商品詳細
| 内容紹介 | |
|---|---|
| 販売会社/発売会社 | 河出書房新社 |
| 発売年月日 | 2023/05/09 |
| JAN | 9784309419619 |
- 書籍
- 文庫
アロハで田植え、はじめました
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アロハで田植え、はじめました
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商品レビュー
4
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著者の近藤康太郎氏は、朝日新聞にて記者として勤めつつ音楽や文化関連の文筆活動に(も)注力している(た)方。 本作は、会社に籍を置きつつも、彼自身が「オルタナ農家」となり謂わば「人体実験」をする過程を著したもの。 ・・・ いやあ、好きです。こういう人。 権力の中心におらず(いられず?)、「遊軍」記者として過ごすことが長く、結果いわゆる「扱いづらい」オジサン記者となった方。ただ、書くこと・表現することは好きで、特に音楽が好きだそう。趣味が昂じて著作も出してしまう。 しかし現状は厳しい。 出版業界の斜陽化と平仄を合わせるようにライターの単価も下落し、所属元の朝日新聞も問題が頻発し、いつか潰れるやもしれない、と本人は考えている。 でも書くことは彼の生き方であり、生き甲斐。故に彼は書くことはやめない。てこでもやめない。 そこで考える。 お金云々ではなく書くことで生きていきたい。 さすれば、最低限、男一匹を養えるだけの食い扶持を自力で作れればくいっぱぐれることはない。 あとの肴と酒代はライター稼業で稼いでやろう。 でもとにかく、メインはあくまで書くことだ。だから、農作業は朝の仕事前の1時間のみ。 こうして彼は年下の上司に異動の願いを出す。 そして晴れて彼の長崎県諫早市への転勤は決まった。 ・・・ まあ結論から言えば、彼の試みは成功するわけです。 最適な師匠が見つかり、つかず離れずの指導を受け、そして秋には一年分以上のお米を取ることが出来たという結末。 その過程では、田舎での人付き合いの濃さ、共同体での贈与・交換経済への可能性、自然の懐の深さなどに気付いていく様子がユーモラスに描かれます。 更に、決め台詞的に、いちいち著名な作家やミュージシャンの歌詞が引用され、それがまた的を射ていて面白い。 ・・・ さて、この生き方、つまり、会社でほどほどの仕事をしながらも、「食」においての最低限の食い扶持を確保するという方法、筆者はこれを激押ししつつも、そう長くはもつまい、とします。 それはお金を使わない、工夫しながら自然の産物を頂く・利用するというスタイルが、資本主義の方法に反するからです。 貨幣経済から外れて、贈与と交換、自然からの頂き物で自活すると、市場経済が回らない。つまり右肩上がりの成長を企業が描けないことになります。 増してや今後人口減により地方公共団体が無くなる・合併する・集約されることが想定されるさなかです。 故に、このような贈与と交換を基礎に置く地方暮らしは、(仮に)流行れば流行るほど、じき当局の規制が入るだろうとします。 私も想像しますが、入会地などに入場税をかける(誰が徴取するのか、というのはありますが)。田舎の奥地に散在する人々を田舎の中心地へ強制移住させる(ないしは地方住まいにおいては水道やガスなどのインフラ保証をしない)など。 こうすることによって、貨幣経済に地方の人を再び巻き込むようにするのでしょうね。 でも将来はいつも未定。やれるうちにやろう、あとはその時考えるしかない、というのが筆者のスタンスでした。 ・・・ ということで、近藤氏の著作、初めて読みました。半農とすらいえない、チョビ農のススメでありました。 そして、彼の田舎住まいは、今、更に進化している模様で著作も増えている模様。そちらもまた読みたいと思いました。 都市住まい、会社勤めでストレスを抱えている方は一読の価値があります。個人的には中央から物理的に離れることが良いのでは、と考えていますが。将来を考えるにあたり、参考になる一冊でした。
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おもしろかった。職に対して、これだけは譲れないという信念を持った人には響く内容だと思う。私も含め、そこまで情熱を注げる何かがない人間は、今住んでる場所でパートやアルバイトに勤しむ方を選ぶだろうなぁとも。農家は、やはりプロフェッショナルな仕事であるから、熱意がないとできないし、アロ...
