対馬の海に沈む の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
亡くなった当人以外に懺悔する人がいなかったことにやきもきしたが、同調圧力、恥の文化が生んだ本書のような出来事は、周囲の監視が働き秩序を乱した者が排除されやすい地方における村社会や大企業における社内政治でもありがちなのではと感じた。 自分が悪い意味での当事者にならないために、1つのコミュニティに依存せず、自分の信念を持ち過度に干渉しないことを心掛けたい。
Posted by
JA共済のトップ営業マンが、その裏で22億円に登る横領を重ね、社内調査の当日に車で海に突っ込み自死した。不正の手口と死の真相を巡る事件ノンフィクション。無謀な営業ノルマと杜撰過ぎる企業コンプライアンス。責任を個人に押し付けて、腐敗していく組織と人間の業。深い闇と人間の脆さが露呈し...
JA共済のトップ営業マンが、その裏で22億円に登る横領を重ね、社内調査の当日に車で海に突っ込み自死した。不正の手口と死の真相を巡る事件ノンフィクション。無謀な営業ノルマと杜撰過ぎる企業コンプライアンス。責任を個人に押し付けて、腐敗していく組織と人間の業。深い闇と人間の脆さが露呈していく。最大の「共犯者」にこの国の姿を見た。
Posted by
2019年2月25日、一台の「アトレーワゴン」がカーブを曲がらずに大きく逸れ、車止めにぶつかり、そのまま海に飛び込んだ。この事故で亡くなったのは対馬農業協同組合(JA対馬)の職員。 死因は「溺死」。出勤日なのに、彼は上下ともにジャージだった。基準値を超えるアルコールが検知され...
2019年2月25日、一台の「アトレーワゴン」がカーブを曲がらずに大きく逸れ、車止めにぶつかり、そのまま海に飛び込んだ。この事故で亡くなったのは対馬農業協同組合(JA対馬)の職員。 死因は「溺死」。出勤日なのに、彼は上下ともにジャージだった。基準値を超えるアルコールが検知された彼の死は、自殺と判断された。共済事業で高い実績をあげ、何度も表彰され、「神様」のように崇められた男は死後、不正に共済金を横領していたことが発覚する。 ということで本書は、JAの職員の死をひとりのジャーナリストが調査し、取材することで企業自体の問題、そして社会やコミュニティが持つ問題までもが浮き彫りになっていくノンフィクションになっています。善悪や論理、倫理感といったものとも向き合いながらも、それとは別に、そこに生きた人間、社会、心が立ち上がってくる。そんな作者のまなざしに強い信頼感を抱きたくなる一冊でした。
Posted by
JA職員の横領、そして発覚前に自殺。 死人に口なしの言葉そのままに何もかもをただ1人に背負わせる。 年末にとんでもない本がきた! 面白すぎる〜 彼が自殺したところから始まって、JAの基本情報、そして著者の取材が始まって、もう最初からアクセル全開で不正の数々を一から百まで読ませ...
JA職員の横領、そして発覚前に自殺。 死人に口なしの言葉そのままに何もかもをただ1人に背負わせる。 年末にとんでもない本がきた! 面白すぎる〜 彼が自殺したところから始まって、JAの基本情報、そして著者の取材が始まって、もう最初からアクセル全開で不正の数々を一から百まで読ませてくれます。楽しい! 田舎のヤンキーっぽく、ワンピースが大好き、味方には優しい、そんな彼の最後の日々が正反対で寂しい。 ただやっぱり不正を見過ごさない人たちはいた。 告発した小宮さんが彼のことを親身に考えてくれていたことが悲しい。 こんな大事件になりそうな不正なのにぜんぜん知らなかった。作中にある発表会で人気タレントを呼んだり、CMとかもバンバンしてるから 凄い圧力かかったのかな。
Posted by
p11 農協 総合農協と専門農協 総合農協ー経済事業、信用事業、共済事業 専門農協 信用事業は行わない 信用事業 農林中金 共済事業 JA共済連 経済事業 JA全農 農業に関する経済事業は赤字 その穴埋めをしているのが、共済事業と信用事業、あわせて金融事業 p139 全国の...
