スピノザと十九世紀フランス

上野修(編者), 杉山直樹(編者), 村松正隆(編者)

• 販売会社／発売会社: 岩波書店
• 発売年月日: 2021/02/25
• JAN: 9784000010887

商品レビュー

2025/02/03

1. 汎神論論争の背景
フランスにおける「汎神論論争」は、ドイツで展開された哲学的な深みを欠くものとされる。特に、スピノザの哲学がクーザン派の思想形成において重要な要素となっている。クーザン派は、スピノザに対する立ち位置を模索する過程で、フランス的な哲学を築いていった。この論争は、スピノザの影響が哲学のみならず、文学においても重要な役割を果たすことを示唆している。

2. サン・シモン派と汎神論
サン・シモン派は、カトリックから汎神論の疑いをかけられた社会主義者であり、彼らの思想には汎神論的な傾向が見られるが、スピノザの哲学にはあまり依拠していない。サン・シモン派は、歴史の中で超個人的な「人類」という存在の進歩に寄り添う形で、汎神論的な視点を取り入れている。

3. スピノザのフランス語訳集の刊行
汎神論論争の副産物として、スピノザの著作の優れたフランス語訳が刊行された。これはクーザン派の一員であるセセによるもので、教会側からの誤解や非難に対抗するため、スピノザの哲学をより正確に理解しようとする試みがあった。この翻訳は、哲学研究の専門外の人々にもスピノザの思想をアクセスしやすくする効果を持った。

4. 第二共和政から第二帝政への移行
1848年の二月革命は、フランスにおける政治的混乱の一端を担っている。首相ギゾーの退陣と国王の亡命を経て、共和政が成立するが、六月蜂起の後にはさらなる混乱が続いた。この時期には、クーザン派の哲学教育も影響を受け、特にカトリック保守派との対立が顕著になる。

5. 哲学教育とその変遷
第二帝政下において、カトリック教育が復活し、クーザン派の哲学教育に対する圧力が強まった。クーザンは、哲学カリキュラムの改革を行ったが、帝政の成立に伴う忠誠の宣誓が求められ、多くの教員が解職や亡命を余儀なくされた。

6. 結論
このように、フランスにおける汎神論論争は、スピノザの影響を強く受けながら展開され、同時に社会主義思想の中でも重要な役割を果たしている。クーザン派の哲学教育の変遷は、政治的な変動と密接に関連しており、その時代背景を理解することが、フランス哲学史の全体像を把握する上で重要である。

2021/04/09

図書館で借りた本。
フランスとスピノザとの関係を１９世紀を中心に描いた作品。スピノザの変幻自在ぶりというか、つかみどころのない人だなあと思う。