1,800円以上の注文で送料無料

大聖堂 村上春樹翻訳ライブラリー
  • 新品
  • 書籍
  • 新書
  • 1227-06-02

大聖堂 村上春樹翻訳ライブラリー

レイモンド・カーヴァー(著者), 村上春樹(著者)

追加する に追加する

大聖堂 村上春樹翻訳ライブラリー

1,650

獲得ポイント15P

在庫あり

発送時期 1~5日以内に発送

商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 中央公論新社
発売年月日 2007/03/10
JAN 9784124035025

商品レビュー

4.4

59件のお客様レビュー

レビューを投稿

2025/09/21

実に久しぶりの翻訳本。村上春樹さん訳なので、文体は違和感なく読めた。 空気感は好みだったが、どの作品も少し重い。カーヴァーってこういう作風なのね… 中でも「ささやかだけれど、役に立つこと」は有名だが、どうにもやりきれない思いが残った。 最後に春樹さんの寸評のような解説があり、それ...

実に久しぶりの翻訳本。村上春樹さん訳なので、文体は違和感なく読めた。 空気感は好みだったが、どの作品も少し重い。カーヴァーってこういう作風なのね… 中でも「ささやかだけれど、役に立つこと」は有名だが、どうにもやりきれない思いが残った。 最後に春樹さんの寸評のような解説があり、それも面白いです。

Posted by ブクログ

2025/08/25

ピンとこない作品も多かったなと本を閉じようとするところに、作品全体を腑に落としてくれる、さすがに良い解題だった。「ささやかだけれど、役にたつこと」「大聖堂」が好きだった。「大聖堂」で大聖堂を描写するせりふを読みながら、もうちょっとイメージを具体化しようかなと検索しようとして、なん...

ピンとこない作品も多かったなと本を閉じようとするところに、作品全体を腑に落としてくれる、さすがに良い解題だった。「ささやかだけれど、役にたつこと」「大聖堂」が好きだった。「大聖堂」で大聖堂を描写するせりふを読みながら、もうちょっとイメージを具体化しようかなと検索しようとして、なんとなくやめた。結果的にはそれが良い読書体験になった。解題の「理性的なレベルで盲人に同情的な妻には理解することのできない、まさにフィジカルな痛みであり実感である」と、言い切る説明に衝撃をうけた。一方で夫は差別的な人間として描写されているが、ついには一段深い部分で盲人の世界を理解する。横に並んで、同じ目線で話すことこそが理解なのだと、つよく訴える珠玉の短編だった。

Posted by ブクログ

2025/05/25
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

村上春樹氏の言葉を借りれば、「アメリカのfailure」を描いた短編集。重たい物語の中に、人間らしさ・優しさを含んでいる。 個人的にベストは、「コンパートメント」、「ぼくが電話をかけている場所」、「列車」、「大聖堂」。 ○羽根 友人宅での夕食に招かれた夫婦の物語。醜い赤ちゃん・孔雀・歯型などの様々な要素を使いつつ、夫婦生活のターニングポイントとなった一晩をユーモアたっぷりに描く。バドとの友情は変わらないものの、妻や息子との家族関係がうまくいってないラストが切ない。 ○シェフの家 旦那がアル中を克服し、よりを戻した夫婦が無料で借りていた家を追い出される話。毎週火曜日は映画に行ったりと、ふたりが過ごす幸せな時間の描き方がとてもよかった。ラストは、「今夜はあるものをたいらげてしまおう」が暗示しているように、ドカ食いしたのかな? ○保存されたもの 夫がソファーでぐーたらしてる描写にとても共感した。自分も無職だった期間は、ひたすらソファーで本を読んでいたから。でもやっぱり、ヒモになるのは夫婦双方をダメにするんだと考えさせられる。かなり暗い作品だった。 ○コンパートメント 中年男が、息子に会いにフランス(ヨーロッパ)を旅する話。とにかく孤独で、愛を知らない中年男の絶望的な物語。自分もヨーロッパを旅した際に、イタリアの鉄道でリュックを盗まれたので、主人公にとても感情移入してしまった。 ○ささやかだけれど、役にたつこと 不慮の事故で息子を失い、絶望の底へ落とされる夫婦の物語。最後は「愛を知らない」パン屋と「愛を失った」夫婦の交流が描かれ、『太陽の白っぽい光が窓の高みに射した。』ことで、絶望の中にわずかに光が差し込む終わり方となっている。その次のセンテンス『でも二人は席を立とうと思わなかった。』の余韻が凄い。 ○ビタミン ビタミンを売る妻と、酒をひたすら飲んでいる病院の雑用係の夫。夫は妻の同僚と浮気をしようとするが、ベトナム帰りの黒人にデートをめちゃくちゃにされてしまう。1960年代〜70年代のアメリカン・ニューシネマの雰囲気が作品全体に漂っている。 ○注意深く 別居中のアル中夫のところへ妻が離婚話をしに来るものの、夫の耳が耳垢のせいで聞こえにくく、たいした話もできずに妻が帰ってしまう話。ふたりでなんとか耳垢を取り出すことに成功するものの、本題については全く話すことができず、微妙にすれ違う夫婦関係の描き方がいかにもカーヴァーらしい。 ○ぼくが電話をかけている場所 解題で村上春樹がいっているように、アル中療養所の友人・JPが語る過去の話がとにかく素晴らしい。井戸から空を見上げた経験、妻と出会い煙突掃除人になった経験、そしてアル中地獄に堕ちていき、、それでも変わらないJPの妻への愛を目の当たりにして、主人公が自分も愛を取り戻そうとするラストが素晴らしい。 ○列車 駅の待合室に集まった「おそらく何か悪いことがあった」3人の様子を描いた後に、列車が到着してからそれぞれ個人の世界に戻っていく様子の描き方が見事。ラストの暗闇に包まれた田園の中を列車が走り抜ける様子は、まさしく人生を映し出している。かなり好みの作品。 ○熱 妻に駆け落ちされ、ひとりでこども二人を育てないといけなくなった美術教師の男の物語。紆余曲折を経て最高のベビーシッターを見つけるも、その人もまたどこかへ行ってしまう。儚い物語の中に、こどもの愛らしさや夫婦関係の難しさをしっかりと描いている。 ○轡 ミネソタからアリゾナに引っ越してきた4人家族を、アパート管理人の視点から描く作品。ひたむきに生きる「アメリカの幻想のfailure」が描かれる。語り手であるアパート管理人の眼差しが優しい。ラストで四人家族が部屋を綺麗にして退去している点が、この物語の切なさを際立たせている。 ○大聖堂 冴えない男と、その妻の友人の盲人との交流を描く表題作。酒やマリファナを通じて、二人が少しずつ心を通わせていく描写がとても丁寧で、非常に心地いい。男が目を閉じて、盲人とふたりで大聖堂の絵を描くラストが素晴らしすぎる。まさしくマスターピース。

Posted by ブクログ