流 の商品レビュー
久しぶりに「匂い」を、嗅覚を意識させる物語に出会った。 舞台は台湾、そこで暮らす青年の日々を綴る。少しオカルト的なネタも含みながら、しかし妙な実在感を伴って、主人公葉秋成の生きざまが読む者に迫ってくる。家族とのつながり、淡いけど真剣な恋心、奇妙な友情…。核となるのは、非業とも言...
久しぶりに「匂い」を、嗅覚を意識させる物語に出会った。 舞台は台湾、そこで暮らす青年の日々を綴る。少しオカルト的なネタも含みながら、しかし妙な実在感を伴って、主人公葉秋成の生きざまが読む者に迫ってくる。家族とのつながり、淡いけど真剣な恋心、奇妙な友情…。核となるのは、非業とも言える死をとげた秋成の祖父について、その死の真相を明かすべく迫るうちに紐解かれていく数奇な人生と、これに対する主人公の思い、葛藤、そして気持ちの瓦解といったものだ。そう、ここには謎解きの要素もあり、ミステリーとしても楽しめる。 そして最初に掲げたように、この小説には台湾の「匂い」と、熱くかつ湿り気を帯びた空気を感じることができる。台湾に行ったことがない人(私も含めて)にも、この身体を包み込んでくるような、目だけで追う読書とは一線を画した、五感を駆使するような感覚をもたらしてくれる。こうした小説はめったにない。 また、こう言っては両作者に失礼になるのかもしれないのだが、依然読んだ真藤順丈の『宝島』に共通するものを感じた。あちらも沖縄という南の島を舞台にし、空気感の伝わるとても楽しめる、充実した物語であった(ちなみに両作品とも直木賞を受賞している)。 いずれにしても、体感全体を駆使して読むような稀有な小説。読んでいるさなかには「台湾にいる」こと、間違いなし。
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台湾を舞台とした推理小説。青年が大好きな祖父を殺害した犯人を追う。人を殺した人たちが、殺されて償いをしようとしていたとの内心描写は新鮮だった。それよりも、台湾を巡る情勢、日清戦争後に50年も日本統治となり、第二次世界大戦が終わったと思ったら、国民党がやってきて支配される、結局あん...
台湾を舞台とした推理小説。青年が大好きな祖父を殺害した犯人を追う。人を殺した人たちが、殺されて償いをしようとしていたとの内心描写は新鮮だった。それよりも、台湾を巡る情勢、日清戦争後に50年も日本統治となり、第二次世界大戦が終わったと思ったら、国民党がやってきて支配される、結局あんまり深く考えもしないでただ、殺し合ってただけ。。など、満足できる一冊でした。
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次回の読書会課題図書。 未だ混沌の中にある1970年代後半の台湾。蒋介石の死の翌月、当時17歳だった主人公、葉秋生の祖父が殺害されたところから物語は流れだす。 なんて饒舌で壮大でちっぽけな物語なんだろう。 中国近代史を背景に感じさせながら、 葉秋生の視点から現在と過去、近未...
次回の読書会課題図書。 未だ混沌の中にある1970年代後半の台湾。蒋介石の死の翌月、当時17歳だった主人公、葉秋生の祖父が殺害されたところから物語は流れだす。 なんて饒舌で壮大でちっぽけな物語なんだろう。 中国近代史を背景に感じさせながら、 葉秋生の視点から現在と過去、近未来を自在に語り、ときに壮麗なレトリックをふんだんに織り込んで400頁もの長編小説でありながら、一瞬たりとも飽きさせないエンタメ作品に仕上がっている。 これは直木賞受賞も頷ける…。 物語の軸は祖父の死の謎を追うこと、 彼の何気なくも特別な青春の日々だ。 70年代後半の、雑多で暴力的で秩序も清潔さもない、だけど根拠不明の抱擁力からくる不思議なあたたかさについ惹かれてしまうカオスな台湾は、そのまま主人公の祖父に、そしてそのルーツにある中国大陸へと印象が重なる。 読んでいる間、それこそいろんな感情がめまぐるしく湧いてきて、気がつけば眉をひそめていたり、ちょっと吹き出したり、自分でも全然思いがけないところで涙腺が緩んだり。 テンションが高いわけではないのに、明快かつパワフルな文章で物語にグイグイひっぱられる。 こんなにいろいろと読んでいる最中の読者の表情を変えてしまう本も珍しい。 いろんな人生哲学も勝手に読み取ったんだが、これを読んで思ったのは、人間が生きていく中で、ズバっと指標になる簡単なフレーズなんてないんだなということ。流れていく時間の中で、その都度出会った大事な言葉を、拾っては捨てて、そうやって過ごしていくんだろう。 わりと長編なのに休めるところがないし、顔も頭もめちゃくちゃ疲れたけど、没頭させられる快感には変えがたい。 めーっちゃ面白かった。
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文学。読み応えがあり、文章も骨太。登場人物の読み方が難しくてとっかかりにくかったけど、十分満足できた。ああ、小説だなぁ。
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https://www.nikkei.com/article/DGKKZO82738110T10C24A8BE0P00/
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生まれ育った時代、場所、空気、人間、流行、臭い、肌に触れるすべてのモノによって今のわたしがかたち作られ、これからの人生をさらに濃密にしていくんだろうな…
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1975年以降の台湾を舞台にした若者の青春小説であり、祖父を殺した犯人を巡るミステリでもある 以下、公式のあらすじ ----------------------- 一九七五年、台北。内戦で敗れ、台湾 に渡った不死身の祖父は殺された。誰に、どんな理由で? 無軌道に過ごす十七歳の葉...
