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回復する人間
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回復する人間
¥2,640
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商品レビュー
4.3
35件のお客様レビュー
ここ3ヶ月ほどの間に『すべての白いものたち』『菜食主義者』『そっと静かに』の3冊を読みハン・ガンさんに強く惹かれる自分と向き合う充足した時間を過ごしてきました。 『回復する人間』は詩的で静謐な文章が美しい『すべての白いものたちの』と同じ斎藤真理子さんが翻訳された短編集です。 初出...
ここ3ヶ月ほどの間に『すべての白いものたち』『菜食主義者』『そっと静かに』の3冊を読みハン・ガンさんに強く惹かれる自分と向き合う充足した時間を過ごしてきました。 『回復する人間』は詩的で静謐な文章が美しい『すべての白いものたちの』と同じ斎藤真理子さんが翻訳された短編集です。 初出年月日の1番古い「火とかげ」が7つの短編のうち最後に掲載されていて2003年初出。韓国でのタイトルにも使われたこの作品が、韓国の文芸評論家シン・ヒョンチョルに「この本の関心事は(中略)〈傷と回復〉だ」と言わしめた7つの物語のいずれの基底ともなっているテーマが2003年の時点で作者にとって重要でその後ほぼ10年に亘り深く掘り下げられてきたことがわかります。 「火とかげ」の主人公の女性は画家。事故で使えなくなった左手のリハビリを懸命になってやり過ぎたため右手も使えなくなる。絵を描くことも、家事をすることもできなくなって2年、洗濯や皿洗いも夫に託すことを余儀なくされた時、2人の穏やかで、情熱的ではないけれど慈しみあった関係性は、健康であることを前提としたものにすぎなかったと知ることとなる主人公。前提条件が変われば関係性も変わり、完全な他人であった2人だという明瞭な事実だけが残ることに。 この経過、この3年ほどの間の私自身の経験と重なります。転倒して打った左肩故に左手が使えなくなり、2日置きに整体に通ってもさほどの好転もしない中、それでも緩やかに回復の兆しが見えてきた頃のこと。何をするにも右手で。ある日鍋底の汚れが苦になって右手で磨きあげていたら右肩が左肩と同じように痛むようになりました。幸いまったく使えないところまではいかなかったのですが不自由なことこの上ない。高いところのものが手を伸ばして取れない、重いものが持てない、という身体になってみて初めて常日頃当たり前に動けていたその当たり前が筋肉や骨が緻密に機能することによって成り立っていたことに気がつきました。そしてほぼ1年前、今度は右足に痺れが出て、脚の付け根のあたりに激痛が走って突然歩けなくなりました。脊椎管狭窄症。痺れとは一生の付き合いになりそうです。 閑話休題。 アトリエの賃貸契約を夫に一方的な打ち切られる、という状況下、友人が見かけたという写真館に飾られた主人公の写真が23歳だった頃の山登りの記憶を呼び覚まします。条件の悪い山登りの最中に出会った物静かで理知的な男性との邂逅の記憶。足をくじき背負われ下山。彼に好意を持たれ自分も彼に惹かれたと自覚したものの、名前も年齢も、職業も知らないまま過ぎた10年の歳月。この山行の描写が抜きん出て美しい。 そしてこの短編集のどの作品にも抜き書きしたくなるような心に染み入る一節があるのです。 再読、再再読必至の短編集です。
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面白かった。こんなに馴染みの良い文体で静かに沁み渡る文章、日本ではどなたに近いのだろう。 短編7つだったが、ひとつひとつが短編とは思えない濃さ。全ての物語で、主人公の持つ悲哀と閉塞感がとても繊細に書かれているが、さらっとしていて重たくない。読んでいて心地良い。 特に『エウロパ』『...
面白かった。こんなに馴染みの良い文体で静かに沁み渡る文章、日本ではどなたに近いのだろう。 短編7つだったが、ひとつひとつが短編とは思えない濃さ。全ての物語で、主人公の持つ悲哀と閉塞感がとても繊細に書かれているが、さらっとしていて重たくない。読んでいて心地良い。 特に『エウロパ』『青い石』が好きだった。
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日常的に溜まっていく澱が思いがけないときに表面に出てきてしまう。取り除ければ良いけれど、それも難しく、また澱が沈むのを待つしかないような気持ちになりました。その中で左手は抑圧してきた意識の飛び出し方がびっくりの激しい展開でした。
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