猫楠(文庫版) の商品レビュー
南方熊楠伝を、水木しげるサンが飼い猫「猫楠」の目を通して描く。 前に読んだ「縛られた巨人」も参考文献のひとつに挙げられているし、大まかな系譜やエピソードはほぼ同じなんだけど、「(熊楠が専攻している)粘菌は動植物ともつかぬ奇態な生物や」「生死の現象、霊魂の研究にはもってこいの材料...
南方熊楠伝を、水木しげるサンが飼い猫「猫楠」の目を通して描く。 前に読んだ「縛られた巨人」も参考文献のひとつに挙げられているし、大まかな系譜やエピソードはほぼ同じなんだけど、「(熊楠が専攻している)粘菌は動植物ともつかぬ奇態な生物や」「生死の現象、霊魂の研究にはもってこいの材料や・・・」(35ページ)という台詞に代表されるごとく、死生や輪廻といった、熊楠の根源的な関心に焦点が当てられている。 水木サンのコマ割は、そもそも普通のマンガの語法と比べて微妙に時空の取り方が違っているので、熊楠の独特かつ奇態な人生風景にはぴったりハマっている。熊楠そのものがある意味妖怪なので、水木サンが取り上げる必然性も感じつつ、よくぞ描き残してくれたという嬉しさが湧いてくる。 巻末に中沢新一氏(宗教学者)との対談が載っていて、そこで中沢氏が「粘菌学に集中することで、巨大な脳の分裂状態を繋ぎ止めていた」という意味のことを語っているのも面白い。
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破天荒な天才、南方熊楠の伝記。 十四か国語を習得した上に、猫語も解したという熊楠を、飼い猫となった「猫楠」の視点から描く。 奇才ぶり、ひとたび戦うことになれば徹底的な戦いぶり、心を病んだ息子への愛情など、どれをとっても規格外。 それでも支持者を得て、やっていける。 私のような凡...
破天荒な天才、南方熊楠の伝記。 十四か国語を習得した上に、猫語も解したという熊楠を、飼い猫となった「猫楠」の視点から描く。 奇才ぶり、ひとたび戦うことになれば徹底的な戦いぶり、心を病んだ息子への愛情など、どれをとっても規格外。 それでも支持者を得て、やっていける。 私のような凡人には理y解が及ばない。 興味の赴くままに研究した彼が魅了されていたのが、生と死が混在する命の有様で、それを最も感じさせるのが粘菌だった、ということはよく理解できた。 死んだ後の世界がそんな結構なところなら、人間はみんな死にたがるはずだ、というのも、虚を突かれた気がする。 ついでに、猫又踊りが楽しそう。 ちょっと参加してみたい気がする。
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気にはなっていたけど、学者の一側面しか知らなかった南方熊楠という人は、こんなに痛快な人だったとは。それを水木しげるが描いて、猫が解説してる、なんて凄い漫画。終始、変態(ほめ言葉)しか出てこなかった。とても深く面白く人間を感じる内容でした。
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奇才が奇才について書いた漫画。 いや、ちょっと違う。 怪人が怪人について書いた漫画、だ。 南方熊楠と水木しげるの出会いは必然だったのでは、 と思えるほど絶妙な組み合わせだ。 ただ、電車の中など公共の場で読むのはあまりオススメ しない(笑)。
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本書の主人公、粘菌の研究でイグノーベル賞を受賞していたらしい事実を知ったのは2年前。それも英語のリーディングの勉強をしてる最中でした。そこで南方熊楠という人物も知りました。 彼について関心がなくならず、Wikipediaなんかを眺めてるとどこか共感を抱いていました。 本書は、あま...
