商品詳細
| 内容紹介 | |
|---|---|
| 販売会社/発売会社 | 光文社 |
| 発売年月日 | 2023/09/21 |
| JAN | 9784334100599 |
- 書籍
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万物の黎明
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万物の黎明
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商品レビュー
4.5
17件のお客様レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
「オメラスから歩み去る人々」を大学生のときに読んだ。「オメラス」が本の中で紹介されるのを読んだのはこれで2回目だ。 古代エジプトのピラミッドにおける大量殺戮が意味するものを生態学的思考によって導くスリリングな展開そのものがこの本の圧倒的に新鮮な読書体験を象徴する。 古代エジプトの国家形成が、キリストの語る「サマリア人の例え」のごとく最大多数の最大幸福を理想とする権力構造をカリスマたる王が実現したのだとする説。民衆のエートスとしての「平等」を実現したからこその王への貢物としての大量殺戮、という道筋。 まさに「オメラス」そのものだ。 そしてこの思考はそのまま宮沢賢治の初期版「銀河鉄道の夜」にも繋がる。 本書では「ケアと支配の結合」(たがいに関係し合う方法を自由に再創造すれこと)と呼び、なぜそれが近代化の果てに喪失したのかを掘り起こす。 グレゴリーベイトソンをマスターとする「精神の生態学」思考の最前線に興奮する。リチャード・ローティ、マイケル・サンデル、ワイド・ガイトン、そして今作の作者デイヴィッド・グローバー。文化人類学のスペルベルやデ・カストロの「存在論的転回」の流れを受けてこれほど豊かな読書体験ができる幸運に恵まれて感謝。そして先日観た「ロシャオヘイ戦記2」にもデイヴィッド・グローバーの影響を感じ取ることができた。ひそかに人類は、歴史の認知革命としてそのものの見え方が変わろうとしているのかもしれない。
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人類の歴史に安易なストーリーを付与して、狩猟採集から農耕へ、そこで「所有」という概念が発生したから支配構造が登場してきたという、この世界観を覆したのが本書。そもそも、直線的に所有を生み出す農耕へ突き進んできた訳ではない。また、狩猟時代に既に支配構造はあった。 必ずしも支配構造が...
人類の歴史に安易なストーリーを付与して、狩猟採集から農耕へ、そこで「所有」という概念が発生したから支配構造が登場してきたという、この世界観を覆したのが本書。そもそも、直線的に所有を生み出す農耕へ突き進んできた訳ではない。また、狩猟時代に既に支配構造はあった。 必ずしも支配構造があった訳でもない。必ずしも闘争があった訳でもない。黎明から既に人類は多様なスタイルにあり、一概には言えないものを、単純化して認知してしまっている。 食べなければいけない。食料調達の方法は、環境や技術レベルにより、狩猟採集も農耕生産も使い分けていた。私は飢えのレベルにおいて、本来そこに人食もあったと考えたい。また、飢えのレベルにおいては、究極的には人食に辿り着くが、その手前に掠奪があり、奴隷化がある。飢えのレベルは、集団の人口にもよる。 この点で、ホッブズ的世界観もルソー的世界観も、環境依存的な結果としかいえないというのが、グレーバーだ。 ー ルソーの論文はまちがいなく奇妙なものである。それはまた、世評に広がっている議論ともどこかずれている。ルソーは、実際には、人間社会が牧歌的な無垢の状態からはじまると主張しているわけではない。かなり混乱してはいるが、かれの主張は、最初の人間は本質的に善良であったが、にもかかわらず暴力をおそれて組織的にたがいを避けていた、というものだ。とすると、自然状態の人間は孤立した存在となる。こうしてルソーは、個人間の継続的な結合の形態である「社会」そのものが、必然的に人間の自由を束縛すると主張することができたのである。言語でさえも妥協のしるしなのだ。 ー 家族が増えると、生活の手段が失われはじめ、遊牧の生活は途絶え、所有するようになり、人間は居住地を選び、農業によってかれらは混じり合った。言語は普遍的なものとなり、一緒に生活することで、たがいの力の違いを測るようになり、弱いものは強いものと区別されるようになった。これにより、ひとりの人間が複数の家族を束ねて統治し、敵の侵入からじぶんたちの身や土地を守るという相互防衛の発想が生まれたのはまちがいない。 平等の概念論も面白い。 ー つまり「平等」とは初期状態を指す用語であって、文明の虚飾をすべて除去したときに残ると考えられた人類の原形質的な集団性を意味しているのである。「平等主義的」人間とは、王、裁判官、監督者、あるいは世襲祭司をもたない人びとであり、通常は都市も文字もなく、ときに農耕さえも不在である。 つまり、プリミティブな状態こそ平等であり、組織や集団を形成する時点で、それは消滅する。不可侵は所有により発生する。神は所有だ。侵されざる神聖な存在は、個人の財産も神も等しい。ドメスティケートの話も興味深い。読後の言葉が尽きぬほどの興奮があった。グレーバーはもういないが、この本の中に確かに存在する。
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人類に対する新たな歴史観の提示。 無邪気なルソーが提示した人類でもなく、互いに闘争するホッブスが提示した人類でもない別な定義を行う。 様々な研究成果をもとに提示しており、自分としては納得感があった。 翻訳者の後書きで50ページ近くあり。それが理解の助けになる。
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