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遺伝と平等 人生の成り行きは変えられる
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遺伝と平等 人生の成り行きは変えられる

キャスリン・ペイジ・ハーデン(著者), 青木薫(訳者)

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遺伝と平等 人生の成り行きは変えられる

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 新潮社
発売年月日 2023/10/18
JAN 9784105073510

遺伝と平等

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商品レビュー

3.4

10件のお客様レビュー

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2024/06/10

 著者はテキサス大学の心理学教授。本作が処女作ということになるようだ。訳者は「フェルマーの定理」の訳で有名な青木薫氏、最近ではブライアン・グリーンの大著「時間の終わりまで」などがあり、科学啓蒙書の翻訳には定評がある。本書もそれらの例に漏れず訳がこなれていて読みやすい。    著者...

 著者はテキサス大学の心理学教授。本作が処女作ということになるようだ。訳者は「フェルマーの定理」の訳で有名な青木薫氏、最近ではブライアン・グリーンの大著「時間の終わりまで」などがあり、科学啓蒙書の翻訳には定評がある。本書もそれらの例に漏れず訳がこなれていて読みやすい。    著者の主張は、本書で幾度となく言及されているように、政治哲学者ジョン・ロールズの思想の強い影響下にあるものと言える。ロールズによれば、「遺伝子セット(自然的偶発性)」と「社会的環境(社会的偶発性)」は、人間にとり内在的であるか構築的であるかの違いはあれど、どちらも人間の表現型(実際に発現し測定可能な特質)に作用し、人生の広範な局面に影響を与えるのであり、道徳的観点からは甘受すべからざる不平等の原因であることには変わりない。  従って、前者は絶対的で後者は相対的だとする〈優生学〉の立場は、遺伝の存在を理由にそこから生ずる社会的不平等を放置する無責任なニヒリストだということになる。また、本来価値中立的な遺伝的情報の差異を即座に社会構築的な(主に西洋白人種を中心とする)価値のヒエラルキーに還元してしまう伝統的な価値基準についても、遺伝子が社会的「価値」に与える影響を吟味することなく盲目的に生得的なものに価値を割り振る、硬直的な価値判断基準であると批判する。  また、そもそも不平等の原因を炙り出すような遺伝子セットの研究自体を不道徳であるとして忌避しようとする〈ゲノムブラインド〉の立場も、敗北主義であるのみならず不平等と「暗黙の共謀」関係にあるものとして強い批判の対象とする。個体差に遺伝の影響が存在することを認めることと、遺伝の結果生じる不平等を放置することは全く異なるというわけだ。  上記2つのアプローチを批判した上で、著者は〈アンチ優生学〉の立場に立って公平性に関する政策を遂行すべきだと説く。  双子研究の成果によれば、現在各国で用いられているゲノムブラインドなアプローチは、貧困世帯における認知能力の遺伝率(=遺伝子の表現型に対する影響度合)を低める、いわば優秀な遺伝子の発現率を阻害するように作用しているという。著者はそのように「高い方を削って全体を均す」のではなく、社会にとって遺伝的に最も不利な因子を持つ人々を遺伝子検査によって特定した上で、それらの人々が幸福な生を生きるために必要なリソースを割り振ろう、と主張する。このように本書には、「構築的であるにすぎない現代社会の価値観に照らして、生得的に有利な因子を持って生まれてきた幸運な個人は、その恩恵を社会に還元すべきである」という、ノブレス・オブリージュ的な発想が根底にある。  先述のロールズの提唱した有名な概念に「無知のヴェール」があるが、遺伝子検査にはこれと同じような機能があるのだ、というのが本書の梗概なのだと思う。無知のヴェールを被れば個々の前提条件が取り除かれ、最も不利な立場に立って公平とはなにかを考えるようになる。同様に、遺伝子検査によってどのような遺伝子型が最も不利な表現型につながるのかがわかれば、その遺伝子と表現型の間の長い因果の鎖のどこにどのように介入すべきかを判断する際の不確定要素が取り除かれる事になるのだ。「遺伝子研究の足を止めるな、なぜならそれは単に功利的ではない公共の福祉、真に道徳的な公平性につながるのだから」という力強いメッセージを感じた。

Posted by ブクログ

2024/05/06

面白かった。 各種研究の結果は肌感覚に照らしても納得感が強かった。現代の知識社会で高い評価を受けがちな能力・特性に、遺伝はまあまあ影響している。 個人的には「遺伝学を優生学と混同しないで!」と言うためにどれだけ紙幅を割くのか……と感じてしまった。 内容の割に文が重たい。それだけ...

面白かった。 各種研究の結果は肌感覚に照らしても納得感が強かった。現代の知識社会で高い評価を受けがちな能力・特性に、遺伝はまあまあ影響している。 個人的には「遺伝学を優生学と混同しないで!」と言うためにどれだけ紙幅を割くのか……と感じてしまった。 内容の割に文が重たい。それだけアメリカの状況が複雑だということなのかもしれない。

Posted by ブクログ

2024/03/24
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ヒトゲノムが解読された時に「全ての人間は99.99%同一だ」と言ったクリントン大統領の発言は間違っているし、間違いの上に社会基盤を構築しようとするのも間違っている。遺伝による違いは歴然と存在しており、学業の達成度や社会的な成功に関係している。ただし、それは優劣という比較の対象になるようなものではなく、運良くたまたま受け継がれたにすぎず、次の世代に受け継がれていくという保証もない。 必要なことは機会の均等(全ての人に同じ教育機会を与える)ではなく、個別化、最適化された教育である。ろうやアスペルガーが障害でなく特性だ、というのはやや言い過ぎのように思うが、公平と平等の違いなと、遺伝的な差異と社会制度について考えさせられるとことも多い。 著者には二人の子供がおり、一人は普通でもう一人は発話障害があるという。このことからも行動遺伝学には馴染があったらしい。全般に翻訳が素晴らしく、出版社のサイトにも詳細な脚注が載せられていて出典にも当たりやすい ・過去の優生学への反省から、学業に関する研究は遺伝を一切無視したゲノムブラインドの立場をとる研究者も多いが、ここに遺伝が関与していることは明白で、無視すべきではない。 ・GWASの結果、個人のポリジェニックスコアは計算されるし、それが学習の達成度などを説明はできる。ただし、GWASは個人の環境などは一切考慮していない ・遺伝子があるから結果が怒る、など因果というものについて、ヒュームは 1)AがあればBが起きる 2)AがなければBはない の二点が必要と考えたが、1はともかく、2は通常の科学的な検証には乗りにくい。 ・遺伝学は、比較的よく似た環境に生まれ育った人たちが、異なる人生を送ることになるのはなぜかを理解するためには役立つ方法だ。しかし、明らかに異なる出発点にたった人たちが、同じような人生を送らない理由を理解するためには役に立たない。

Posted by ブクログ

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