商品詳細
| 内容紹介 | |
|---|---|
| 販売会社/発売会社 | 筑摩書房 |
| 発売年月日 | 2023/06/08 |
| JAN | 9784480684523 |
- 書籍
- 新書
客観性の落とし穴
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客観性の落とし穴
¥990
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商品レビュー
3.5
127件のお客様レビュー
『客観性の落とし穴』は、科学や社会が「客観性」や「数値」を重視することで何を得て、何を失ってきたのかを問い直す本だった。最初に印象的だったのは、昔の自然科学のデッサンが目の前の個体を忠実に模写するのではなく、「自然の本性」を示す理想型を描いていたことだ。現代では数値や数式による客...
『客観性の落とし穴』は、科学や社会が「客観性」や「数値」を重視することで何を得て、何を失ってきたのかを問い直す本だった。最初に印象的だったのは、昔の自然科学のデッサンが目の前の個体を忠実に模写するのではなく、「自然の本性」を示す理想型を描いていたことだ。現代では数値や数式による客観化が重視されているが、かつては本質を抽出することこそ客観性だと考えられていたのが興味深い。 本書では、客観性が進み、数値や統計によって人間や社会が管理される構造が描かれる。デュルケーム社会学が社会を「客観的事実」として捉え、現代の指標社会につながっているという話は、現在の幸福度ランキングやジェンダーギャップ指数などにも通じていると感じた。一方で、仕事や教育、医療などで数値化できない価値が切り捨てられていることも実感する。成果だけでは測れない働きや、人それぞれの人生経験は確実に存在する。 後半では、数値化や客観性の枠組みからこぼれ落ちる人々の経験をどう扱うかが論じられる。現象学的な方法によって、統計ではなく個人の語りや経験そのものを描写する重要性が語られていた。インタビューの中で「普通」という言葉が人によって異なる意味を持っていたり、「たまに」「つねに」といった矛盾する言葉が混ざっていたりする点は、人間の経験の複雑さを感じさせた。 また、障害や外国籍の人など、社会の隙間に追いやられる人々への視線も印象的だった。ただ、自分としては、出生前診断や福祉の問題については、単純な優生思想というより、支える体制の不足の中での苦渋の判断という面も大きいのではないかと感じた。理念として「一人ひとりの声を尊重する社会」は理解できるが、実際にどう制度や社会を変えていくのかは最後までやや抽象的だった。 あとがきで語られる「競争」と「勤勉さ」に従順な社会という指摘も印象深い。SNSや自己啓発、成功者の発信によって、比較と努力の圧力は強まり、さらに生成AIの登場で競争相手は無限化しているように感じる。数字や客観性だけが真実ではないが、完全に捨てるのも不安がある。だからこそ、数値による把握と、個別の経験や感覚を両輪として考える必要があるのだろう。ただ、その両輪をどう社会の中で実現するのかは、とても難しい問題だと感じた。
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経験の生々しさは偶然性やリズムといったダイナミズムに表れる。客観性と数値化への過剰な信頼が、その経験の生々しさを消してしまい、序列化を助長させる。顔の見えないデータや制度からではなく、一人ひとりの経験と語りから思考を出発させることで、社会的な困難の中にいる人、病や差別に苦しむ人の...
経験の生々しさは偶然性やリズムといったダイナミズムに表れる。客観性と数値化への過剰な信頼が、その経験の生々しさを消してしまい、序列化を助長させる。顔の見えないデータや制度からではなく、一人ひとりの経験と語りから思考を出発させることで、社会的な困難の中にいる人、病や差別に苦しむ人の声を尊重する社会を志向することにつながる。 一人ひとりの声を聴き取りときほぐしていく「現象学」
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数値・調査結果を過剰に信奉してしまう姿勢は良くない。 それはわかるのだが、それ以上の議論については疑問符。 マイノリティの声に耳を傾ける、当事者の声を聴く、当然に大切だが、その主張はあくまでも「観測者」の視点では? マイノリティの論理に苦しんでいる当人たちが、“客観性”から逃げ...
数値・調査結果を過剰に信奉してしまう姿勢は良くない。 それはわかるのだが、それ以上の議論については疑問符。 マイノリティの声に耳を傾ける、当事者の声を聴く、当然に大切だが、その主張はあくまでも「観測者」の視点では? マイノリティの論理に苦しんでいる当人たちが、“客観性”から逃げるための術を一歩踏み込んで理解したい。
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