商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 岩波書店 |
発売年月日 | 1986/06/01 |
JAN | 9784003105535 |
- 書籍
- 文庫
吉野葛・蘆刈
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吉野葛・蘆刈
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商品レビュー
3.6
15件のお客様レビュー
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蘆刈: 前半部までは何のはなしかとおもった。中盤で茂みから突然男が現れて以降、彼が回想形式で話を進める。ここには何の企みもないと思われたが、男の登場のあまりの突然さに、私の意識は一気にその男に注がれたのであった。そしてその意識を優しく押し流すように彼が物語を進行させていくのだった。最後までとても読みやすかった。 谷崎の織りなす回想形式の物語展開はとても巧みである。不自然に感じられる行動であっても、そこは登場人物の心理描写で丁寧に補われている。似たような話のつくりである春琴抄も、読後に実際にあった話を聞かされたように感じるが本作もまさにそうであった。 作中の男は他の作品に見られるように愛する女性に夢中で女性の奔放さに操縦されるようなときがある。それでも決して彼のプライドは痛まない。むしろその女性の意向が尊重されることがそのまま彼の幸福であるという振る舞いをする。ここも春琴抄と似ていると思った。 生身の身体の交わり最後まではっきりと描かれることはない。それがあったという示唆のみである。複数の男女の間柄が中心となった物語では、その瞬間をいつかいつかと待ってしまうところが私にはあるが、最後までそれが現れないことで物語は一段と美しく昇華する。
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物語の前半はどちらも随筆みたいな調子で続き、後半くらいになって突然物語になる。しかもどちらも主人公「私」が出会った人の独白で、物語が入れ子になっている。 『蘆刈』に至っては後半からいきなり『卍』みたいになり、思わずにやけてしまった。
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吉野山を訪れ、その歴史を調べてるうちに谷崎潤一郎の「吉野葛」に行き当たった。 作者は友人と自天王の足跡をたどり歴史小説を書くために吉野山へ訪れた。能の二人静に現れる菜摘川や妹背山婦女庭訓の妹背山を眺めながら道を行く。吉野の村には義経千本桜の「初音の鼓」が伝わっているというので、鼓を見に。友人は初音の鼓の狐忠信を引き合いに出し、自らも母と幼い頃に死別し母の面影を探しているのであるという。唯一の記憶が「狐噲」を上品な婦人が箏で弾いている情景であるという。 作者は引き続き資料を集めるため史跡や峡谷を歩いたものの資料負けし、友人は母の生家へ奉公に来ていた田舎娘の指先に「初音の鼓」を見、はたして嫁に迎えたのであった。
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