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煉獄の時
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煉獄の時

笠井潔(著者)

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 文藝春秋
発売年月日 2022/09/26
JAN 9784163915999

煉獄の時

¥3,520

商品レビュー

4.7

13件のお客様レビュー

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2025/10/17

長く敬遠していた笠井潔だが、信頼できる友人から勧められて『バイバイ・エンジェル』から順に読んだ。読む順番を守って正解。デビュー作にも出て来た人物がこの作品の準主人公とも言える。また仮名になってるがシモーヌ・ヴェーユもハイデッガーも、もちろん今作で初登場のサルトル、ボーヴォワールも...

長く敬遠していた笠井潔だが、信頼できる友人から勧められて『バイバイ・エンジェル』から順に読んだ。読む順番を守って正解。デビュー作にも出て来た人物がこの作品の準主人公とも言える。また仮名になってるがシモーヌ・ヴェーユもハイデッガーも、もちろん今作で初登場のサルトル、ボーヴォワールも独特の味わいを出している。前作はフロイトなどの心理学がメインだったのでイマイチ楽しめなかったが、今作はスペイン戦争、第二次大戦のフランス、ヴィシー政権とそれに対立するド・ゴールの自由フランスの正当性。さらにスターリニスト、アナーキスト、さまざまな活動家が登場し予断を許さない。全ての革命は裏切られた革命である、という結論はそうなのかもしれないが、もしかしたらと言うザ・クラッシュ的な甘い幻想も完全否定はされていない。そうそう、謎解きの大事なポイントに忌野清志郎がいたが、これは好きな人しか分からないだろう。しかし、ここまで書いてミステリの感想ではないと苦笑。

Posted by ブクログ

2025/10/12
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矢吹駆シリーズ第7弾。 1978年6月。思想家のクレール(サルトル)がパートナーのシスモンディ(ボーヴォワール)に宛てた手紙が失くなる。そして手紙をネタに誘い出されたシスモンディは、係留中の川船で全裸の女性の首なし屍体を発見する。事件の調査のためナディアと矢吹駆がリヴィエール教授を訪ねると、彼は若き日の友人イヴォンのことを語り始める。39年前、イヴォンも首なし屍体事件に遭遇したというのだ。 〈消失〉と〈簒奪〉をめぐる現象学的本質直観が、二十世紀の観念論をも批判する802頁の大巨編。ひたすら圧倒されました。

Posted by ブクログ

2025/03/22
  • ネタバレ

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やっと読み終わった…。一カ月かかりました。  フランスにおける第二次世界大戦前夜、戦中、戦後の政治史だけでなく、文化史、思想史、社会情勢を詰め込んだかのような小説でした。  革命、テロル、抵抗運動、レジスタンス、の意味や意義を作者なりに(バイバイ・エンジェルを素に)再検証しているようでもあり、ナチスのホロコーストを(サマー・アポカリプスや哲学者の密室、薔薇の女を基に)再批判しているようでもあります。  イヴォン(第一作)、リュミエール(第二作)、ルノワール(第三作)、ハルバッハ(第四作)、タジール(第五作)、アスタルテ(第六作)、クレール(本作)など過去のシリーズの登場人物たちがある者は主要キャラとして、ある者はチョイ役として登場します。  (バタイユ、ヴェイユ、ハイデガー、サルトル、ボーヴォワール、岡本太郎などが小説の中でモデルとして登場しています) ナチズムは政治結社ではなくて宗教結社であった。 であるならば、政治的な対応ではなくて、宗教的な対応でなければ抵抗し得ない。イギリスとフランスは政治的に対応してしまったからナチズムの拡大を許してしまったのか? いや、おそらく近代の歪みが極めて極端な形で露見してしまったのだろう。ドイツも日本も。 「剥奪」は近代の負の産物なのかもしれません。 以下、自分用 p225 戦争に巻きこまれた革命は民衆の自己権力を党派の独裁が駆逐していくことで変容する。中略 革命の戦争化は民衆的な開放性を暴力と報復の陰湿な論理で必然的に冒していく。戦争の論理に蝕まれた革命は精神的にも制度的にも、革命の反対物へと必然的に変質していく。 p260 「全体主義でない革命は敗北する」 p321 二十世紀の破壊的な新型戦争のために、前世紀の文化や芸術や精神は土台から崩れ落ちた。形骸化した近代芸術を破壊するダダイスムやシュルレアリスムの運動もそこから必然的に生じた。 p383 二十世紀人は前世紀のロマン主義者のように上方にではなく下方に向けて超越しなければならない。清澄な天上ではなく腐敗と汚濁が渦巻く地底へと。 p482 どのような理由があろうと、怒りに駆られた被害者が適正である以上の暴力を奮うことは許されない。中略  力が暴力化しないための自他にわたる抑制が必要だし、暴力が行使された場合には不均衡の再均衡化が、すなわち適切な報復がなさなければならない。しかも報復は被害者の権利でもあり義務でもある。報復は自身で行う義務が課せられていて、他者を代行させてはならない。 p573 戦後一貫して政権を掌握し続けてきた日本の議会内保守勢力は、中略 経済的には資本主義を肯定し、外交的には反共親米、理念的には自由民主主義を揚げているが、中略 日本の保守勢力は戦前の日本帝国を理念的には肯定しながら、アメリカの属国である現実に疑問を持たないという欺瞞的な二重性がある。 p581 敗戦国に敗戦という精神的な傷が残ります。敗戦を終戦と言い換えることで歴史の切断を回避した日本人は、その自己欺瞞に呪われ続けます。 p742 私の身体は物質的構造として半ばモノにすぎないが、しかし私という生きられる主観は私の身体なしに存在することができない。自己存在を可能ならしめる特権性を帯びた場という点で、身体はモノ一般には還元されてない。たとえ一部であろうと自己身体の消失とは、先取りされた自己存在の消失、人間的可能性としての消失の体験に他ならない。 p747 消失に怯え、消失を恐れ、消失から逃れようとしてそれを剥奪、強奪に置き換えるナチズムと、それに連なる巨大暴力。自己存在の消失可能性を先取り的に生きることは、こうした暴力への根源的な抵抗に他なりません。 中略 ユダヤ人が消えたから私は消えない、消えなくてもすむという態度は、頽落の延長線上に生じる。 p773 所有と剥奪の論理が極限に達した時代が近代だ。そして二十世紀、消失を否定する剥奪の原理が全面化し世界を支配しはじめてホロコーストが現実化する。

Posted by ブクログ