商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 講談社 |
発売年月日 | 2017/07/14 |
JAN | 9784062937214 |
- 書籍
- 文庫
流
商品が入荷した店舗:店
店頭で購入可能な商品の入荷情報となります
ご来店の際には売り切れの場合もございます
オンラインストア上の価格と店頭価格は異なります
お電話やお問い合わせフォームでの在庫確認、お客様宅への発送やお取り置き・お取り寄せは行っておりません
流
¥1,045
在庫なし
商品レビュー
3.9
153件のお客様レビュー
久しぶりに「匂い」を、嗅覚を意識させる物語に出会った。 舞台は台湾、そこで暮らす青年の日々を綴る。少しオカルト的なネタも含みながら、しかし妙な実在感を伴って、主人公葉秋成の生きざまが読む者に迫ってくる。家族とのつながり、淡いけど真剣な恋心、奇妙な友情…。核となるのは、非業とも言...
久しぶりに「匂い」を、嗅覚を意識させる物語に出会った。 舞台は台湾、そこで暮らす青年の日々を綴る。少しオカルト的なネタも含みながら、しかし妙な実在感を伴って、主人公葉秋成の生きざまが読む者に迫ってくる。家族とのつながり、淡いけど真剣な恋心、奇妙な友情…。核となるのは、非業とも言える死をとげた秋成の祖父について、その死の真相を明かすべく迫るうちに紐解かれていく数奇な人生と、これに対する主人公の思い、葛藤、そして気持ちの瓦解といったものだ。そう、ここには謎解きの要素もあり、ミステリーとしても楽しめる。 そして最初に掲げたように、この小説には台湾の「匂い」と、熱くかつ湿り気を帯びた空気を感じることができる。台湾に行ったことがない人(私も含めて)にも、この身体を包み込んでくるような、目だけで追う読書とは一線を画した、五感を駆使するような感覚をもたらしてくれる。こうした小説はめったにない。 また、こう言っては両作者に失礼になるのかもしれないのだが、依然読んだ真藤順丈の『宝島』に共通するものを感じた。あちらも沖縄という南の島を舞台にし、空気感の伝わるとても楽しめる、充実した物語であった(ちなみに両作品とも直木賞を受賞している)。 いずれにしても、体感全体を駆使して読むような稀有な小説。読んでいるさなかには「台湾にいる」こと、間違いなし。
Posted by
台湾を舞台とした推理小説。青年が大好きな祖父を殺害した犯人を追う。人を殺した人たちが、殺されて償いをしようとしていたとの内心描写は新鮮だった。それよりも、台湾を巡る情勢、日清戦争後に50年も日本統治となり、第二次世界大戦が終わったと思ったら、国民党がやってきて支配される、結局あん...
台湾を舞台とした推理小説。青年が大好きな祖父を殺害した犯人を追う。人を殺した人たちが、殺されて償いをしようとしていたとの内心描写は新鮮だった。それよりも、台湾を巡る情勢、日清戦争後に50年も日本統治となり、第二次世界大戦が終わったと思ったら、国民党がやってきて支配される、結局あんまり深く考えもしないでただ、殺し合ってただけ。。など、満足できる一冊でした。
Posted by
次回の読書会課題図書。 未だ混沌の中にある1970年代後半の台湾。蒋介石の死の翌月、当時17歳だった主人公、葉秋生の祖父が殺害されたところから物語は流れだす。 なんて饒舌で壮大でちっぽけな物語なんだろう。 中国近代史を背景に感じさせながら、 葉秋生の視点から現在と過去、近未...
次回の読書会課題図書。 未だ混沌の中にある1970年代後半の台湾。蒋介石の死の翌月、当時17歳だった主人公、葉秋生の祖父が殺害されたところから物語は流れだす。 なんて饒舌で壮大でちっぽけな物語なんだろう。 中国近代史を背景に感じさせながら、 葉秋生の視点から現在と過去、近未来を自在に語り、ときに壮麗なレトリックをふんだんに織り込んで400頁もの長編小説でありながら、一瞬たりとも飽きさせないエンタメ作品に仕上がっている。 これは直木賞受賞も頷ける…。 物語の軸は祖父の死の謎を追うこと、 彼の何気なくも特別な青春の日々だ。 70年代後半の、雑多で暴力的で秩序も清潔さもない、だけど根拠不明の抱擁力からくる不思議なあたたかさについ惹かれてしまうカオスな台湾は、そのまま主人公の祖父に、そしてそのルーツにある中国大陸へと印象が重なる。 読んでいる間、それこそいろんな感情がめまぐるしく湧いてきて、気がつけば眉をひそめていたり、ちょっと吹き出したり、自分でも全然思いがけないところで涙腺が緩んだり。 テンションが高いわけではないのに、明快かつパワフルな文章で物語にグイグイひっぱられる。 こんなにいろいろと読んでいる最中の読者の表情を変えてしまう本も珍しい。 いろんな人生哲学も勝手に読み取ったんだが、これを読んで思ったのは、人間が生きていく中で、ズバっと指標になる簡単なフレーズなんてないんだなということ。流れていく時間の中で、その都度出会った大事な言葉を、拾っては捨てて、そうやって過ごしていくんだろう。 わりと長編なのに休めるところがないし、顔も頭もめちゃくちゃ疲れたけど、没頭させられる快感には変えがたい。 めーっちゃ面白かった。
Posted by