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ティンブクトゥ の商品レビュー

3.8

32件のお客様レビュー

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2024/08/17

夢と現実がリアルに入れ替わる話。ポール・オースターで一二を争う好きな作品かというとそうではないけど、ところどころクスッとさせられ、過度に感傷的にもならない良い作品だと思いました。英語で読めたらもっと違う感想になるのかも。 最後は夢だったのか現実なのか。

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2022/09/04

ペットと主人の絆を“人語を理解する老犬”の一人称視点で描く著者随一の異色作。延々続くMr.ボーンズの思索と全十五頁にも亘るウィリーの語りが炸裂する前半戦は(私的に)オースター作品屈指の難関で、読み進めるのに苦戦したが、後半戦は一気に拓けた展開へ突入していく。従来の様なストーリーテ...

ペットと主人の絆を“人語を理解する老犬”の一人称視点で描く著者随一の異色作。延々続くMr.ボーンズの思索と全十五頁にも亘るウィリーの語りが炸裂する前半戦は(私的に)オースター作品屈指の難関で、読み進めるのに苦戦したが、後半戦は一気に拓けた展開へ突入していく。従来の様なストーリーテリングの技巧は形を潜めている印象だが、犬視点で紡がれる現世の苦難は読者を作品世界へ誘う牽引力を持っている。悲愴的…否、悲壮的なラストシーンは正に氏の真骨頂と言えるのでは。約束の地<ティンブクトゥ>で二人が再び出逢えるのを祈って―。

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2022/08/07

犬を通して、人間を脱構築し、生物にとって、帰るべき思い出を持つことがいかに大切かを物語っている。生きることはときに過酷であるゆえに。

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2021/02/11

視点が斬新で面白い。終始犬の目線で語られている。犬が主人公と言っても可愛らしく癒されるような話ではなく、人生ならぬ犬生についてかなり考えさせられるものだった。また、著者の想像力には驚かされた。エンディングは少し寂しい。代表作とも言われる「ムーン・パレス」 も読んでみよう。訳者柴田...

視点が斬新で面白い。終始犬の目線で語られている。犬が主人公と言っても可愛らしく癒されるような話ではなく、人生ならぬ犬生についてかなり考えさせられるものだった。また、著者の想像力には驚かされた。エンディングは少し寂しい。代表作とも言われる「ムーン・パレス」 も読んでみよう。訳者柴田さんのあとがきも良い。

Posted byブクログ

2019/12/30

ミスター・ボーンズは知っていた。ウィリーはもはや、先行き長くない。 書き出しからウィリーは病んでいる。精神と肉体が究極まで侵され生きていく見込みがない。犬のミスター・ボーンズはウィリーがそうして次第に消滅していくことをどうすることも出来ず、恐怖と絶望の中でじりじりしている。 ...

ミスター・ボーンズは知っていた。ウィリーはもはや、先行き長くない。 書き出しからウィリーは病んでいる。精神と肉体が究極まで侵され生きていく見込みがない。犬のミスター・ボーンズはウィリーがそうして次第に消滅していくことをどうすることも出来ず、恐怖と絶望の中でじりじりしている。 犬と人の愛情交換物語のようだが、そこには、人間の言葉が理解できるようになった犬と、放浪の果てに死んでいく人間の、別れを前にして深い哀惜と、どうしようもない孤独感が書かれている。ウィリーの病的な饒舌と長広舌を聞きながら、ミスター・ボーンズは深くウイリーを理解する。長い過去も未来が同じように短く感じられ、わずかしか残っていないことをお互いに知っている。 オースターの定番のような放浪する詩人の人生に今回は連れ添う犬がいる。 父は死に敵の様な関係の母親から逃れて、薬や酒のおぼれ自分を見失っていたとき、夜中にTVで見たサンタクロースから啓示を受け、クリスマスという名前を付け加えた善意の人に代わろうとする。しかし、時の流れは彼を蝕み、父親の遺産も、母の保険金も瞬く間に善行の陰に消える。 彼はボディーガードの必要を感じ仔犬のボーンズを相棒にする。 かって彼の書いたものを誉めてくれた先生のいるボルチモアに向かう旅に出る。極貧生活でも、ボーンズは頭を撫でてくれ温かい腕の中で丸まって眠る生活はこの上ない幸せだった。 ウイリーは絶え間なく話しボーンズはそれを聞きながら、歩き続ける。 ティンブクトゥ。 来世。それは人が死んだら行く場所だ。この世界の地図が終わるところでティンブクトゥの地図は始まる。砂と熱からなる巨大な王国永遠の無我広がる地を越えていかねばならないらしい。ウィリーの話をミスター・ボーンズは疑わなかった。 死ねば一瞬にしてあっちに行きついてしまうのさとウイリーはいった。宇宙と一体になって神の脳内におさまった反物質のかけらになるのさ。 ミスター・ボーンズは一言も疑わず、ウィリーの生きが絶えそうになった時夢で彼に付き添う、目覚めてまだ彼のからだが暖かいことを知っても、もう夢で見たことが現実であることを疑わない。 このあたり、ミスター・ボーンズの見た夢と現実がどう重なっているのか、犬と設定したことで、その境界が明瞭でないのも何か筋が通る気がする。 それよりも死を前にしてのウイリーの絶え間ない話がオースターの真骨頂といえる。比喩はもとより、同義語、同音異語、言い伝え、引用、様々な言葉の奔流がミスター・ボーンズの上に降ってくる。彼はじっとその狂想曲を聞いている。 それは読者にとっても興味深い話で、例え脈絡が乱れたり意味が飛んだり刎ねたりしながらであっても、その意味するところは、ウイリーが死ぬまでまで詩人であろうとした、作家になろうとして迷い込んだ言葉に茂みの中から、最後にふりしぼって語りかける一言一言の深さを感じる。 もしその語らない言葉の底や裏にある思いを感じることが出来る聞き手であれば、それは聞くことの極意でありミスター・ボーンズが、理解できても話すことが出来ない設定もうなずける、愛情に溢れた聞き手であってこそ、空虚な言葉を吐き散らす現代人とは違う重さを感じ取っているのではないかと思われる。 ウイリーと別れて旅する後の話は、ややありきたりの犬らしい体験で、ついに犬以外の何者でもない境遇から逃げ出しす。 求められていると感じるだけでは犬の幸福はなりたたない。自分は欠かせないと言う気持が必要なのだ。 ウイリーの元に向かって走るミスター・ボーンズの姿は鮮やかだ。 こうしてオースターを読むことがやめられない。

