エレンディラ の商品レビュー
「大人のための残酷な童話」として描かれた7篇の短編集。 童話といっても登場するモチーフは死や殺人、人間の欲など黒々としたもの多数。平穏な日常に舞い込んだ突然の非日常に遭遇する住人たちが良くも悪くも人間臭く、出来事も悲喜交々で味わい深いものばかりです。印象的な作品だけ簡単に。 『...
「大人のための残酷な童話」として描かれた7篇の短編集。 童話といっても登場するモチーフは死や殺人、人間の欲など黒々としたもの多数。平穏な日常に舞い込んだ突然の非日常に遭遇する住人たちが良くも悪くも人間臭く、出来事も悲喜交々で味わい深いものばかりです。印象的な作品だけ簡単に。 『大きな翼のある、ひどく年取った男』 自宅の中庭でペラーヨ夫婦が発見したのは、汚れた翼を携えた見窄らしく惨めな老人だった。ひとまず鶏小屋へ閉じ込め、しばらくしたら見世物にし、いつしか手に余る存在に。人間の欲とミーハーさがよく表現された一編。妻エリセンダの「やれやれ」な安堵のラストが印象的。 『この世でいちばん美しい水死人』 海からその村へ流れ着いたのは、うろこのような皮膚で覆われたよそ者の大男の死体だった。水死人の生前の姿をとりとめなく妄想する女たち、やがて男たちの心をも動かし、村民の都合の良い妄想はやがて村全体に大きな変化をもたらす。思い込みは時として事態を好転させる原動力に。 『無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語』 少女エレンディラは不注意で館を全焼させてしまう。借金返済のために祖母は男たちに声を掛け、エレンディラの若さと体で支払わせる。ある日エレンディラに少年ウリセスが恋をした――。 可憐で純真無垢なエレンディラが、読み進めていくたびに生命力を帯び、力強く躍動していきます。ラストでは軽やかに舞うような後姿を想像し思わず頬が緩みました。
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短編集。 表題作より冒頭の「大きな翼のある,ひどく年取った男」が印象的だった。 灰色がかった生臭くむせ返るような世界観。幻想的でありつつ現実的。 全体的に重く残酷な内容なのに、それほど不快に感じないのは民話や寓話の雰囲気をたたえているからか。 好き嫌いで言えばあまり好きとは言え...
短編集。 表題作より冒頭の「大きな翼のある,ひどく年取った男」が印象的だった。 灰色がかった生臭くむせ返るような世界観。幻想的でありつつ現実的。 全体的に重く残酷な内容なのに、それほど不快に感じないのは民話や寓話の雰囲気をたたえているからか。 好き嫌いで言えばあまり好きとは言えない雰囲気だけど、「百年の孤独」もちょっと気になる。
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海、港、湾にまつわる短編集。 「愛の彼方の変わることのなき死」の幻想的な雰囲気が良かった。 「奇跡の〜ブラカマン」もドタバタ喜劇チックでなんか面白い。 現代の神話。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
この短篇集はホントはなにか戒律とか教訓とかが裏側にあって、それを前提に読むべきなのかもしれないけど、何も考えずに読んで素直に面白かった。そこに描かれている、海辺の街に吹く風の潮の混じった匂いとか、変な汚い天使の姿だとか、眠れないほどの臭気を放つおかしな薔薇とか、そういったものを感じられればそれでいいと思う。 電車に乗りながら読んだけど、すごく天気が良くてこの本にちょうどよかった。途中で一度眠くなって寝てしまったけど、それもそれで満足だった。
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ハーディの作品を彷彿させるようなあまりにも悲惨な話ばかりの短編集だ。それでもハーディのようにウエットな感じがしないのは、百年の孤独と同様な民話調の語り口だからなのだろうか。
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ところどころ、よく読解できない文章もあり、少々難解な詩みたいに感じられる短編もありました。それでも、総じて、わかりやすく、物語に惹きこむ力の強い(しかしどちらかといえばソフトにです)優れた小説だと思いました。マジックリアリズムなんていうと、ぼくは村上春樹さんのものしか知りませんで...
ところどころ、よく読解できない文章もあり、少々難解な詩みたいに感じられる短編もありました。それでも、総じて、わかりやすく、物語に惹きこむ力の強い(しかしどちらかといえばソフトにです)優れた小説だと思いました。マジックリアリズムなんていうと、ぼくは村上春樹さんのものしか知りませんでした。そのため、遠くから眺めるように、マジックリアリズムという手法を見れず、わかっていなかった。しかし、今回、ガルシア=マルケスのこの作品を読んで、なるほど、そういうことなのかな、というように、また村上作品を読んだ時とは違う角度から、マジックリアリズムに触れることができ、それはおもしろい経験でした。しかし、まあ、この作品を読むと、物語の持つ力そのものについて、感じさせられたり、考えさせられたりします。技法がどうとか、言葉遣い、文体がどうとか、そういうのがハナについて見えてこないで、内容とともにそれら技術的な事柄が調和している。これはきっと、日本の作家しか読まないでいるとわからないところなのかもしれないです。
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面白いと評判の小説だったが読了するのに予想以上に時間がかかってしまった。 どの短編も妙に後味が残り、それ故記憶にも残る。しかしこの小説は日本人の感性にあわないと思う。少なくても私の感性には合わない。感性にあわないものはいくら評判が良いものであっても面白くはない。
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the coolness fairy tail? like a hard of Haruki Murakami.
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この作家の小説には、どんなに短いものであっても並々ならぬパワーを感じる。 ロジックが崩壊している、という意味ではもちろんないが、「それはちょっと強引すぎる」と普通なら言いたくなる展開でさえ、気にしている方が馬鹿らしく思えてきてしまう。 その理由の一つとして、スケールの拡大があげら...
この作家の小説には、どんなに短いものであっても並々ならぬパワーを感じる。 ロジックが崩壊している、という意味ではもちろんないが、「それはちょっと強引すぎる」と普通なら言いたくなる展開でさえ、気にしている方が馬鹿らしく思えてきてしまう。 その理由の一つとして、スケールの拡大があげられる。扱っているテーマが大きい、のではなく、日常的なモチーフや出来事が、そのまま小説の世界観と連結しているのだ。つまり1行の濃度がとてつもなく強い、ということ。
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幻想的というか、夢心地な内容だった。 訳者のあとがきを見てなんとなく腑に落ちたが、神話か童話か寓話を読んでいるような、そんな気分だった。 「東雲侑子は短編小説をあいしている」のラノベに本書の名前が出てきたので、興味を持ち手にとった。 こういう本は普段はあまり読まないのだが、理...
幻想的というか、夢心地な内容だった。 訳者のあとがきを見てなんとなく腑に落ちたが、神話か童話か寓話を読んでいるような、そんな気分だった。 「東雲侑子は短編小説をあいしている」のラノベに本書の名前が出てきたので、興味を持ち手にとった。 こういう本は普段はあまり読まないのだが、理解するのではなく、感じるタイプの内容もたまにはいいかなと。 天使、水死人、エレンディラの話がお気に入り。
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