金環日蝕 の商品レビュー

阿部暁子(著者)

2024/09/25

『カフネ』がとても良かったので、他の作品も読んでみたくて手に取りました。

誘拐、レイプ、詐欺といった犯罪、更に経済的に困窮していてる家庭の問題が出て来るので内容的には重いです。それでもテンポよくお話が進んで行くので一気に読んでしまいました。

女子大生の春風と高校生の錬は老婦人が
ひったくりに遭う現場に遭遇したが犯人に逃げられてしまう。現場に残されたストラップから犯人探しを始める2人は正義感に溢れてピュアな若者に見える。しかし、読み進めるうちに見えてくる陰の部分。過去に犯罪に巻き込まれた春風、そして犯罪加害者の家族として辛い目に遭った錬。２人とも犯罪を憎み過去に囚われているのは同じ。

そして、特殊詐欺に手を染め、深みにはまっていく鍵下と理緒。ここは読んでいてとても辛かったです。2人の境遇にため息が出ると共に何とかならなかったのかとハラハラしてしまいました。

高額バイトの文字に惹かれて、安易に特殊詐欺の片棒を担いでしまう若者が多い現実。でもその先には自分の開かれた未来をなくしてしまうほどの危うさが待っている事を忘れないで欲しい。そしてそんな若者たちに何か手を差し伸べる手立てはないのだろうかと考えてしまった。

2024/09/04

貧困問題や特殊詐欺について絡めて描かれている重めのストーリー。
サスペンスのような展開に先が気になってぐいぐい引き込まれましたが、子どもの境遇を思うと読んでいてしんどかった。

もし突然犯罪の加害者や被害者になってしまったら…。誰にも、どっちにも｢絶対｣はない。
加害者になるも、被害者になるも、決して他人事ではないと思わせられる。

若者が犯罪に手を染めてしまう過程や、深みにハマっていく様子に、すぐそこにある危うさを感じて本当に怖いなと感じた。
出口の見えないトンネルから抜け出せない状況が、とにかく苦しい。

大切な人を守るために、１人孤独に頑張ってきた子どもたちを｢よく頑張ったね｣｢大丈夫だよ｣って、ハグしてあげたい。
涙腺崩壊…。
謎が解けていくのにスッキリどころか、読んでいて苦しかった。
読み終えて深い疲労感を感じました。

『この世界から消えてしまいたいと思っていた時、手をさしのべてくれたのは彼だ。』

『世の中の人がみんなあなたのようにきちんとした教育を受けて、知識があるわけじゃないのよ。そんな力は持っていない、どうやって闘えばいいのかすら知らない、そういう人だっているの。』

2024/08/31

正義感あふれる若い２人が果敢に犯人探しに取り組んでいくと思われたが、その裏に深い事情があったのに驚きでした。
危険なバイトとわかりながらも入り込んでいく女子高生に読むのが辛くなりました・・・が
聡明な錬と探求心旺盛な春風のコンビ、２人を取り巻く人々に拍手です！！

2024/08/16

だいぶよかった｡初めて読んだ作家｡
人の心の中などわからない､ということ､多面な人の姿がふんだんに描かれていると思った｡

春風も錬も現実にはいないだろう聡明さで､物語のザ・ヒーロー的主人公（強い）な感じだったが､そのほかの人々が現実にいそうだったので置いていかれる感なく読めた｡
スピード感あり､謎あり、キャンパスの明るい雰囲気あり、陰惨な事件あり、嫌味にならない程度のオタク感あり､盛りだくさんだけど､聡明な主人公たちが物語を引っ張って連れてってくれた｡

眠る前に読み始めたら続きが気になって2日間夜ふかしをしてしまい翌朝目が充血してつらい｡
でも､こういう物語を読みたかったんだ｡

2024/08/07

切れ者の高校生と、腕に覚えのある女子大生が、ひったくり事件に挑んでいく物語、しかも札幌だ・・・などと思って軽い気持ちで読み始めたら、とんでもない展開が待っていた。
普段ミステリをあまり読まないので、トリックに気づくのは遅い方だと思うが、それでもフジサキが、なるほどと思った時には、もう物語は引き返せないくらい深いところまで進んでいた。

理緒がプレイヤーに引き込まれていく様子は辛かった。ここで一旦読むのを中断してしまったくらい。錬の将来も気になるが（カガヤは別として）誰も犯罪者として結末を迎えなかったことが（そのように仕組まれたことが）見事。だが、果たしてこの物語はどこかに着地しているのだろうか。登場人物たちがはっきりと印象に残る人たちばかりなので、彼らのその後がとても気になる・・・。

2024/08/03

なるほどそう繋がるのか、と5分の4くらいで関心。

だがしかし、
誰もがみんな過去や家庭にいろいろありすぎて
そんなに生きるのって大変なのか？？となる。

いや、おはなしだから良いのだけれども。

2024/08/01

装丁とタイトルから、なんとなく文学的な作品なのかな〜と思ってたら全然違ってた。
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ひったくり現場に偶然居合わせた大学生の春風と高校生の練が、その犯人を追跡する事から始まる物語。
文体が読みやすく主人公が若いのもあって、最初はライトな探偵物かと思った。
だけど読み進めていくうちに、もう１つのストーリーが並行に描かれたりと、どんどん複雑になっていく。
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なんか色々と予想を裏切られる作品だったな〜
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詐欺グループの実体がすごくよく描かれていてびっくり！
首謀者と実行犯が違ったり、犯行グループ内でもお互いの素性を知らなかったり、最近よく聞く犯罪の手口と似通っててすごくリアル。
オレオレ詐欺も手が込んでて、こんなに巧みだと騙されてしまいそう。
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読み口は軽めだけど、社会派ミステリっぽくもあるし、よく練られてて面白かった！
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「中心は暗闇に沈んで何も見えないのに、その輪郭だけが強烈なかがやきを放つ」という金環日食。
人間も同じで誰の中にも光と闇がある。
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金環日食を金環日蝕としたところが上手いな〜！
日食が終われば、また燦々と光輝く太陽に戻る。この子達の未来がいい物であると信じたい。
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2024/08/01

特殊詐欺がテーマ。
これだけ注意喚起しても被害者が増えることが不思議だったけど、ごく身近な人しか知らない情報を出されるとあっさり信じてしまうんだなと。情報の重要さを痛感。
登場人物が多過ぎない？誰が誰かわからなくなってなかなか進まなかった。もう少しスッキリした相関図の方がいいかな。

2024/07/17

近所のおばあさんがひったくりにあうところを目撃し、咄嗟に追いかけた春風。近くにいて一緒にひったくり犯を追った練。
犯人は取り逃がしたが、落とし物から２人で犯人を捜し出す事に。

その間に挟まれる、名簿から個人情報を聞き出す仕事をしているりお。

2人とりおがどの様に絡んでくるのか、繋がりが見えた時には思わず声が出ちゃいました。ぐいぐい読まさる。

2024/07/03

面白かった。
爽やかな、バディもののミステリかと思った。
でも、普通の家庭で育ち、明るくパワフルな主人公と里緒が対照的なのかと思いきや、主人公や練にも暗い過去があったり、思っていたことは違う方向に行ってしまった。父親と練の対決してほしかったし、謎は謎のままの部分もあって、すっきりしない最後だった。
人物はみんな魅力的で良かった。