期に差し掛かり、生と死を目の当たりにする。不幸を描いた暗い内容だが、情景を描く文章表現が素晴らしい。
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筆者の代表作二編。短編を感じさせない深みのある文体と中身の濃さは文豪の風格か。ともにものがない時代逞しく生きるおぞましき大人の世界を子供の目線にて描く。 全般を通じ、暗い雰囲気を漂わせ生より死を強く意識している印象を受ける。そして蛍川最終章の”絢爛たるホタルの乱舞”の描写は圧巻で...
筆者の代表作二編。短編を感じさせない深みのある文体と中身の濃さは文豪の風格か。ともにものがない時代逞しく生きるおぞましき大人の世界を子供の目線にて描く。 全般を通じ、暗い雰囲気を漂わせ生より死を強く意識している印象を受ける。そして蛍川最終章の”絢爛たるホタルの乱舞”の描写は圧巻です!
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僕が読書を趣味とするキッカケになった小説。以後、宮本輝作品は一番多く読んでいるけど、その中でもこの本は一番多く読み返している。 泥の河は、僕が大阪に住んでいたころの情景を思い起こさせるし、蛍川は、登場人物がホタルを見に行った時のラストの描写が素敵。 感覚を研ぎすませたたい時に、こ...
僕が読書を趣味とするキッカケになった小説。以後、宮本輝作品は一番多く読んでいるけど、その中でもこの本は一番多く読み返している。 泥の河は、僕が大阪に住んでいたころの情景を思い起こさせるし、蛍川は、登場人物がホタルを見に行った時のラストの描写が素敵。 感覚を研ぎすませたたい時に、この本を手に取る。
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『蛍川』は1978年下半期の芥川賞受賞作、併録の『泥の河』は著者のデビュー作で太宰賞を受賞。いずれもラストシーンが鮮やかで心に沁みる。この人の小説作法はエンディングが先にあって、そこから逆に遡って物語を構成していくのだろうか。『蛍川』のそれは、ことさらに美しく、幻想的である。しか...
『蛍川』は1978年下半期の芥川賞受賞作、併録の『泥の河』は著者のデビュー作で太宰賞を受賞。いずれもラストシーンが鮮やかで心に沁みる。この人の小説作法はエンディングが先にあって、そこから逆に遡って物語を構成していくのだろうか。『蛍川』のそれは、ことさらに美しく、幻想的である。しかも、それが蛍の乱舞であるだけに、儚さを伴い、そこに独特の抒情を喚起する。自分が体験した訳ではないが、物語の持つ強い郷愁と哀愁に包まれるのだ。実験的なところはなく、地味でさえあるのだが、作者の思い入れの強さはひしひしと伝わってくる。
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※このレビューにはネタバレを含みます
ぞくぞくと震えます。 作品の持つ、芸術としての美しさと、 我々の生きるこの世界の奥暗さに。 物語のヴォリュームに比して、文章は簡潔。普通の作家がやったならばただの説明文になってしまうような短さです。 しかし、必要最低限度のこの文章が、豊穣な風景を眼前に現出させます。まるで、昔見たことがある風景みたいに。 不必要なものがすべて排除され、思考の妨げが何もないからこそなのでしょう。この圧倒的な表現力にただ息を呑みます。 文章も、現れる世界も、すべてが美しい。 泥の河よりも蛍川のほうが好きです。 少年が大人になり始める「泥の河」と、 子供である(もしくは世界から庇護される)時間が終わる「蛍川」。 前者に感じるのは、ちくりちくりと胸をつつくほろ苦さですが、 後者に感じるのは底知れぬ深い闇の恐怖です。 手を伸ばしてみれば、じつは全然恐れることのない暖かな世界なのかもしれない。 でも夜は暗い。 蛍はいつか消えてしまう。もちろん、光を生み出しつづける英子とも、離れなければいけない。 そしてその後には圧倒的な質量をもった闇が置き去られる。 その最後の瞬間を、鮮やかに描いた作品です。
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初宮本輝。 宮本輝といえば「ダバダ~な違いの分かる男」という程度の認識しかなかった(しかも宮本亜門と混ざる)けど、こういう作家さんだったのね。 方言と情景がステキでした。
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泥の河から去っていく船を追いかけるようにして泳ぐ「お化け鯉」を見つめる信雄、蛍川で天空へと舞い上がる蛍の大群に包まれる竜夫。彼らはその後、どうなったのだろうか……。美しい作品。
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舞台は昭和30年。 この国にもこんな時代があったんだという、ある意味記録的な小説だと思う。 船が移動していくところで話は終わるが、子供たちの人生はまだまだ続く。 きっちゃんや銀子、そして当時はたくさんいたであろう似た境遇の子供たちの将来はどうなったのだろう。 日本が豊かになっ...
舞台は昭和30年。 この国にもこんな時代があったんだという、ある意味記録的な小説だと思う。 船が移動していくところで話は終わるが、子供たちの人生はまだまだ続く。 きっちゃんや銀子、そして当時はたくさんいたであろう似た境遇の子供たちの将来はどうなったのだろう。 日本が豊かになったからといって、残念ながら全ての子供が幸せになれるわけではない。 格差社会が叫ばれる今、全く過去の話とは言い切れないと思う。
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泥の河 宮本輝の感性がシャープで、のちのまだろっこしい文章ではなく 直裁な文体が 叙事詩のように広がっている。 泥のような河にも 人生は繰り広げられている。 人生というより 生があり 死があった。 そして、戦争の焼け跡の 猥雑な雰囲気があり、 たくましさと心細さが入交じっている...
泥の河 宮本輝の感性がシャープで、のちのまだろっこしい文章ではなく 直裁な文体が 叙事詩のように広がっている。 泥のような河にも 人生は繰り広げられている。 人生というより 生があり 死があった。 そして、戦争の焼け跡の 猥雑な雰囲気があり、 たくましさと心細さが入交じっている。 戦争に勝ったか 負けたかよりも、生き残ったのかどうかのほうが、 重要なんだという 信雄の父親の言葉が印象的だった。 多感になる前の8歳の信雄は、 泥の河に面した うどん屋の息子だった。 河とともに生活することが 普通だった。 そんな信雄の前に 小さな船が一艘現れた。 同じ歳の喜一と姉の銀子がその船にすんでいた。 それは 同じ河に沿って生きているにも関わらず 違う世界のものが たくさんにじんでいた。 廓船として、まわりから見られ、そのことでいじめられる喜一や銀子。 信雄はいたたまれないが、喜一は違った顔を持っていた。 そういう、隔たりの中で 信雄は涙を流すしかなかった。 蛍川 日本のふるさとの情景と 青春の始まりのほのかな香りと甘酸っぱさ。 こんな風に 情景をとらえる筆力は やはりなみなみならぬものがある。 大人の世界では 父親 重竜は 豪快な人物であるが、竜夫が物心ついたときには 事業に失敗して、敗北した姿しか見えなかった。 竜夫は千代の子であるが、重竜の前妻は子供が生まれないがゆえに 離縁してしまった。なぜ、そのようにしたか 千代も竜夫もわからない。 よほど 子供が欲しかったのだろう。 竜夫が好意を寄せているのが 英子だが 関根も同じように 英子に好意を寄せていた。 そのため、関根は英子が進む高校への受験に励んだが 父親から 受験をすることを拒絶され、 英子から盗んだ 写真を 竜夫に 渡して 死んでしまう。実に、甘酸っぱい経験となる。 銀蔵は 4月に大雪がふると 田植え前に蛍が 乱舞すると いっていた。銀蔵、千代、英子、竜夫は 蛍を見に行くのだが、 蛍は。
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