商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 早川書房 |
発売年月日 | 2020/06/18 |
JAN | 9784152099501 |
- 書籍
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余生と厭世
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余生と厭世
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商品レビュー
3.4
6件のお客様レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
146ページ、ページ数が少ないと思っていたけど、例えと言い回しが難しく読み流しながら牛歩で進んでいたため5日間くらい跨いで読了。 残りの診察回数を数える先生、良くない想像を巡らしている内に、足を怪我した少女を見過ごしてしまう冒頭からこの物語は始まる。 新患のアガッツ、患者のマダム・アルメイダ、耳の聞こえない隣人、夫の病を機に休職をした事務のマダム・シューリューグ、夫であるトム、これら登場人物が先生の周りを取り巻いて環境は変化し、終盤にはマダム・シューリューグが病院に戻ってくる「本当に引退するつもりじゃありませんよね?」の一言に引退を引き留められる。アガッツにカフェに誘われ、この物語はハッピーエンドで締め括られている。 訳者の後書きにラブストーリーと書かれているけれど、実生活を混同してはいけないという先生の言動に対し態度が裏腹で人間の業を感じ、知識もある傍ら感情移入出来ないが、前提としてフィクションである事、年代から見るに規制も現代より緩い印象があり、諸々を鑑みるに内容を受け入れなければいけない。 厭世的な思想に共感、患者の話を苦しそうに聞き流しながら残りの診察回数を数えていた冒頭と、残りの診察回数を数えていなかった事に今その時気付いた終盤の、変化と描写の対比が綺麗だった。悲観的な人間は残りの回数を数えるが、情熱のある人間は1回1回を大切にしようという意識が見て取れる。 物語はアガッツの病気の回復を軸に進んでいないが、診察をする度にアガッツが元気(なように見えてくる)のは魔法か、それとも先生の見方が変化していったからだろうか?アガッツに自己を投影してしまうのは仕事上では危ない事だけど、諸々を省けば、余生を楽しむには丁度良い人なのだと思う。 【まとめ】 厭世観は生き方の姿勢の一つとしてあるが、使い方を間違えれば、安定感を一度得た人の中から生まれる、怠惰と依存の絡んだ防衛反応だと思う。 その場しのぎの言葉や態度をある程度覚えれば1日の活動はシステム化され、慣れると情熱(=モチベーション)は少しずつ失われてしまう。 モチベーションのない生活はどんどんと淡白に見えてくるが、満たされないものが積もっても、楽を覚えた人間の一部は変化に怯えて安定をとり、そこに依存するようになる。 怠惰な感情で考えず、必要な時にまわそうと仕込んでいた脳は必要な時にも働かず、人は知らず知らずの内に動かした防衛反応によりどんどんと腐っていく。 その様子は、いわば見落としがちな底なし沼のようでもあり、楽に縋る人間が厭世観という沼に順当にハマっていくんだろう。
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なんかいいなあ。しみじみ?この本の良さを表すのはどうすればいいんだ?退職を控えた精神科医72歳の日常。静かで地味。家族、友達いない。自分が歳とったら、かなり満足した毎日を送ることができるんだろうと漠然と考えていたけど全然そんなことねえな。むしろ思い通りにいくことの方が奇跡に近く、...
なんかいいなあ。しみじみ?この本の良さを表すのはどうすればいいんだ?退職を控えた精神科医72歳の日常。静かで地味。家族、友達いない。自分が歳とったら、かなり満足した毎日を送ることができるんだろうと漠然と考えていたけど全然そんなことねえな。むしろ思い通りにいくことの方が奇跡に近く、常に周囲に疲労させられる。日本はカウンセリングがあんまり浸透してないし、なかなか人目あって、自分の心に向かい合うことに敷居がある。不思議だよね、自分を労ることに何だか罪悪感があるんだ。まあ最後の最後、この医師は少し自分が見えた。
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引退間近の精神科医とその日常を淡々と綴りながら、最後の新患女性との診察を通じて起こる彼自身の変化を描いた物語。 精神科ならではの重苦しさはほとんどなく、なんとも心穏やかな気持ちで読み進められる不思議なトーンを持った本だった。 著者はコペンハーゲン出身の、臨床心理士でもある女性。元...
引退間近の精神科医とその日常を淡々と綴りながら、最後の新患女性との診察を通じて起こる彼自身の変化を描いた物語。 精神科ならではの重苦しさはほとんどなく、なんとも心穏やかな気持ちで読み進められる不思議なトーンを持った本だった。 著者はコペンハーゲン出身の、臨床心理士でもある女性。元卓球デンマーク代表選手という興味深い経歴の持ち主。 他の作品も読んでみたくなった。 3~4ページくらいの短いスパンで見出しが付いており、全体のページ数も150ページほどと非常に読みやすい。 表紙のデザインはシンプルだがなかなかのインパクト。
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