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鍵のかかった部屋 の商品レビュー

4.1

50件のお客様レビュー

  1. 5つ

    15

  2. 4つ

    20

  3. 3つ

    9

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2024/06/22

『幽霊たち』を読み、ニューヨーク三部作が気になって手に取った。作中で述べられている通りこの2作は同じテーマで書かれているので構成はそっくりだが、『鍵のかかった部屋』の方がかなり具体的だ。 自分と向き合う度「お前は今まで何してたんだ?」と問いかけてくる幽霊。そいつを取り殺すことはで...

『幽霊たち』を読み、ニューヨーク三部作が気になって手に取った。作中で述べられている通りこの2作は同じテーマで書かれているので構成はそっくりだが、『鍵のかかった部屋』の方がかなり具体的だ。 自分と向き合う度「お前は今まで何してたんだ?」と問いかけてくる幽霊。そいつを取り殺すことはできないが、そいつに取り殺されるのはたやすい。ぎりぎりのところで踏みとどまり、現実に帰ってきた主人公はすごい。

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2024/01/30

良かったわぁ。引き返せない孤独に入り込んでしまうような読み心地。この世界にずっといたいのにニューヨーク三部作全部読んじゃってさみしい。

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2024/01/07

ニューヨーク3部作のストーリーは全部独立してるのでどれから読んでも良いと思うけれど、この作品を最後に読んだのは正解だった。例えばマルチエンディングのロールプレイングゲームをやっていて、バッドエンドとか歯切れの悪いエンディングを繰り返して、鍵のかかった部屋ルートでやっと希望を感じさ...

ニューヨーク3部作のストーリーは全部独立してるのでどれから読んでも良いと思うけれど、この作品を最後に読んだのは正解だった。例えばマルチエンディングのロールプレイングゲームをやっていて、バッドエンドとか歯切れの悪いエンディングを繰り返して、鍵のかかった部屋ルートでやっと希望を感じさせるエンディングを見れた、みたいな感覚。 この作品がモヤッとエンドだったらきっと私は翌日の仕事に引きずる程度には落ち込んでいたと思う。決別と新たなスタートを予感させて締めてくれたオースターさんに感謝。この作品だけ一人称視点で書かれてるのも面白いところ。

Posted byブクログ

2023/06/03

奥付は1989年の単行本を再読。 いわゆる「ニューヨーク3部作」を続けて読んだのは初めてなのであって、前作、前々作で登場した名前が再登場してもまだ覚えており(名前だけ同じ役柄は違うが)、間を置くとおそらく忘れていたであろうから「3作通読してよかったな」というのはこうした点であろう...

奥付は1989年の単行本を再読。 いわゆる「ニューヨーク3部作」を続けて読んだのは初めてなのであって、前作、前々作で登場した名前が再登場してもまだ覚えており(名前だけ同じ役柄は違うが)、間を置くとおそらく忘れていたであろうから「3作通読してよかったな」というのはこうした点であろう。 で。 通読してよかったのは以上の点で、通読して悪かった点は、3作同じスタイルなので飽きてしまうということ。登場人物の名前が変わるだけでストーリーやテーマの枠組みはほぼ同じなんだもん。 というわけで『幽霊たち』の感想同様、同じ対象物を角度を変えて描いた素描的小説が3作、という感想で身も蓋もないが、ただ、作者がこなれてきたせいか、本作がいちばん小説っぽい。 結局、当時の自分がこの作家の作品を何冊も読んでいるのだから、気に入っていたのだろう。 「若い頃に読んだ本を年とってから読むとまた違った感想を抱く」ということは訳知り顔でよく言われることだが、それはそのとおりで、20代だった自分がハマったオースターも、50代の自分にはあまりインパクトがなかったということを考えると、彼の作品は若いうちに読んだほうがいんだろうなぁ。 それなりに社会にもまれたおっさんが読むと、ファンタジー臭が鼻についてしまうのだろう(個人の感想です)。 これは逆もあって、若いとき読んで印象が薄い、ピンとこなかった作品をおっさんになって読んでみると心が超震えるちう作品もある。 ということで自分の年齢を考えると、この3冊の次の再読はたぶんもうない。ただ、北欧あたりで映画化されたら(ハリウッドじゃいや)見ちゃうかもだ。

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2022/12/04

あまり呼んだことのないカテゴリーの本だったかど、なんか気持ちがわかるような、わからないような、そんな面白さがあった。

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2022/09/04

ポール・オースターのニューヨーク3部作(というらしい)最終作。 前2作に比べてハーッピーエンド風になっています。3部作に共通するのはこの世から逃げ出したい・存在を消してしまいたいという欲求を実行に移していく男たちが主人公であることです。「鍵のかかった部屋」では主人公が行方不明に...

