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ティンブクトゥ 新潮文庫
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商品詳細
| 内容紹介 | |
|---|---|
| 販売会社/発売会社 | 新潮社 |
| 発売年月日 | 2010/06/28 |
| JAN | 9784102451137 |
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ティンブクトゥ
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ティンブクトゥ
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商品レビュー
3.8
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言葉が分かる犬ミスター・ボーンズと、死を前にした詩人ウイリーが旅する。目ざすのは来世、無限の無の国。 ミスター・ボーンズは知っていた。ウィリーはもはや、先行き長くない。 書き出しからウィリーは病んでいる。精神と肉体が究極まで侵され生きていく見込みがない。犬のミスター・ボーンズは...
言葉が分かる犬ミスター・ボーンズと、死を前にした詩人ウイリーが旅する。目ざすのは来世、無限の無の国。 ミスター・ボーンズは知っていた。ウィリーはもはや、先行き長くない。 書き出しからウィリーは病んでいる。精神と肉体が究極まで侵され生きていく見込みがない。犬のミスター・ボーンズはウィリーがそうして次第に消滅していくのをどうすることも出来ず、恐怖と絶望の中でじりじりしている。 犬と人の愛情交換物語のようだが、そこには、人間の言葉が理解できるようになった犬と、放浪の果てに死んでいく人間の、別れを前にして、深い哀惜とどうしようもない孤独感が書かれている。ウィリーの病的な饒舌と長広舌を聞きながら、ミスター・ボーンズは深くウイリーを理解する。長い過去も未来も同じように短く感じられ、わずかしか残っていないことをお互いに知っている。 オースターの定番のような放浪する詩人の人生に今回は連れ添う犬がいる。 父が死に、敵の様な関係の母親から逃れて、薬や酒におぼれ自分を見失っていたとき、夜中にTVで見たサンタクロースから啓示を受け、自分にクリスマスという名前を付け加え善意の人に変わろうとしてきた。しかし、時の流れは彼を蝕み、父親の遺産も、母の保険金も瞬く間に善行の陰に消える。 彼はボディーガードの必要を感じ仔犬のボーンズを相棒にする。 かって彼の書いたものを誉めてくれた先生のいるボルチモアに向かう旅に出る。極貧生活でも、ボーンズは頭を撫でてくれ温かい腕の中で丸まって眠る生活はこの上ない幸せだった。 ウイリーは絶え間なく話し続け、ボーンズはそれを聞きながら、寄り添って歩き続ける。 ティンブクトゥ。来世。それは人が死んだら行く場所だ。現世の地図が終わるところからティンブクトゥの地図は始まる。砂と熱からなる巨大な王国永遠の無が広がる地を越えていかねばならないらしい。ウィリーの話をミスター・ボーンズは疑わなかった。 死ねば一瞬にしてあっちに行きついてしまうのさ、とウイリーはいった。宇宙と一体になって神の脳内におさまった反物質のかけらになるのさ。 ミスター・ボーンズは一言も疑わず、ウィリーの息が絶えそうになった時、夢で彼に付き添う目覚めてまだ彼の体が暖かいことを知っても、もう夢で見たことが現実であることを疑わない。 このあたり、ミスター・ボーンズの見た夢と現実がどう重なっているのか、犬と設定したことで、その境界が明瞭でないのも何か筋が通る気がする。 それよりも死を前にしてのウイリーの絶え間ない話がオースターの真骨頂といえる。比喩はもとより、同義語、同音異語、言い伝え、故事、物語の引用、様々な言葉の奔流がミスター・ボーンズの上に降ってくる。彼はじっとその狂想曲を聞いている。 それは読者にとっても興味深い話で、例え脈絡が乱れたり意味が飛んだり刎ねたりしながらであっても、その意味するところは、ウイリーが死ぬまでまで詩人であろうとした、作家になろうとして迷い込んだ言葉の茂みの中から、最後にふりしぼって語りかける一言一言を感じる。 もしその言葉の底や裏にある思いまで感じることが出来る聞き手であれば、それは聞くことの極意でありミスター・ボーンズが、理解できても話すことが出来ない設定もうなずける、愛情に溢れた聞き手であってこそ、空虚な言葉を吐き散らす現代人とは違う重さを感じ取っているのではないかと思われる。 ウイリーと別れてから旅をする後の話は、ややありきたりでボーンズという一匹の犬らしい体験で、彼はついに犬以外の何者でもないその境遇から逃げ出す。 求められていると感じるだけでは犬の幸福はなりたたない。自分は欠かせないという気持が要なのだ。 ウイリーの元に向かって走るミスター・ボーンズの現世の姿は鮮やかだ。 詩人の体は言葉でできている、それを全て吐き出してからテンプクトゥにたどり着くのかもしれない。 こうしてオースターを読むことがやめられない。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
放浪するホームレス詩人ウィリーと、彼の余命を知ってひとりぼっちになることを恐れる忠犬ミスター・ボーンズの物語。設定はやや悲惨ながらも、ホームレスであるが故の自由と犬の自由が噛み合っていて、決して裕福な生活ではないにしろ唯一無二の相棒となっているのが面白い。時折フラッシュフォワードとして挟まる夢や幻覚により人語で主人と会話したり少し先の未来を予知するなどの展開も文学的な面白みがあり、音楽的かつテンポのいい文章と相まって地に足がつきそうでつかない独特の雰囲気を醸し出している。 物語はウィリーの死で第一部・完という感じであり、そこからの野良犬としての遍歴や人との出会いなどは胸が詰まる場面が多いながらもいずれもドラマティックであり、作中でも言及されている通り、資本主義に背を向けたホームレスの詩人の元から、最終的に理想的なアメリカ夫婦の元に身を寄せるという展開きよって、犬の視点を通しての格差と階層による分断と、以前の主人が全て正しいわけではなく、道を誤ったことに対しての哀れみなどを描いた点は凄まじいとさえ思う。 他の作品、例えば『ブルックリン・フォリーズ』でもそうなのだが、ポール・オースターは孤独と偶然性の人であり、そこに物語的な救済や定型は存在しない。それ故に落ちるべき所に落ちない不安感が彷徨う野良犬の孤独感とガッチリ噛み合い、読み手として不安になると同時に、幸せな家族に貰われて過ごすことで安易にハッピーエンドとして幕を閉じることもない。最後のライトが光り、多数の車が行き交う車道に飛び出すというのは一見すると自殺的な悲劇でありながらも、犬視点だと人間社会へのチャレンジであり、作中で一度そのことによる恐怖を描いたからこそ、老いた犬が若い時を思い出す「抗い」なのである。コートを分断するネットの上のテニスボールの如く博打的に偶然性に身を委ね、結果不幸が訪れたとしても、ウィリーのいる「ティンブクトゥ」に行けるという塩梅の話の落し方には舌を巻いてしまった。
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夢と現実がリアルに入れ替わる話。ポール・オースターで一二を争う好きな作品かというとそうではないけど、ところどころクスッとさせられ、過度に感傷的にもならない良い作品だと思いました。英語で読めたらもっと違う感想になるのかも。 最後は夢だったのか現実なのか。
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