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鍵のかかった部屋 の商品レビュー

4.1

52件のお客様レビュー

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2010/06/09

 オースターのニューヨーク三部作と呼ばれるものの三作目(他2作は『ガラスの街』『幽霊たち』)  さて、感想はというと、どうにも完結に言えない作品だった。訳者あとがきはとてもよく書かれていて分かりやすいのだけど、ここでそれをすべて引用するわけにもいかないし、どこかだけを抜粋しても筋...

 オースターのニューヨーク三部作と呼ばれるものの三作目(他2作は『ガラスの街』『幽霊たち』)  さて、感想はというと、どうにも完結に言えない作品だった。訳者あとがきはとてもよく書かれていて分かりやすいのだけど、ここでそれをすべて引用するわけにもいかないし、どこかだけを抜粋しても筋が通らないので困ってしまう。あえて抜粋するならば、「書くことを通し、読むことを通して、人はたえず自らの幽霊を産出し、自らを他者の幽霊に仕立て上げている。1はつねに2であり、2はつねに1である。」ということがこの作品の核になっている。(いきなりこの部分だけ読んでも何のことだか分からないと思うが、作品を読んだ後にこの部分を読むととても的確かつ端的に言い得ていると感じる)

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2020/12/18

NY三部作第三弾。小道具や登場人物の名がこれまでの二作とリンクしてはいるが、物語的には連作ではない。“非在”の存在を追う構成は前二作と重なるものの、完全に主人公自らも失われる一作目、漠然とした出口は見えるがやはり主人公が消えて終わる二作目に比べると、三作目はもっと積極的な事態の解...

NY三部作第三弾。小道具や登場人物の名がこれまでの二作とリンクしてはいるが、物語的には連作ではない。“非在”の存在を追う構成は前二作と重なるものの、完全に主人公自らも失われる一作目、漠然とした出口は見えるがやはり主人公が消えて終わる二作目に比べると、三作目はもっと積極的な事態の解決が図られている。さらに非在のはずの人物が立ち現れる展開、そして非在者が主人公にとって赤の他人ではないということも前二作との大きな違いなのかも。 「他人の中に入っていける人間などいはしない……自分自身に到達できる人間などいない」鍵のかかった部屋の中に誰がいるのか、扉が開かない限り分かりはしない。部屋の扉は鍵で閉ざされ、そしてそれは自らを他者から隔て「部屋」を構築した本人にさえ開けられない鍵なのだ。けれど、「自分と自分でないものとのあいだにある」「僕の真の場」を見失わず、鍵のかかった部屋の外に自分の居場所を見つけた者は、扉を開け放さずとも世界と繋がっていける。部屋は世界の全てではなく、世界は鍵のかかった部屋には収まりはしない。 入れ子形式の物語、その入れ子の外側にある現実が曖昧だった前二作とは異なり、「鍵のかかった部屋」を入れ子形式で包み込む現実は、明朗で健やかな輝きに満ちている。顔の見えない他者の中で自らの顔も失っていく前二作の主人公たち――今作の主人公はイニシエーションを経て、鍵のかかった部屋の中に在る非在の男と決別し、顔のある一人前の男として甦る。靄が立ち込める「鍵のかかった」NYから、三作を経て晴れやかに抜け出すゴールが見えてくる一作。

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2010/02/07

緊張感溢れる展開で一気に読み終わりました。 ラストに衝撃です。 何回でも読み直したい作品です。

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2010/01/05

■後半の失速がもったいない   主人公の「僕」が、疎遠になっていた旧友ファンショーの妻、ソフィーから突然、呼び出されるところから物語は始まる。ファンショーは失踪し、生死も分からないという。「僕」はソフィーからファンショーが残していった「遺作」ともいうべき原稿を預かり、その後の処理...