p11 農協 総合農協と専門農協 総合農協ー経済事業、信用事業、共済事業 専門農協 信用事業は行わない 信用事業 農林中金 共済事業 JA共済連 経済事業 JA全農 農業に関する経済事業は赤字 その穴埋めをしているのが、共済事業と信用事業、あわせて金融事業 p139 全国のJA職員を苦しめてきた共済商品の営業に関する過大なノルマの弊害、とくに自爆営業が横行してきたことである p248 日本農業新聞 家の光 地上 ちゃぐりん p223 それなのに、西山が不正をしえいると不正によって大きな損害が生まれているという2つの事案を、JA共済長崎が認識したうえでその被害を黙認してきたのは、彼らがノルマを課せられているからだと考えるのが妥当である。これはJA対馬だけでなくJA共済連の他県の関係者にも取材しての結論である p224 JAグループがあつかう、ひといえくるまという三種類の共済のそれぞれで高い実績を上げなければならない p229 一般に日本の組織は、閉鎖的で同僚圧力が強く、年長者や有力者が頂点に立つピラミッド型をなす。そこに所属する個人は、考え方から行動に至るまで組織の影響を受ける。また、個人同士組織内での付き合いを深め、結果的に公私の別が希薄になりやすい こうした日本的なムラ社会の構造は、まさにJAでこそ強固に築かれているように思える。というのもJAでは縁故採用が基本である。職員や組合員の子弟をはじめ、彼らの学校の後輩や近所の顔なじみといった人たちが就職してくる。とりわけ小世帯のJAであればあるほど、採用する地域が限定され、それまでに付き合いがあった人ばかりが集まりやすい。全国のjAで、ノルマを達成するために、私有財産を投げ出したりすることが日常的かつ一般的に起きていることは、こうした人間関係の濃密さが一因となっているのではないか p262 農協法では、組合員以外がその事業を享受できる割合については一定の規制を設けいている。この員外利用規制は、各事業の総利用量の20%までである p274 これだけ正当な告発があっても、その後10年近くにわたって不正が発覚しなかった理由は、JA対馬の役職員や共済連などがその隠蔽に加担してきたことだけではなかった。小宮が被害者がいないと記している通り、西山と島民たちとの共犯関係があったからこそ、問題にすらされなかったのだ。 p294 文化人類学者ルース・ベネディクトが著書「菊と刀 日本文化の型」で喝破したように、欧米が罪の文化ナノに対して、日本は恥の文化である 個人主義が発達した欧米では、自らの行動や感情を自らの基準に照らし合わせて評価する。かたや日本では、親族や地縁を中心とする人間関係や場の雰囲気こそが大事であり、身の周りの人達からどう見られているかをひどく気にする。逆に言えば、同じ集団の仲間から悪く見られなければ、どこかの中古車販売店のように保険金を水増し請求しようが街路樹に除草剤をまこうが、問題なしということになる 付け加えれば、日本のように共同体の秩序が支配する社会で成功するには、それに同調しながら生きていくことが欠かせない。仲間同士は監視し、もし秩序を乱すものがいれば排除する。共同体のはんえいにつながる機会が訪れれば、なんとかしてそれをモノにしようとする。 西山が不正絡みで取ってきた数々の行動は、どれも日本の社会でありがちなものである。 こうして少し引いた場所から眺めてみると、JA対馬を舞台にした不祥事件は、この国では決して特殊でないといえる。西山と彼に関係する人たちがはまった陥穽は、きっとわたしたちの社会の至る所で待ち構えているに違いない p312 彼女は正職員にならないかという打診をたいたび受けていたものの、これを固辞している 理由は、それこそ正職員になるとノルマが課されるからだ。臨時職員にはそれがない。ノルマに追われて、やがて不正に手を染めざるを得なくなることをよしとしなかった。
Posted by
- 1