本書の主人公、粘菌の研究でイグノーベル賞を受賞していたらしい事実を知ったのは2年前。それも英語のリーディングの勉強をしてる最中でした。そこで南方熊楠という人物も知りました。 彼について関心がなくならず、Wikipediaなんかを眺めてるとどこか共感を抱いていました。 本書は、あまり業績については触れず(くわしくは巻末の参考文献にあたってネという感じ)、人間熊楠の生涯を描いています。 奇抜な、あまりに飛び抜けた幼少期も、テスト対策に励む同級生をバカにしてとうとう退学した東大時代も、単身渡米しアメリカ大学に入学するも周りの学生の意欲のなさにげんなりして退学したことも書かれていません。 ストーリーは帰国後からのスタートとなります。 ところで、水木しげる先生はその前にも神秘家列伝シリーズで熊楠を扱っていたのでさぞかしお気に入りだったのかもしれません。 なにせ熊楠は超人的な脳力を持つのに、助平で、「少年の心」を持っていて、癇癪持ちでキレるとゲロを吐きつけて、裏表もなく、定職にはつかず自分の楽しみのために没頭する、明らかに人間社会から逸脱した人物でしたから、ひときわ目を引いたのでしょう。 熊楠の生涯を追っていくと、逸脱したようでいて人間くささを感じさせます(ちょっとヘンですよね)。 1匹の猫が熊楠の人生を見つめる仕掛けのおかげで、奇怪な人物に見える熊楠が、読者に近づいてくれたように思えました。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
汚い。汚すぎる。ち●こ、ゲロが出まくりである。だから信頼できる。やべぇ奴すぎて、漫画にピッタリだ。猫可愛い。 読んでて身体がかゆくなりました。 はっきりいって、南方熊楠が何をやったかについてはよくわからない。それは他の本で読め。 でも熊楠の人間味がよくわかる。そういうところがいい。彼の人間性に迫るために、猫の視点にしたのだから。猫の動きが愛嬌があっていいなぁ。 「タクト」の話が、その部分だけが急激にまじめだったな。 自然の摂理のような意味でタクトという言葉を使っていたが、鶏の卵を例に挙げている。鶏の卵は外敵に割られないように固いが、中から雛が出てこれるだけの固さでもある。絶妙なバランスで硬さがきまっている。これがタクトだという。 人間もまた、外圧と内圧のはざまでバランスをとっている。世間体を演じる自己統制てきな自分と、内面世界の本能に忠実な自分。 建前と本音ってやっぱり大事なんね。天衣無縫の熊楠もやっぱり建前はわかっていたんだもなぁ。 あと、マラにフマキラーを突っ込むところも好き。
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南方熊楠の伝記漫画かな?と思って購入。読んでみると、熊楠の人生を元にしたファンタジーのような妖怪もののような民俗学チックな話のような、不思議な漫画だった。 幽霊の描き方や、緑深い山林の描き方が素晴らしい。細かな点描による印影のおかげで、一コマ一コマがまさに芸術だ。絵から、草木の...
南方熊楠の伝記漫画かな?と思って購入。読んでみると、熊楠の人生を元にしたファンタジーのような妖怪もののような民俗学チックな話のような、不思議な漫画だった。 幽霊の描き方や、緑深い山林の描き方が素晴らしい。細かな点描による印影のおかげで、一コマ一コマがまさに芸術だ。絵から、草木の生命が空気に満ちているのを感じる。点描はトーンを貼っているのではなくペンで描いたものらしいと聞いたことがある。すごい技術だなと改めて思った。 南方熊楠がどんな人物だったのか興味が湧いた。
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水木先生は、信者ぢゃないやお弟子から、南方熊楠と比較されてきたが、なのでまえ「ざっくり熊楠伝」はあったのだが、これは南方大先生が紀州へ引きこもってから、謎のぬこの目を通して彼は幸福だったかを説く。 息子さんが発狂したり隣家と抗争したり、いろいろあった様を書くが、幸福であるかはう...
水木先生は、信者ぢゃないやお弟子から、南方熊楠と比較されてきたが、なのでまえ「ざっくり熊楠伝」はあったのだが、これは南方大先生が紀州へ引きこもってから、謎のぬこの目を通して彼は幸福だったかを説く。 息子さんが発狂したり隣家と抗争したり、いろいろあった様を書くが、幸福であるかはうにゃうにゃ。 これ読んだ後、南方熊楠全集読んでたら、「フマキラー」が出てきた。あああ、フマキラーだ。
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南方熊楠は、慶応3年、和歌山に生まれた博物学者である。 博物学者とひと言で言うが、その興味は広く、民俗学や生物学、人類学、生態学とさまざまなものに渡った。記憶力は驚異的で、よそで100冊の本を読んできて、家に帰ってから書き起こすほどであったという。語学力も抜きん出ており、18ヶ国...
