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何もかも憂鬱な夜に 集英社文庫
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何もかも憂鬱な夜に 集英社文庫

中村文則【著】

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何もかも憂鬱な夜に 集英社文庫

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 集英社
発売年月日 2012/02/17
JAN 9784087467987

何もかも憂鬱な夜に

¥616

商品レビュー

3.8

575件のお客様レビュー

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2026/02/25

境遇に負けて(負けると言っていいなら)死を選んだ真下。孤独の中で人を殺してしまった山井。 刑務官の僕は考える。 中村さんの作品は「掏摸」から読み始めた。日ごろさまざまな小説の世界を楽しんでいるが、たまに彼の作品を手にしてみると暗い世界観の中にしゃがみこんで、自分を見つめたいよう...

境遇に負けて(負けると言っていいなら)死を選んだ真下。孤独の中で人を殺してしまった山井。 刑務官の僕は考える。 中村さんの作品は「掏摸」から読み始めた。日ごろさまざまな小説の世界を楽しんでいるが、たまに彼の作品を手にしてみると暗い世界観の中にしゃがみこんで、自分を見つめたいような気持になる。 この作品も 読んで楽しい話ではない。 中村作品に多い心の底の暗部が現実離れした環境の中でゆっくり現れてくるような日常。 それが今回は特に明確な形をもった人物や、境遇が読める。 人物や仕事にはっきりした具体性があり、読みやすくわかりやすい。 ほかの作品とはすこし印象が変わってはいるが、テーマはやはり、重い感じに閉じ込められてしまう作品にはなっている。 施設育ちで、刑務官になった僕。同じ施設育ちの真下が自殺し、そのノートが送られてくる。 家族も兄弟もなく自分の求める小さな幸福のあてもない自分。真下の持つ憂鬱や混沌が彼を水に誘い、水に入り、流された真下を僕は理解できる。 僕も施設で身を投げようとした過去がある、だが、施設長によって心身ともに救われて成長する。本や音楽をあたえられ人生の深さや広がりを感じられるようになってきた。 しかし、いまでも僕の心の底には暗い川が流れていて、交代制で収監者を看、罪について語るのを聴くと、自分をもてあます事もある。 一月の差で少年法が適用されなかった山井という男が入ってくる。二人の男女を意味もなく殺害した罪で、二週間後に処刑されることになっていた。説得してもがんとして控訴をしないと言う。 彼は今まで生きてきて虐待にはなれてはいたが、ついに逃げ出して倒れ、仰向いて夜空の月を見たとき、今までになく深い深い孤独を感じた。気がついたとき二人の人を意味なく殺していた。彼は死にたかった。殺した後は「死ぬのが俺の役割だ、なるべく早く」と刑務官に訴えている。 僕は、「控訴をして心情を話せ」と言う。 死刑判決は変わらないかもしれないが、今ある命というものについてお前は知るべきだ。控訴して命について考えてみるべきだ。死刑は変わらなくてもとも言ってみた。 僕は、何も知らない彼に昔施設長が貸してくれた、本や音楽や映画のことを話したかった。彼は何も知らないまま死ぬのか。 犯した罪に課せられた死刑という判決とは別に、命について考えて欲しかった。 死刑制度について、刑務官も考える。そして囚人も考える。刑務官という仕事は、命の重みにじかに接する仕事である。 控訴した山中から手紙が来た、本を読み音楽を聴き、罪について考えをめぐらし始めていることを知る。そして自分と殺した人たちの本当に人生について考えるのは、もう遅かったが、やはり罪は死で購いたいという気持ちは変わらないと書いてあった。 大雑把な書き方では現しきれない、僕と真下の関係、何も持たない身軽さとそれゆえに孤独に死を求めた真下と、命の世界の重みと広がりを施設長から受け取った僕。 何も持たないどん底で虐げられて生きてきた山井の孤独。 時に闇の世界に迷い込みそうになる僕の夜。 本書は特殊な世界でありながら、人の持つ自分だけの命を生き続ける寂しさや支えられている周りの人々との繋がりが、ありふれた生活の中にも潜んでいることを考えさせられる。 この作家の書く暗さは辟易する部分もあるが、それは誰しも抱えている同じ磁場に自分も立っていることを感じられるからかもしれない。 少しありきたり感・・というと酷かな。

Posted by ブクログ

2026/02/25

何をもって死刑になるのか。又はならないのか。 肯定してはいけない。だけど必ずしも否定出来るわけでもない。 曖昧の中で闇を飼ってしまい、いつの間にか人として崩れていしまっている。そんな感覚、少なからず分かる。 p.158 「自分の好みや狭い了見で、作品を簡単に判断するな」 とても...

何をもって死刑になるのか。又はならないのか。 肯定してはいけない。だけど必ずしも否定出来るわけでもない。 曖昧の中で闇を飼ってしまい、いつの間にか人として崩れていしまっている。そんな感覚、少なからず分かる。 p.158 「自分の好みや狭い了見で、作品を簡単に判断するな」 とても良い言葉だし、本当にそうだと肝に銘じている。 作品でも他人でも全てに対してそうだ。 一人称でしかものを見ないから崩れるのだろう。 自分の範疇に無いものに対して、拒絶する人間ばかり。頭ごなしに殴っても良いと思っているのだろう。 だが、人間はそういうものなのだろう。 僕は死刑制度を否定することも肯定することもできない。考えても分からない。 肯定していた時期があったが、それは無関心による無知だった。 今は、分からない。 欠落を、傷を舐めるように寄り添い共に歩む。必ずしも慰めは惨めではない。 部屋に窓はないが、薄ら空が明るくなっていくのを感じるような小説。 その日は多分晴れではない。だが、雨は降っていないだろう。

Posted by ブクログ

2026/02/24

なんて身勝手な!なんて思ってしまう。それは、山井も自覚している。 真下のノート、山井の手紙、主人公の暗い感情。なんだか全部共感してしまった。私は、自制が効くだけで、それはいつ切れてしまうかわからない不安もある。 重たい内容だけど、また読みたい。タイトルの通り、憂鬱な夜に。

Posted by ブクログ