金環日蝕

阿部暁子(著者)

• 販売会社／発売会社: 東京創元社
• 発売年月日: 2022/10/31
• JAN: 9784488028787

商品レビュー

2024/09/25

『カフネ』がとても良かったので、他の作品も読んでみたくて手に取りました。

誘拐、レイプ、詐欺といった犯罪、更に経済的に困窮していてる家庭の問題が出て来るので内容的には重いです。それでもテンポよくお話が進んで行くので一気に読んでしまいました。

女子大生の春風と高校生の錬は老婦人が
ひったくりに遭う現場に遭遇したが犯人に逃げられてしまう。現場に残されたストラップから犯人探しを始める2人は正義感に溢れてピュアな若者に見える。しかし、読み進めるうちに見えてくる陰の部分。過去に犯罪に巻き込まれた春風、そして犯罪加害者の家族として辛い目に遭った錬。２人とも犯罪を憎み過去に囚われているのは同じ。

そして、特殊詐欺に手を染め、深みにはまっていく鍵下と理緒。ここは読んでいてとても辛かったです。2人の境遇にため息が出ると共に何とかならなかったのかとハラハラしてしまいました。

高額バイトの文字に惹かれて、安易に特殊詐欺の片棒を担いでしまう若者が多い現実。でもその先には自分の開かれた未来をなくしてしまうほどの危うさが待っている事を忘れないで欲しい。そしてそんな若者たちに何か手を差し伸べる手立てはないのだろうかと考えてしまった。

2024/09/04

貧困問題や特殊詐欺について絡めて描かれている重めのストーリー。
サスペンスのような展開に先が気になってぐいぐい引き込まれましたが、子どもの境遇を思うと読んでいてしんどかった。

もし突然犯罪の加害者や被害者になってしまったら…。誰にも、どっちにも｢絶対｣はない。
加害者になるも、被害者になるも、決して他人事ではないと思わせられる。

若者が犯罪に手を染めてしまう過程や、深みにハマっていく様子に、すぐそこにある危うさを感じて本当に怖いなと感じた。
出口の見えないトンネルから抜け出せない状況が、とにかく苦しい。

大切な人を守るために、１人孤独に頑張ってきた子どもたちを｢よく頑張ったね｣｢大丈夫だよ｣って、ハグしてあげたい。
涙腺崩壊…。
謎が解けていくのにスッキリどころか、読んでいて苦しかった。
読み終えて深い疲労感を感じました。

『この世界から消えてしまいたいと思っていた時、手をさしのべてくれたのは彼だ。』

『世の中の人がみんなあなたのようにきちんとした教育を受けて、知識があるわけじゃないのよ。そんな力は持っていない、どうやって闘えばいいのかすら知らない、そういう人だっているの。』

2024/08/31

正義感あふれる若い２人が果敢に犯人探しに取り組んでいくと思われたが、その裏に深い事情があったのに驚きでした。
危険なバイトとわかりながらも入り込んでいく女子高生に読むのが辛くなりました・・・が
聡明な錬と探求心旺盛な春風のコンビ、２人を取り巻く人々に拍手です！！