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鍵のかかった部屋 の商品レビュー

4.1

52件のお客様レビュー

  1. 5つ

    17

  2. 4つ

    20

  3. 3つ

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2012/10/12

幼なじみのファンショーが、美しい妻と小説の原稿を残して失踪した。不思議な雰囲気をたたえたこの小説の出版に協力するうちに、「僕」は残された妻ソフィーを愛するようになる。だがある日、「僕」のもとにファンショーから一通の手紙が届く。 ―作品紹介より 「僕」は決して手の届かないファンシ...

幼なじみのファンショーが、美しい妻と小説の原稿を残して失踪した。不思議な雰囲気をたたえたこの小説の出版に協力するうちに、「僕」は残された妻ソフィーを愛するようになる。だがある日、「僕」のもとにファンショーから一通の手紙が届く。 ―作品紹介より 「僕」は決して手の届かないファンショーを求め、時に大きすぎる存在の彼を憎む。 ファンショーと「僕」は、同一人物ではありえないんだけど、この物語の中では(というかそもそも)自己と他者の境界はあいまいなんだ。 “鍵のかかった部屋は「僕」の頭蓋骨の内側にあるのだ。” 結局ファンショーは「僕」だったんだと思う。 難しかったけどp74を読み返してこの物語が少し分かった気がした。 “暗闇だけが、世界に向かって自分の心を打ち明けたいという気持ちを人に抱かせる力を持つ。そして、そのころ起こったことを考えるとき、ぼくをいつも包み込むのは、まさに暗闇なのだ。暗闇について書くには勇気がいる。だがそれについて書くことこそ、暗闇から逃れうる唯一の可能性であることを僕は知っている。けれどたとえ書くことができたとしても、ぼくが暗闇から逃げ切れるかどうかは疑わしい。たとえ真実を語りおおせたとしてもである。終わりのない物語は永久に続くほかない。終わりのない物語の中にとらわれたものは、だから、自分の役割が演じつくされる前に死んでいかなければならない。僕の唯一の希望は、ぼくがこれから語る話に終わりが訪れてくれればということだ。暗闇のどこかに出口を見つけ出せればということだ。この希望を僕は勇気と定義する。しかしその希望に根拠があるかどうかは、全く別の問題である。”

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2012/06/01

言葉がない。もし人に薦めるとしたら「とにかく読めば分かるから読んで!」としか言いようのない作品。 終盤の主人公と彼の息子の会話が素晴らしい。陰鬱な物語のなかにこの会話があることで、微かな希望が見られるように思う。そして、ラストをどう判断するかは読者しだいだろうと思う。このラストも...

言葉がない。もし人に薦めるとしたら「とにかく読めば分かるから読んで!」としか言いようのない作品。 終盤の主人公と彼の息子の会話が素晴らしい。陰鬱な物語のなかにこの会話があることで、微かな希望が見られるように思う。そして、ラストをどう判断するかは読者しだいだろうと思う。このラストも見事。

Posted byブクログ

2018/05/03

ニューヨーク三部作の一つだが、他二作が 「何者なのかわからないヤツ」を追いかける話だったのに対して、 これは「失踪した親友」を捜す物語で、 三作中、一番読み応えがあった。 鍵のかかった部屋の扉は 「僕」と「彼」を隔てる壁だったのか……。

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2011/12/10

ニューヨーク三部作の中でいちばん好き。三作目にして、なにかオースターの中に解決の糸口が見えたのかなと思わせる感があった。

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2011/11/11

 『リヴァイアサン』でもそうだが、面白いのは、失踪した友人を探したり、探さなかったり、友人のことを考えなくなる時期があると思えば、頭の中が友人のことでいっぱいになったりする、物語の波がある点。不在の友人とは別に日常ではいろいろな事件(仕事や家庭で)が起こるわけで。本作の場合、探し...

 『リヴァイアサン』でもそうだが、面白いのは、失踪した友人を探したり、探さなかったり、友人のことを考えなくなる時期があると思えば、頭の中が友人のことでいっぱいになったりする、物語の波がある点。不在の友人とは別に日常ではいろいろな事件(仕事や家庭で)が起こるわけで。本作の場合、探している友人が自分自身の写し鏡でもあったりするんだけど、人間関係ってこういう、っていうリアリティ・・・。  『トゥルー・ストーリーズ』にオースターの実体験として登場する逸話が、フィクションとして登場したりもする。わかりやすく代表作だと思う。

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2011/10/23

ポール・オースターのファンなら必読。そうでなければ、最初の数ベージを試し読みしてビビっとくれば、買うべし。好き嫌いが別れる小説。

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2011/07/09

こういうの読むと、自分や他人の存在の危うさにひやひやする。そういうのももう飽和してるよお腹いっぱいだなぁ、と思いつつふと思い出してしまう時がある、そんな小説です。

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2011/01/09

これでNY三部作を読破した。本作は一作目のシティオブグラスで登場した人物がちょくちょく登場していた。物や人の名前は全て人間が決めたもの。三作を通じて私のラベリング理論に対する見解を深める事ができた。とにかく言えるのが、一貫して三作どの作品を読み終えても不思議な感覚にったということ...

これでNY三部作を読破した。本作は一作目のシティオブグラスで登場した人物がちょくちょく登場していた。物や人の名前は全て人間が決めたもの。三作を通じて私のラベリング理論に対する見解を深める事ができた。とにかく言えるのが、一貫して三作どの作品を読み終えても不思議な感覚にったということ。

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2010/09/28

途中まではすっごく面白かったんだけど、終盤ちょっと緊張感が切れて来た。オースター作品はラストに向かう展開の仕方が本当に上手だと思う。ラストがどうなるか、というよりもその瞬間瞬間の現在を楽しめる。十年くらい前に初めて読んだ時は全く印象に残らなかったけれど、二度目読み返してみたら地味...

途中まではすっごく面白かったんだけど、終盤ちょっと緊張感が切れて来た。オースター作品はラストに向かう展開の仕方が本当に上手だと思う。ラストがどうなるか、というよりもその瞬間瞬間の現在を楽しめる。十年くらい前に初めて読んだ時は全く印象に残らなかったけれど、二度目読み返してみたら地味に良かった。この人の描写の独自さは本当すごい。

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2010/07/07

 大学の授業で原著を読んで以来だと思う(その前は一度翻訳を読んだだけだったかな)。こんなにおもしろい小説だったっけ、というのが素直な感想。記憶には閉じたドア越しに話をするシーンくらいしか残っていなかったけど、最後の最後に出てくるシーンだったのですね。前半忘れすぎ。  見る者と見ら...

 大学の授業で原著を読んで以来だと思う(その前は一度翻訳を読んだだけだったかな)。こんなにおもしろい小説だったっけ、というのが素直な感想。記憶には閉じたドア越しに話をするシーンくらいしか残っていなかったけど、最後の最後に出てくるシーンだったのですね。前半忘れすぎ。  見る者と見られる者、探す者と探される者、自分と他者、自己の存在と喪失、そのような相反する立場が視点を変えるだけで簡単に入れ替わってしまうということ。そのような魅力的なテーマを3部作を通してそれぞれの語り方で語ってみせた中で、『鍵のかかった部屋』が良かったのは、やはりそこには救いがあるということに尽きる。それほど重要なシーンでもないのに、子供との会話には胸が打たれるものがあった(それ故に僕にとっては重要なシーンなのだ)。

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