■後半の失速がもったいない   主人公の「僕」が、疎遠になっていた旧友ファンショーの妻、ソフィーから突然、呼び出されるところから物語は始まる。ファンショーは失踪し、生死も分からないという。「僕」はソフィーからファンショーが残していった「遺作」ともいうべき原稿を預かり、その後の処理を任されることに……。  ある日届いた、ファンショーからと思われる、差出人不明の手紙がきっかけとなり、「僕」は彼の行方を追うことになる。まさに、先にぐいぐいと読み進めさせる探偵小説風の展開だ。ファンショーを失い、傷心だったソフィーとのロマンスも盛り込まれ、二人の関係がどのようになるのかにも興味津津。また、この先、彼らの不幸を案じさせるような表現が複数散りばめられ、言いようのない不安にも襲われる。  しかし、このドキドキ感、不安感も中半まで。ネタバレになるので詳しくは書かないが、個人的には、後半の首を傾げたくなるような展開は、とても残念に思える。この後半は、もう少し複数のエピソードを盛り込むなどして、展開に性急な感を持たせないように、厚みを持たせて良かったのではないだろうか。

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2009/10/04

 ニューヨーク三部作(といっても連作ではないからどれから読んでもいい)の最後にあたる作品で、不在の人物を巡る依頼を主人公が受けるというところから始まる。小説を残して消えた友人を探す「僕」の話。作中の孤独に幽霊を追い求め自己を見失う姿が、書くという行為自体そのものだというメタ的な構...

 ニューヨーク三部作(といっても連作ではないからどれから読んでもいい)の最後にあたる作品で、不在の人物を巡る依頼を主人公が受けるというところから始まる。小説を残して消えた友人を探す「僕」の話。作中の孤独に幽霊を追い求め自己を見失う姿が、書くという行為自体そのものだというメタ的な構造をしている気がしました。ポールオースターは書くという行為、読むという行為自体について考えるところから小説を始めた人のように思える。ニューヨーク三部作の締めくくりで、その問題をひとまず解決したように感じた。この本はきっと僕のために書かれた本だな、などと思い上がれるほどは傾倒しないが、凄い刺激をうけました。 また村上春樹がこの話の一節を「風の歌を聞け」で借りてる場所があった。読んでたんだなと思った。 「翻訳される前に発掘してちょっとパクる」と「長いこと絶版になってる本から言い回しを変えてちょっとパクる」は合法的なテクニックだと思う。 何よりも柴田元幸の翻訳がいい、オースターの作品が日本で受け入れられてるのは訳が優れてるからだと思う。海外文学っていうのは一度訳者のフィルターを通してるわけだから、本当はこういうニュアンスなんだろうなと翻訳を通して原文を予想するのが翻訳ものを読む上での喜びの一つなんですが、柴田元幸の訳はその作家やその国の文学研究者がするような堅い訳ではなく、読ませる訳しかたをしてるからそういうの考えずに読める、それはそれでいいと思う。 優れた作家に出会うとその作家の小説以外のものエッセイとかが読みたくなる。オースターのエッセイが数冊あるようなのでそれも読みたいと思う。

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2009/10/04

授業で英訳した時には何なのこのわけのわからない比喩は、などと思ったものが、柴田元幸氏の訳で「掛け値なしに」おもしろくなっている不思議。

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2009/10/04

内容(出版社/著者からの内容紹介より) 幼なじみのファンショーが、美しい妻と小説の原稿を残して失踪した。不思議な雰囲気をたたえたこの小説の出版に協力するうちに、「僕」は残された妻ソフィーを愛するようになる。だがある日、「僕」のもとにファンショーから一通の手紙が届く――「優雅なる...

内容(出版社/著者からの内容紹介より) 幼なじみのファンショーが、美しい妻と小説の原稿を残して失踪した。不思議な雰囲気をたたえたこの小説の出版に協力するうちに、「僕」は残された妻ソフィーを愛するようになる。だがある日、「僕」のもとにファンショーから一通の手紙が届く――「優雅なる前衛」オースター、待望のUブックス化。

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2009/10/04

PaulAusterのNY三部作、ラストの第三作目。三部作の順番を知らずにこの本から読み始めてしまった私は、一気に彼の魅力のとりこになってしまった。すばらしい。三部作のラストにふさわしい最高傑作。 追いかける方と追いかけられる方。あなたは、どちらですか?

Posted byブクログ

2009/10/07

書店での見つけやすさの順だったような気がするが、 三部作を順番どおり読めてよかった。 他人と自分と社会と思考と見失いながら、気がつきながら。 ラストの行動は、ある意味決別?別の選択?

Posted byブクログ

2010/10/18

ニューヨーク三部作の第三作。存在を否定したファンショーを追い求めて、最後にファンショーの鍵のかかった部屋に引き寄せられていく主人公。追い求め過ぎて自分のアイデンティティが崩壊しそうになる。ニューヨーク三部作はそれぞれリンクしているので、順番にそって読むことをお勧めします。

Posted byブクログ