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商品レビュー
3.7
51件のお客様レビュー
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読み始めたときは,本物の大学生(直広)からの手紙やメールに対して姜さんが書いた返事を編集したノンフィクションかと思った。しかし本書は,直広青年と姜さんとの架空のメールのやりとりを借りて,姜さん自身の「生と死」への思いを語った本だと分かった。 しかも最後に明らかになるように(途中から伏線もあるが),このメールのやりとりは姜さんの息子との会話ともなっている。若くして自ら命を絶ってしまった息子に対し,自分にできることはなかったのか,そういう自問自答をも含んでいるのだと思う。というか,そういう自問自答のためにこそ,この小説を書かざるを得なかったとも言えるだろう。姜さんは,この小説を書くことを通して息子と話しあっている。そして息子を亡くしたいま,自分が生きる意味を考えているのだろう。 震災による多くの人間の死を取り上げた部分は,2020年のコロナウイルス感染症による死者の数の発表を思い出して,ゾクッとする。 わたしたちはテレビの画面で何度もいやというほど荒々しく牙をむく津波の映像を見せられながら,じつは一人ひとりの死の重さとは向きあっていませんでした。奇妙なことに,死者や行方不明者の数が増えるほどに,わたしたちの感性は逆に麻痺して,死のリアルから遠ざかっていったように思います。(p.164) ○か×か,右か左か,生か死か,善か悪か,自然か否か,ではなく,その両方を兼ね備えて発展していくものが人間の〈生=死〉ではないのか。このような姜尚中さんの弁証法的な考え方が,全編を通して表れてくる。だからこそ,わたしたちは無い頭を絞って考え続けていくのだし,生きられるだけ生き続けていくのだろう。 愛が強ければ強いほど,また愛がピュアであって欲しいと思えば思うほど,かすかな濁りですらも許せなくなるでしょうが,しかし濁りがあればあるほど,愛が募り,ピュアなものへの憧れが強くなっていくように思えます。とすれば,愛と不信,純粋と汚辱とは,手に手をとって人の心に熱を与えつづけているともいえます。だからこそ,悩みも昂じ,生への欲動も強くなっていくのかもしれません。(p.274)
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最初は姜さんノンフィクションだと思って読み始めたから、姜さんのナルシストな感じが引っかかったけど、 「先生」と「僕」のフィクション小説だと気づくと 世界に入り込めた。夏目漱石「こころ」に似てるけど、もっともっと噛み砕いて離乳食みたいにしてくれた、甘く優しい哲学
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大震災を挟み、大学の「先生」と大学生の青年とのメールのやりとりを通して、「生きる」ことの意味を深く見つめた作品。 青年に早世した息子の面影を見ていた「先生」の眼差しが切ない。青年との問答はきまじめでやや説教臭いが、これは現代の『こころ』だ。
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