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対馬の海に沈む
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対馬の海に沈む

窪田新之助(著者)

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対馬の海に沈む

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 集英社
発売年月日 2024/12/05
JAN 9784087817614

対馬の海に沈む

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商品レビュー

4.6

52件のお客様レビュー

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2025/04/16

『対島の海に沈む』窪田新之助(著)  著者は、『日本発ロボットAI農業の凄い未来』や『誰が農業を殺すのか』(山口亮子共著)、『人口減少時代の農業と食』(山口亮子共著)を手掛けた。これらの書籍は私のFacebookでもレビューしている。そして、話題の本書を読了した。  読書中、...

『対島の海に沈む』窪田新之助(著)  著者は、『日本発ロボットAI農業の凄い未来』や『誰が農業を殺すのか』(山口亮子共著)、『人口減少時代の農業と食』(山口亮子共著)を手掛けた。これらの書籍は私のFacebookでもレビューしている。そして、話題の本書を読了した。  読書中、そして読み終えた後も、非常に重苦しい気分に襲われた。2019年2月、対島の海岸から1台のワゴン車が海に飛び込んだ。その運転手である西山義治は溺死し、享年44歳であった。彼はJA(農業協同組合)の職員あり、明らかに自死であった。  西山義治は共済事業を担当し、ライフアドバイザーという職についていた。彼は「スーパーライフアドバイザー」として、毎年全国1位に輝く優秀な男であり、「ライフアドバイザーの神様」とも称されていた。人口約3万人の対島において、2281世帯4047人の契約を獲得していた。農協の組合員数3718人を超える契約数であり、非常に目立つ存在であった。その上、美男子であり、人付き合いも良好で、常に笑顔を絶やさず、負けず嫌いであった彼の年収は3000万円を超えていた。こうした農協職員が存在するだけでも驚きである。著者は、多くの関係者に丹念にインタビューを行い、西山義治がなぜ海に飛び込まざるを得なかったのかを浮き彫りにし、その「犯人」を探し出す作業を進めていった。  農協には経済事業と金融事業が存在するが、対島の耕作面積は1.1%で、経済事業は成り立たない。農協職員は嘱託や臨時も含め、約80人が在籍している。西山義治は農協職員の給料を捻出してきた男でもあり、組合長からも「彼のおかげで給料が払えた」と評価されていた。  しかし、横領疑惑が発覚し、その金額は確定できているだけでも22億円に上った。横領疑惑がささやかれる中、西山義治は身辺整理を行い、自死した。これは、彼に残された唯一の選択肢であった。そして、この出来事を通じて、農協の体質が次第に明らかになっていく。  共済事業にはノルマがあり、そのノルマが達成できない場合、自ら加入するという「自爆」が横行していた。そのノルマ達成が厳しく求められ、スーパーライフアドバイザーとしてそれに応えてきた西山義治は、自己と家族のために、ひとの共済を140件、いえの共済を17件、自動車共済を6件契約していた。2018年度の年間掛け金は4027万円に達し、これは給与以上の金額であった。このような無謀な行為が可能であった理由は問題であり、また農協組織の杜撰さをも示している。さらに、著者はこの22億円の横領事件が西山義治の単独の犯行であったのかを追求していく。  西山義治は時計を愛し、フィギュアを集め、そのコレクションはプレハブに溢れていた。特に「ワンピース」に強い愛着を持ち、農協内では「西山軍団」を結成し、反対者は左遷するほどの人事権を握っていた。西山は、肉と魚にアレルギーがあり、手をつけるのがタコ料理だけで、野菜が嫌いだった。毎日仲間たちと宴会をするが、静かに飲むタイプだった。  こうした状況の中で、横領事件が組織的な犯行であることも明らかにされ、組合長や長崎県の共済責任者たちがなぜ知らんぷりをしているのかも暴かれていく。農協の無責任体制が徐々に浮き彫りになっていくのである。  さらに、この事件が明らかになる前に、告発者が存在し、農協の幹部に告発書を提出していたが、その内容は握りつぶされ、告発者は左遷されてしまった。その告発書は、まさに農協の姿勢を問い直すものであった。そして西山義治を追い詰めた「犯人」を明らかにしていく。著者がここまで詳細に描き切る手腕には深い感慨を覚える。  私自身も、身近にそのように追い詰められ、死を選択せざるを得なかった有能な男性を知っているため、この本の持つ重みをますます実感する。このような筆力を私には備えることができないと思い、著者の力量に圧倒された。この本は、農協職員や組合員にはぜひとも読んでほしい一冊である。農協の闇に、事実として迫っている。

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2025/04/15

開高健ノンフィクション賞受賞作品。20年以上に渡りJAのトップ営業マンが22億を着服していた事件を追った作品。舞台は長崎県対馬市、人口僅か3万人弱の農協。漁業が主な産業の島でどのような手段で不正が為されたのかを克明に記している。不正を暴こうとした上司を組織ぐるみで葬る等、つい最近...

開高健ノンフィクション賞受賞作品。20年以上に渡りJAのトップ営業マンが22億を着服していた事件を追った作品。舞台は長崎県対馬市、人口僅か3万人弱の農協。漁業が主な産業の島でどのような手段で不正が為されたのかを克明に記している。不正を暴こうとした上司を組織ぐるみで葬る等、つい最近も聞いた事があるような姑息なやり口とか、人間の負の部分が怖すぎる。 不正を働いてもまだ地元の英雄的に扱われる事に封建的な島でのインタビューの反応にご苦労が伺われた。

Posted by ブクログ

2025/04/14

開高健ノンフィクション賞受賞作。 寝る間も惜しんで一気に読んだ本は久しぶり。 JAのNo.1営業マンによる、22億円の横領事件。 世の中にこんな悪いやつがいるのか!一体どんな手口で?衝撃の真実が!?などと考えながら、ハラハラしながら読んだ。 それが、なんてことはない、普通...

開高健ノンフィクション賞受賞作。 寝る間も惜しんで一気に読んだ本は久しぶり。 JAのNo.1営業マンによる、22億円の横領事件。 世の中にこんな悪いやつがいるのか!一体どんな手口で?衝撃の真実が!?などと考えながら、ハラハラしながら読んだ。 それが、なんてことはない、普通の人間(達)の話。人間あるあるの話。人間だったら、日常生活していれば、こういうこと、こういう気持ちになること、当たり前にあるよね、という話。人を助けたり、助けてもらったり。 その当たり前の人間感情が、ここまで大きな事件に繋がった。 いつでもどこでも誰にでも起こり得そうな話。 大きな衝撃だった。

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