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回復する人間 の商品レビュー

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17件のお客様レビュー

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2024/01/03
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ハン・ガンの短編集。気になっていた白水社のエクス・リブリスシリーズを初購入。 訳者のあとがきにあるように、傷口が回復する前には痛むもの。人の心も同じで、様々な挫折、諦め、苦悩の果てに、回復の兆しが見えてくる。そんな作品が多い短編集だった。 相変わらず文体や情景が綺麗で、読んでいるだけで心が洗われた。以下、作品毎の感想。 ◎明るくなる前に ★おすすめ 弟を亡くした姉。自分がもっと気にかければと後悔し、以後、自身を罰するように生きる。“そんなふうに生きないで”。この祈りが刺さる。 ◎回復する人間 誰かの視点で語られる、決して分かりあうことのできなかった姉に先立たれた“あなた”の話。回復するためには痛みが伴う。心の声が、もう本当に切実で良い。 ◎エウロパ 女性になりたかった、でも心から愛する人は女性だった男の話。路地裏に響く歌の情景が良い。決して手の届かない女性をエウロパに例えることも綺麗。永遠には続かない関係だと予感させる終わり方も切ない。 ◎フンザ 自分の思い描く桃源郷に逃げながら、子育てと大黒柱を担う生きることに疲れた女性の話。少し暗い話。いつか破滅するか、破滅することを選ぶであろう終わり方か。 ◎青い石 ★おすすめ 友達の叔父に恋した女性の話。綺麗な恋愛小説。凄く映像化してほしい作品。 ◎左手 まさかの凄く暗い話。この短編集の中ではかなり異色作。勝手に動くようになった左手のせいで、守りたかったものも守れず自滅する男の話。夜、店でライトに照らされて影が壁に伸びる情景が本当に良い。 ◎火とかげ 事故の影響で両手が使えなくなってしまった画家の話。絵を描く事にしか生き甲斐がなく、両手がほとんど動かなくなったため生きているだけの屍となってしまい、夫とも不仲になってしまう。生き甲斐を失っても、そこからどうやって希望を見出すのか。この本のテーマである、喪失と回復が描かれた作品。

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2023/09/30

痛みがあってこそ回復がある。大切な人の死や自らの病、家族との不和など、痛みを抱え絶望の淵でうずくまる人間が一筋の光を見出し、ふたたび静かに歩みだす姿を描く。  生きる上での痛みや傷は、抱えたまま共に生きることでしか前に進めないのかもしれない。絶望の中でもいつか小さな光に辿り着ける...

痛みがあってこそ回復がある。大切な人の死や自らの病、家族との不和など、痛みを抱え絶望の淵でうずくまる人間が一筋の光を見出し、ふたたび静かに歩みだす姿を描く。  生きる上での痛みや傷は、抱えたまま共に生きることでしか前に進めないのかもしれない。絶望の中でもいつか小さな光に辿り着ける人間は悲しく強いなと思う。

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2023/02/19

人の死や、告げられた余命によって、周囲の人間は変化する。自分の生をありがたく思ったり、悩みがちっぽけに見えたり、本当に大切なものに気づいたり。また、生きることの生々しさを痛感して辛くなったり。 安全圏から『死』を見ることにより、自分の『生』が明確化される感覚があった。

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2022/12/21

「あなたはしょっちゅう忘れてしまう。さっきまであなたがどこにいたか、何の治療を受けていたのか、今はどこに向かって歩いているのかを忘れる。」

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2024/06/07

最初はとっつきにくい印象を受けたが、とても詩的で美しい物語。孤独と刹那さに打ちのめされそうでありながら、微かな光が必ずあって、作者の方は凄く繊細で表現力が豊かな方なのだと感動した。

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2022/08/28

表題作は1週間前に姉が亡くなる。その葬儀で捻挫し、そこにお灸をしてもらって火傷をする。それを忙しさにかまけて化膿しより酷くなり、医者に診てもらうところで話は始まる。姉との関係がどこからギクシャクしたのかなど考えながら…ラストに好きだった自転車で坂を下る。ペダルから足を離して…ここ...

表題作は1週間前に姉が亡くなる。その葬儀で捻挫し、そこにお灸をしてもらって火傷をする。それを忙しさにかまけて化膿しより酷くなり、医者に診てもらうところで話は始まる。姉との関係がどこからギクシャクしたのかなど考えながら…ラストに好きだった自転車で坂を下る。ペダルから足を離して…ここから世界が少し色づくような感じがする。 この話、未来の話が挿入される。『あなたは知らない。…していくことを知らない。』と何回か入ってくる。変わった文だけれど、なんとなくイメージはわかる。 映像だと自転車で坂道をわぁーっと下っていくシーン、そしてラストシーン。その間に未来が挟まれるのだろうか。 表題作含めすべての短編が回復する人の話。 1番好きだったのは、原作のタイトルだった『火とかげ』 原題は『黄色い模様のヨンウォン』というタイトルで、ヨンウォンという言葉にはトカゲという意味と、同じ音で『永遠』という意味もあるらしい。 それが話のラストあたりで出てくる。 2年前に交通事故を起こし、左手が使えなくなり、右手を無理矢理リハビリしたせいで右手も思うように使えない画家。夫は感情を失い、日々苛立っている様子。友達が久しぶりに電話をくれる。写真館にあなたの写真が飾ってあると。そこから思い出す過去の記憶。そして絵を描いてみようとアトリエに行き始める。 この過去の話がいいです。まだまだ健康だった独身時代。研究者っぽい男性と登山で出会い撮ってもらった写真。その写真を見に、そして友人に会いに出かける。 今まで手のことで、病院以外ほとんど外にも出なかった日々をおくっていたが、少しずつ外向きになる。 新しく描こうと思っている絵はもっと外向きの絵。 何回も読みたい話。

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2021/12/31

文学ラジオ空飛び猫たち第28回紹介本。 2021年最初の作品紹介は韓国を代表する作家ハン・ガンの短編集「回復する人間」です。ラジオで最初に作品紹介したのも同作者の「ギリシャ語の時間」で、案内人2人が好きな作家です。番組では表題「回復する人間」と「火とかげ」について話しています。収...

