一七世紀科学革命 ヨーロッパ史入門

ジョンヘンリー(著者), 東慎一郎(訳者)

• 販売会社／発売会社: 岩波書店/岩波書店
• 発売年月日: 2005/05/30
• JAN: 9784000270953

商品レビュー

2025/02/12

科学革命の定義と時期
- 科学革命の定義: 科学革命は、ヨーロッパ史において近代科学の概念的、方法論的、制度的な基礎が確立された時期を指す。
- 時期の異論: 科学史家によって異なる見解があるが、中心的な時期は17世紀とされ、16世紀は準備の時期、18世紀は成果の整理と定着の時期とされる。

科学革命の本質と議論
- 本質の多様性: 科学革命の本質、起源、原因、主たる議論のあり方、結果についての見方は研究者によって分かれる。
- 歴史家の概念: 科学革命は歴史家による概念的枠組みであり、その現実に根拠があることを強調。

自然哲学と科学
- 自然哲学の変遷: 科学革命を通じて自然哲学が大きく変貌し、現在の科学に近い形へと進化した。
- 用語の混同: 「自然哲学」と「科学」は同義として使われることがあり、両者は自然界を理解し描写する営みを指す。

歴史的コンテキストの重要性
- ホイッグ主義の回避: 歴史家はホイッグ主義を持ち込まず、当時のコンテキストを理解する努力が必要。
- ガリレオの反応: 例えば、ガリレオの「星界の報告」に対する同時代の反応を理解するためには、当時の天文学や宇宙論の議論に精通する必要がある。

科学的方法の進化
- コペルニクス理論の受容: 1600年以前には、コペルニクス理論を自然学的に真実と認めた思想家は限られていた。
- 数学の重要性: 天文学者は数学の認識論的地位に関心を持ち、自然哲学と数学の結びつきが重要視された。

ケプラーの貢献
- 惑星の軌道: ケプラーは惑星が太陽の周りを楕円軌道で運動することを発見し、その速度の変化についても説明を試みた。
- 新天文学: ケプラーは「新天文学」で、惑星の軌道が円形ではなく楕円である理由を探求し、物理的説明を行った。

ハーヴィーと生理学の発展
- 血液循環の発見: ハーヴィーは血液循環のメカニズムを解明し、動物の解剖を通じて新しい生理学を構築。
- パドヴァ大学の影響: パドヴァ大学での教育改革が生理学の発展に寄与し、ハーヴィーの研究に重要な役割を果たした。

魔術と科学の関係
- 魔術的伝統の影響: 科学革命において、魔術的伝統が新しい経験主義的自然哲学の形成に寄与した。
- 自然哲学と実験: 伝統的な自然哲学に代わり、経験や観察に基づく方法論が台頭。

ベイコン主義と実験哲学
- 実験の重要性: ベイコンは観察や実験に基づく知識の獲得を重視し、実験哲学の基礎を築いた。
- 社会的背景: ベイコンの考え方が、専制国家体制において自然哲学が公共の福祉に貢献するものと見なされていた。

科学と文化の相関
- 科学の社会的役割: 科学革命期における自然哲学者の活動が、社会秩序や文化にどのように影響を与えたかが重要なテーマ。
- 機械論的世界観: イギリスでの時計製造が、社会秩序や自然に対する新しい見方を反映している。

結論
- 歴史研究の重要性: 科学の歴史を研究する際には、当時の文化的背景や思想が無視できない要素であることを強調。
- 現代科学への洞察: 過去の科学観の理解が、現代の科学の状況を客観的に理解し、異なる可能性を考える契機となる。

2015/10/03

社会学の視点で「科学革命」を読み解こうとする試みではあるが、著者の社会学の知識不足は否めない。トーマス・クーンの著書と併せて読むことをおすすめする。

2012/03/16

最初、文体に慣れるのが大変だったが、乗り越えるととても面白かった。300近い文献の数でしっかり支えられていてとても緻密。
特に第４章は興味深い。科学と思想及び宗教の密接な関わり合いは、とても勉強になった。