南方熊楠は、慶応3年、和歌山に生まれた博物学者である。 博物学者とひと言で言うが、その興味は広く、民俗学や生物学、人類学、生態学とさまざまなものに渡った。記憶力は驚異的で、よそで100冊の本を読んできて、家に帰ってから書き起こすほどであったという。語学力も抜きん出ており、18ヶ国語を操った。英学術誌、Natureへの論文掲載は51本あり、単著では最多という。 これだけであれば、天才・秀才というところだが、熊楠の尋常ならざるところは、その学識だけではなかった。癇癪持ちで著しい奇行はおよそ凡人のものではなかった。一例を挙げれば自由自在に嘔吐ができ、気に入らない相手には吐瀉物を吹きかけることができたという。猥談も大好きで始終一物をぶら下げて歩くが、一方で意中の相手を目の前にするともじもじしてしまう。ある種、無邪気と言ってよく、子供がそのまま大人になったようであった。浮世離れしているというか、出世や金銭には興味がなく、自分の感覚に素直な人物であったのだろう。 そんな「怪人」を、妖怪を描かせたら右に出る者がいない水木しげるが描くのだから、濃くならないはずがない。 水木は怪人・熊楠を描く狂言回しとして、1匹の猫を配す。熊楠は実際、猫好きであったことが知られており、どんなに困窮しても、手元には常に猫がいたという。食べ物は自分がしゃぶった残りかすを猫に与え、布団代わりに猫と寝たというから恐れ入ったものである。 物語は熊楠がアメリカ・イギリスへの外遊後に和歌山に戻ったところから始まる。熊楠は野良猫を飼い、これを「猫楠」と名付ける。実は猫語も操れる熊楠は、それまでの体験を語って聞かせたり、研究に伴ったりする。猫はこの後、熊楠の半生をじっくり見ていくことになる。 熊楠が熱心に取り組んだ粘菌の話もあれば、自身の結婚にまつわる逸話もある。遠野物語のように、妖しのものとのエピソードもある。大小さまざまな事件に熊楠が奮闘する様を、猫楠と仲間の猫たちがゆるりと見守る。猫であるだけに、必要以上に熱くなったり立ち入ったりしない。暑苦しくはないが、さりとて無関心でもない、「猫目線」の距離感が、熊楠ほどの大変人を扱うには、意外にちょうどよいのかもしれない。 全般にこの人は、常人とは違う透徹した目で周囲を見ていたように思われる。同じ世界にいても、他の人と見えるものがまったく違う。それはさながら、ユクスキュルの『生物から見た世界』で、種の違うもの同士がまったく違うものを見ているかのようだ。 晩年、熊楠は昭和天皇に粘菌に関して進講をする栄誉に浴する。それは大きな喜びであったが、一方で、その数年前には、かわいがってきた長男の発狂というショッキングな事件もあった。 粘菌だけでなく、植物や菌類の標本も数多く、熊野の自然を愛し、時代に先駆けて森を守る運動に奔走した。 孫文や柳田国男、ディキンズ(『方丈記』の英訳者)など、多彩な人物との交流もあった。 よく笑い、よく怒り、よく学んだ、密度の濃い一生。 熊楠という複雑な巨人を知るには恰好の1冊だろう。
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★2017年5月28日読了『猫楠 南方熊楠の生涯』水木しげる著 評価B+ 高校の友人M君がFBで勧めていたのを見て、私も早速アマゾンで取り寄せて読んでみた。 名前はよく聞くものの、一体どんな人なのだか知らないまま読んだ。中が漫画ということまで思い至らず買ったのだが、水木しげる...
★2017年5月28日読了『猫楠 南方熊楠の生涯』水木しげる著 評価B+ 高校の友人M君がFBで勧めていたのを見て、私も早速アマゾンで取り寄せて読んでみた。 名前はよく聞くものの、一体どんな人なのだか知らないまま読んだ。中が漫画ということまで思い至らず買ったのだが、水木しげる氏のほとばしるような南楠氏への思いが密に書き込まれていて、文章に負けない本に仕上がっていると思う。 それにしても、何と破天荒な巨人が日本にはいて、それを許し包み込む環境が当時の日本にはあったのか!感動的ではある。 ぜひ、関連する本も早いうちに読んでみようと思っている。
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