文学ラジオ空飛び猫たち第28回紹介本。 2021年最初の作品紹介は韓国を代表する作家ハン・ガンの短編集「回復する人間」です。ラジオで最初に作品紹介したのも同作者の「ギリシャ語の時間」で、案内人2人が好きな作家です。番組では表題「回復する人間」と「火とかげ」について話しています。収録されている短編はどれも素晴らしく、順風満帆な人生にはほど遠い人たちの〈傷と回復〉を描いています。 ラジオはこちらから→https://anchor.fm/lajv6cf1ikg/episodes/28-epc5l4

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2021/11/24

いろんな悲しいことから回復する人々の話。慣れない韓国人の名前と訳し方が気になってなかなか読み進められず、中断、、

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2021/10/15

作家の西加奈子さんのポッドキャストをきっかけに読んだ(「西加奈子が選ぶ12冊の処方箋」 )。亡くなってしまった初めての彼氏が忘れられないという相談者さんに、西さんが勧めた本のうちの一冊。 清洌なイメージが時おり脳裏に閃く短編集。 『火とかげ』 回復は簡単ではない。無理やり乗り...

作家の西加奈子さんのポッドキャストをきっかけに読んだ(「西加奈子が選ぶ12冊の処方箋」 )。亡くなってしまった初めての彼氏が忘れられないという相談者さんに、西さんが勧めた本のうちの一冊。 清洌なイメージが時おり脳裏に閃く短編集。 『火とかげ』 回復は簡単ではない。無理やり乗り越えることはできない。それでも、木の葉を通した光がひとひらひとひら積もるように、兆していくことがある。 『左手』 社会に適応的でない感情や欲求を、無視し、封じ込め、圧殺することでしか対処できない男の物語。男性ジェンダーの負う哀しさ、痛々しさ、責任の取れなさが、「自分の意思を無視して動く左手」というトリッキーな小道具によって見事に描かれている。 他の物語の主人公である女達が、自らの感情(望ましいもの・そうでないもの全てひっくるめて)をひたすら淡々と感じきり、伴走しているのと対照的だ。面白かった。

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2021/04/27

自分の語彙力の無さを露呈するようだが、まじでサイコー。 出逢えてよかった作家、作品。 ハン・ガンは3冊目。彼女の作品を読むことができる時代に生まれてよかった。 今作は、「痛みがあってこそ回復がある」がテーマの短編集。全7編とも、全部いい。 死のにおいを感じながらの生を感じる。集...

自分の語彙力の無さを露呈するようだが、まじでサイコー。 出逢えてよかった作家、作品。 ハン・ガンは3冊目。彼女の作品を読むことができる時代に生まれてよかった。 今作は、「痛みがあってこそ回復がある」がテーマの短編集。全7編とも、全部いい。 死のにおいを感じながらの生を感じる。集中して、静かな部屋で読むのがおすすめです。わたしは冬の夜、テントの中でランプの灯りで楽しみました。 明るくなる前に…かつての職場の同僚であったウニ姉さんは、弟の死をきっかけにバックパッカーになる。ウニ姉さんとの関係、自分の闘病、作家としての社会復帰をする矢先の出来事。 回復する人間…姉の葬儀で足をくじき、お灸でのやけどから感染症をおこしてしまった足。関係をうまく築くことができなかった姉との関係。回復を望んでいない私、痛みとともに回復する(であろう)足。独特な語り口で、未来から今を語っている。日本語版での表題作。 エウロパ…自分のジェンダーと、好きだった彼女の歌声。彼女と過ごした、二度とは戻れない夜を思いす。 フンザ…うまく人間関係を築けない夫、子育て、仕事を抱える私は、フンザというとある地に憧れを感じている。紛争地帯で、容易にはいくことができない土地に思いをはせながら、生活は続く…。 青い石…友人のおじさんは、一日中家で作品を作っているアーティスト。彼は、幼少期から病気を患っていて(たぶん血友病)、常に生活に制限がある。アトリエに通うようになった私は、彼に惹かれていく。 この作品超よかった…。発展した長編『風が吹く、行け』もあるようなので、翻訳お願いします。(でもこの短編だけで完結してもいい…悩む。) 左手…ある日、左手が思うように動かなくなった男性。気に食わない上司に手を挙げ、憧れの先輩の腰に手を回す 火とかげ…黄色い模様の永遠という現代で、韓国版の表題作。事故で左手が使えなくなった画家である主人公。早期回復を望むあまり、右手も使えなくなってしまった。夫のサポートなしでは生きられなくなり、夫もいらだちを隠そうともしない。画家としての再起を考えたとき、友人と再会し、思い出す10年前の登山の思い出。太陽の黄色を感じながら読みました。

Posted byブクログ