おもしろかった。職に対して、これだけは譲れないという信念を持った人には響く内容だと思う。私も含め、そこまで情熱を注げる何かがない人間は、今住んでる場所でパートやアルバイトに勤しむ方を選ぶだろうなぁとも。農家は、やはりプロフェッショナルな仕事であるから、熱意がないとできないし、アロハであれなんであれ、やはり一本筋が通っているから、師匠たちにも受け入れられたのではないかと感じた。
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新聞社で少し浮いている記者が、長崎県諫早市に赴任し、1日に1時間だけ自分が食べる分の米を作り、執筆活動は続けるという稲作実験。背景にあるのは、1年に自分が食べる分の米さえ作れたら、会社に頼られず生きられるという考え。 著者は『三行で撃つ』、『百冊で耕す』などの著書を持つ朝日新聞...
新聞社で少し浮いている記者が、長崎県諫早市に赴任し、1日に1時間だけ自分が食べる分の米を作り、執筆活動は続けるという稲作実験。背景にあるのは、1年に自分が食べる分の米さえ作れたら、会社に頼られず生きられるという考え。 著者は『三行で撃つ』、『百冊で耕す』などの著書を持つ朝日新聞記者の近藤康太郎さん。近藤さんは東京の渋谷生まれ。畑仕事は全くの素人、しかも虫類、爬虫類が嫌いで、コミュニケーションが苦手。好きなことは書くこと。本書は、そんな近藤さんが、会社へ地方勤務の希望を出し、諫早市で師匠を見つけ、アロハシャツを着て畑仕事に悪戦苦闘しながら、最初の収穫を迎える1年間の顛末記です。 本書は、とても面白いノンフィクションですが、近藤さんは生き方、思想についても触れていて、それも読みどころになっています。 ○スタイルがすべて 「スタイルなんてどうでもいいと、わたしは考えない。むしろ、スタイルこそすべてだ。 (かっこいい)というのはふつうに考えているよりずっと重要なファクターで、あだやおろそかにしてはならない、ということなのだ。わたしのアロハが客観的にみてかっこいいかどうか、それはここでは問題ではない。自分にとってかっこよければ、それでいいのだ。(中略) (美)が、決定的に重要なのだ。美、つまり、自分にとってかっこよいこと、楽しいことでなければ、いくら真であったり善であったりしても続かない。楽しくないと、生きていけない。かっこよくなければ、生きている意味がない」 ○文章を書くことについての思想 「自分は、なぜ東京くんだりから、ここまで飛んできたのか。 自分の目的は、自然に溶け込んで、自然と一体化して、もっと言やあ、自然を物神化して生きることではない。『エコロジズムは、人類解放の思想である』とは、思っていない。 もう少し、俗なこと。ライターで食っていく、文章を書いて、おあしを頂戴する。その道に、おのれの短い人生を賭けたいんだ。プロとして書き始めて30年、最近、ようやく分かってきたことがある。文章を書く前は、自分が何を考えているのかも、分からない。文章に組み立て、ようやく、『ああ、おれはこんなことを考えていたのか』と、驚く。考えがあって、文章がまとまるんじゃない。逆。文章という、自分自身の大きな尾っぽに振り回され、自分の考えが分かる」 ところで著者は『三行で撃つ』の中で、冒頭(つかみ)の三行の重要性を説いています。 「三行以内で撃ってくれ。驚かせ、のけぞらせてくれ」 では、本書の三行はどうでしょうか? 「トマ・ピケティの「21世紀の資本』が、ベストセラーになった。 ほとんどの期間で、「資本収益率(r)」>「経済成長率(g)」が成り立っていることをデータで実証した労作。これはつまり、『放っておくと格差は拡大する』ということを言っている。税制などで是正しない限り、富裕層と中間層・貧困層との差はどんどん広がっていく」 けっこう撃たれるつかみと思います。ここから『新自由主義』の正体は「飢えの恐怖による支配」であることが見えてきて、「自分が食べる分米だけ作る」ことの重要性がわかってきました。 それよりも、本書は娯楽性の高いノンフィクション。楽しんで読めました
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