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2019/01/05

この本の惹句に「犬と飼い主の最高の物語」とあるが、単なる犬を主人公にした小説ではない。犬のミスター・ボーンズは高い知能を持っているが、犬という形に生まれたことで制約を受けている。一方、飼い主のウィリーは文学について高い志をもってはいるものの、人間として重要なものが欠落している。つ...

この本の惹句に「犬と飼い主の最高の物語」とあるが、単なる犬を主人公にした小説ではない。犬のミスター・ボーンズは高い知能を持っているが、犬という形に生まれたことで制約を受けている。一方、飼い主のウィリーは文学について高い志をもってはいるものの、人間として重要なものが欠落している。つまり、これは人間の頭脳と知性を持った犬と、犬の脳みそしかない人間の話なのではないか。そんな思いを抱きつつ読み進めると、いろいろなことが腑に落ちる。犬の呼称に「ミスター」が付いているのもそのひとつ。 『リヴァイアサン』では読者の想像をかきたてる部分が今ひとつだったが、この『ティンブクトゥ』では見事にかきたててくれた。これまで読んだオースター作品の中では『偶然の音楽』がベストと思っていたが、本書もそれに匹敵する。

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2018/01/04

 久々に読むポール・オースター。  紆余曲折の人生を歩んできた詩人のウィリーと、その飼い犬ミスター・ボーンズの物語。  ミスター・ボーンズ目線で物語は進む。  物語の大半は飼い主ウィリーが亡くなった後、犬であるミスター・ボーンズがどのような思考、どのような態度、どのような志...

 久々に読むポール・オースター。  紆余曲折の人生を歩んできた詩人のウィリーと、その飼い犬ミスター・ボーンズの物語。  ミスター・ボーンズ目線で物語は進む。  物語の大半は飼い主ウィリーが亡くなった後、犬であるミスター・ボーンズがどのような思考、どのような態度、どのような志でこの世を生き残ろうとし、記憶と夢の狭間でどのような世界に導かれ、どのような結末を迎えるのかが描かれている。  淡々としているようであり、いつものポール・オースターらしく哲学的、論理的でもあり、余計な感傷はそぎ落とされているのだけれど、知らぬ間に心の琴線に触れてしまう物語である。  犬好きでなくても、たまらない魅力を持った作品だと思う。  悲しい物語と捉えることもできるが、たまらなく幸せな犬の物語だと捉えることも出来ると思う。

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2017/08/09

淡々と書いてあるけど、感傷的にならずに読めるわけもなく、この終わり方もまた、私にはきつい。 犬といつも一緒に行動出来ない人間としては、安閑とは読めないラストシーンだった。 小説は仕方が無いとは思うけど、当たり前の変哲のない犬の生活語ったものって、無いのかしらん

Posted byブクログ

2017/01/04

飼い主ウィリーとの絆に泣き、壮絶なミスターボーンの犬生に最後涙してしまう。 なんでこんなに犬の気持ちがわかるのだろう、ポールオースターという人は。 いや理解しているわけではないのかも知れないが、犬のあんな行動やこんな行動は本当にこんな想いの表れなのかもしれないと思ってしまう。 し...

飼い主ウィリーとの絆に泣き、壮絶なミスターボーンの犬生に最後涙してしまう。 なんでこんなに犬の気持ちがわかるのだろう、ポールオースターという人は。 いや理解しているわけではないのかも知れないが、犬のあんな行動やこんな行動は本当にこんな想いの表れなのかもしれないと思ってしまう。 しんみり、ほっこりしてちょっと切ない犬ストーリー。

Posted byブクログ

2018/09/26
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 詩人である飼い主ウィリーの死を目前に、賢い犬のミスター・ボーンズは回想する。そして彼の死後、新たな飼い主を求めて彷徨い歩く物語。ミスター・ボーンズの聡明な視線、人を信じる気持ちが、とても強くて美しい。最後は愛するウィリーの待つティンブクトゥにいけたと信じたい。  オースターと云えばミステリ小説の要素があるイメージだったが、そういう意味では異色の本作。しかし、哲学的な観念は健在。

Posted byブクログ