1975年以降の台湾を舞台にした若者の青春小説であり、祖父を殺した犯人を巡るミステリでもある 以下、公式のあらすじ ----------------------- 一九七五年、台北。内戦で敗れ、台湾 に渡った不死身の祖父は殺された。誰に、どんな理由で? 無軌道に過ごす十七歳の葉秋生は、自らのルーツをたどる旅に出る。台湾から日本、そしてすべての答えが待つ大陸へ。激動の歴史に刻まれた一家の流浪と決断の軌跡をダイナミックに描く一大青春小説。選考委員満場一致、「二十年に一度の傑作」(選考委員の北方謙三氏)に言わしめた直木賞受賞作。 一九七五年、台北。内戦で敗れ、台湾に渡った不死身の祖父は殺された。誰に、どんな理由で? 無軌道に過ごす十七歳の葉秋生は、自らのルーツをたどる旅に出る。台湾から日本、そしてすべての答えが待つ大陸へ。激動の歴史に刻まれた一家の流浪と決断の軌跡をダイナミックに描く一大青春小説。選考委員満場一致、「二十年に一度の傑作」(選考委員の北方謙三氏)と言わしめた直木賞受賞作。 ----------------------- 冒頭、台湾出身の主人公が中国の山東省で、祖父が村人50人以上を惨殺したという石碑を訪れる場面が描かれる 昔から父に、その土地を訪れたら殺されると脅されていた そんな折、村人から「あいつの息子か?」と尋ねられる 果たして、じいちゃんは一体何をしたのか? 時代は遡って、物語のメインは1970年代の台湾を主な舞台にした時代小説 1975年 蒋介石が亡くなった年 主人公 葉 秋生(イエ チョウシェン)の祖父が自分のお店 布屋で殺される じいちゃんは昔から破天荒な人だった 日中戦争、中国側では抗日戦争のときには、人を殺しまくり 日本人のスパイとして動いていた中国人の家族を殺したり 報復合戦のようになっていた中、義兄弟の家で助かった息子を自分の子として育てたりという義理堅さ 義侠心を持ち合わせていた また、孫の自分には優しかった そんな、生き方だったので人の恨みを買っている可能性はあるが、それでもこの場所でこのタイミングで殺された謎 そんな祖父を殺した犯人を見つけようと躍起になる若者の話 だけど、物語の大部分は無軌道な若者の馬鹿な所業が描かれる 幼馴染みのチンピラ趙戦雄ととつるんだり、喧嘩したり 小遣い稼ぎに替え玉受験したらバレて学校を中退したり、軍隊に入ってしごかれたり、また、2個年上の幼馴染の毛毛と恋仲になったり、ヤクザと揉めたり、 当時の台湾の情景が見えるよう 政治的な背景など詳しいともっと面白く読めるのかも知れない 土着の内省人、大陸からやってきた国民党の外省人 共に、中国共産党の動きに神経を尖らせる社会情勢 当時の台湾の空気のを知らない自分でもまるでその世界を知っていたように、それほどまでによく書けている あと、文章を読んでいて猥雑な匂いを感じる 食べ物の描写もそうだし、街の描写もゴチャゴチャとした雰囲気が伝わってくる その分、暴力的な描写や家に大量発生するあの虫の描写があるので、そっち系が苦手な人は注意 マジでアレのエピソードは読んでいて気持ち悪い でも、一応本筋に関係のあるヒントが隠されていたりするので、読み飛ばしてはいけないジレンマ 葉秋生視点で語られているけど それは未来の自分が過去を振り返っているため、作中の時点より少し未来の事について言及されていたりする なので、物語のその後にどうなるのかというのを、読者は途中で知ってしまっているわけで あの終わり方、それはそれで面白い味を出している 著者の東山彰良さん 台湾に生まれ、9歳で日本に移りむ そして日本に帰化せず、中華民国の国籍を保持しているらしい 祖父は中国山東省出身の抗日戦士 筆名の「東山」は祖父の出身地である中国山東省からとっている 父親も作中と同じく教師みたいだし、この作品に自身を重ね合わせている面が多いのではなかろうか? あと、小説全般に言える事だけど、外国作品は名前が覚えにくい問題 漢字だったら大丈夫かというわけではないようだ 字面だけで読んでいけばそんなに変わらないのかも知れないけど 脳内でもちゃんと本来の読み方で読もうとしたので、今作も名前は覚えにくかったですねぇ
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これはおもしろかったですよ! 今まで中国と台湾と日本のことを知らないで、のほほんと生活してました。 いろいろな面で勉強になりました。
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面白かった。 中国と台湾、戦争と今、青春、血、 など色んな物が出てきて飽きなかった。 大陸の人達の気質はやっぱり違うのかなぁ。
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たまたま台湾旅行後に台湾が舞台のこの本を父から薦められました すっかり台湾ファンになっていたから作品の舞台の台北の街の熱気も、登場人物たちのパワーも鮮明に浮かんできて、また今すぐ台湾行きたくなってしまいました 生きる力強さ、大好き!
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