ポール・オースターのニューヨーク3部作(というらしい)最終作。 前2作に比べてハーッピーエンド風になっています。3部作に共通するのはこの世から逃げ出したい・存在を消してしまいたいという欲求を実行に移していく男たちが主人公であることです。「鍵のかかった部屋」では主人公が行方不明になった幼なじみファンショーを探すという口実で自分も逃げ出してしまおうとします、最終的には思いとどまり普通の生活に戻ってきます。物語はなんとなく幸せになった感じで終わるのですが、逃げ押せたファンショーと平凡な生活を送ることになった主人公のどちらが幸せかは他人にはわかりません。 ポール・オースターはアメリカ人もダサイ青春をおくるんだと言うことを教えてくれた初めての小説家です。

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2022/06/19

読み始めてすぐに物語の中に惹きこまれます。 やっぱりクセになる作家ですネ。 テンポの良いストーリー展開。 文章にもリズムを感じます。 世のほとんどの人は、 自らを騙しながら、 あるいは心に蓋をして 生きているのではないでしょうか? 書くという行為は、 どのような内容のものにせよ...

読み始めてすぐに物語の中に惹きこまれます。 やっぱりクセになる作家ですネ。 テンポの良いストーリー展開。 文章にもリズムを感じます。 世のほとんどの人は、 自らを騙しながら、 あるいは心に蓋をして 生きているのではないでしょうか? 書くという行為は、 どのような内容のものにせよ、 自身の内面を掘り下げ、 ときには気づきたくないことまで、 気づかされてしまいます。 作家の苦悩を描く、 残酷な物語でした。 べそかきアルルカンの詩的日常 http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/ べそかきアルルカンの“スケッチブックを小脇に抱え” http://blog.goo.ne.jp/besokaki-a べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ” http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2

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2022/06/18

文学という営みが、生という意味の体系の深淵を開いてしまうことを明るみにした、3部作の最後の作品。 メタ小説の傑作。 通常、物語は、点と点がつながり線になり、その線が面になり、集結する。伏線回収というのが醍醐味だ。しかし、この3部作は、面が解体して、線になり、さらに遠く隔たった...

文学という営みが、生という意味の体系の深淵を開いてしまうことを明るみにした、3部作の最後の作品。 メタ小説の傑作。 通常、物語は、点と点がつながり線になり、その線が面になり、集結する。伏線回収というのが醍醐味だ。しかし、この3部作は、面が解体して、線になり、さらに遠く隔たった点になり果ててしまう。宇宙の最後のように。私とは何か、という問いは、私の解体の過程にしかない。

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2022/05/20

ニューヨーク3部作の最後の作品。 姿を消した友の残した作品を世に出し、残された家族と共に暮らし幸せを掴む男。 その暮らしが徐々に狂い出す。 『ガラスの街』よりだいぶ入りやすい。 連作短編の様に出てくる人物が少しかぶるのも面白い。

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2022/01/28

<ニューヨーク三部作>の最後を飾る作品。前二作同様、探偵小説のフォーマットを用いているが、ミステリー要素が最も強いのは今作であろう。読み手を牽引するストーリーテリングの妙技も冴え渡っている。ミイラ取りがミイラになるという物語だが、憧憬と憎悪の境界線、過剰な同一化に伴うリスク等を通...

<ニューヨーク三部作>の最後を飾る作品。前二作同様、探偵小説のフォーマットを用いているが、ミステリー要素が最も強いのは今作であろう。読み手を牽引するストーリーテリングの妙技も冴え渡っている。ミイラ取りがミイラになるという物語だが、憧憬と憎悪の境界線、過剰な同一化に伴うリスク等を通じて、個々人のアイデンティティを司る要素が如何に脆弱であるかを改めて思い知らされる。最終的に妻子の存在が彼をこちら側に留まらせたのだが、それは他者を介した己の実存性を題材としてきた三作品におけるひとつの着地点でもあったのだろうか。

Posted byブクログ