商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 新曜社 |
発売年月日 | 2004/03/10 |
JAN | 9784788508873 |
- 書籍
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戦争が遺したもの
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戦争が遺したもの
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商品レビュー
4.4
21件のお客様レビュー
鶴見俊輔を読んでいると、はなはだしく矛盾をはらんだ表現になるが「純朴などす黒さ」とでも呼ぶべき鶴見の思考の生理の性格に思わず惹かれていくのを感じる。本書でも、特に上野千鶴子の鋭い問いや疑念にきわめて明晰かつ誠実に答える鶴見の言葉、そして仁義を重んじる態度が持つある種の「人間臭さ」...
鶴見俊輔を読んでいると、はなはだしく矛盾をはらんだ表現になるが「純朴などす黒さ」とでも呼ぶべき鶴見の思考の生理の性格に思わず惹かれていくのを感じる。本書でも、特に上野千鶴子の鋭い問いや疑念にきわめて明晰かつ誠実に答える鶴見の言葉、そして仁義を重んじる態度が持つある種の「人間臭さ」に惚れ直す(だが、それはもちろん「思考停止」「なあなあ」に堕す危険もはらんでいよう。ぼくも彼らを見習わないといけない)。事実を確認するというよりは、そうした洗い出しを通して本書はそうした鶴見の思考術・哲学を問い直す1冊とぼくは読む
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※このレビューにはネタバレを含みます
対談というと、大抵話者の言いたい内容が散逸し、やっぱり単著を読めばよかったとがっかりすることが私よくあります。 本作はどうかというと、かなり良かったのです。むしろ、雑談や話が逸れてしまうことをその価値としているように感じました。 ・・・ 本作は上野千鶴子氏(元東大教授)と小熊英二氏(慶大教授)が、昭和の知識人たる鶴見俊輔氏を三日に渡り囲み、彼の辿った昭和を振り返るという対談集です。 鶴見氏というと、戦中にハーバードを卒業しプラグマティズムを日本へ紹介したことで有名であります。またベ平連を率いていたということでも名前を見たりもします。京大、同志社大、東工大で教職に就かれていた経験もおありです。 そんな彼が、どのように戦前、戦中、戦後を過ごしてきたのか、米国で収容所へ入れられたとき、交換船で日本へ戻ってきたとき、徴兵されてジャカルタへ派遣されていたとき、同人を作り雑誌を発行していたとき、ベ平連を組織していたとき、どのように思い、どのように感じていたのかをつぶさに聞き取りされています。 ・・・ で、鶴見氏の幼少期から青年期の母親との関係のこじらせ方は結構ぶっ飛んでいて面白かったです。また女性との関係の取り方も頑固というか、もうおかしいんじゃないかこの人、というくらい偏っていて、色々な意味ですごい人がいるのだなあと感心した次第です。 また、彼の目を通じて語られる都留重人、丸山眞男、小田実、吉本隆明らの発言や思い、鶴見氏から見た印象は、モノクロの戦後混乱期や学生運動の様子を、あたかもカラーで見ているかのようなビビッドさを読者に感じさせるものでした。 ・・・ でも、それらを超えて目から鱗が落ちる思いだったのは、「トータルヒストリー」という考え方です。 対談二日目の夜ご飯時の雑談でこの話題が出ています。曰く、「公」のみならず「私」を含めてやっと十全な歴史が成り立つ、という考え方です。 例えば鶴見氏をとらえるとき、その「公」的な学歴や職歴だけを見ると、氏の人となりはおそらく数分の一しか伝わらないと思います。でもこのようなざっくばらんな対談集を読むと、相当な奇人(貴人)であることが分かります。これらを含めて新たな鶴見氏の像が立ち上がってくるわけです。 そういうこともあり、本書は裏話などの「私」の部分であふれている昭和史であると言えます。 ・・・ そう考えますと、歴史というのは実に表面的な内容しか残らないものだと感じます。誰が、どうした・何した、だけしか伝わらないと。 ところが、実は、「どうして」、という部分の方が人は良く興味を持つのかもしれません。そしてその「どうして」が往々にして後世に伝わらない。どうして戦いを敢行したのか、どうしてその結婚をしたのか、どうして約束を破ったのか。等々。 だからこそ歴史ドラマでは新たな解釈も生まれ、現代人が過去に思いを馳せることができるのかもしれません。 歴史というと、一つの固定的な事実のようにも思えますが、「公」的な内容をまとめるだけでやっと半分、しかもその「公」の部分であっても、まとめる人のポジショニングにより歴史はその形を変えると言えます。むしろ歴史は、縁取りした水泡のごとく、常に大きくなったり小さくなったり、その姿を変えつつ、展開しているといっても良いかもしれません。 ふと、以前読んだ息子の中学国語の教科書を思い出しました。インターネットとSNSの価値を論じるお話が載っていたのです。曰く、大衆のその都度都度の記録が残ることがSNSの大きな価値の一つだ、という内容だったと思います。読んだ当時は、ブログとかSNSとか、よくもまあそんなものに価値があるといえるなあと思ったのですが、トータルヒストリーという考え方を知ると、その記録は、歴史の「私」の部分を充実させる貴重な手がかりになりうると、すかさず翻意した次第です。 (もちろん、どうやったってすべての内容は知りえないという不可知論もあろうかと思いますがそれは擱いておきます) ・・・ ということで昭和現代史を「私」的に振り返る作品でした。トータルヒストリーという考え方にえらく共感したと同時に、著者のお三方に一層興味を持った読書でありました。 昭和戦後史、歴史学、社会学等に興味のある方には楽しく読んでいただけると思います。
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感想 戦争の知識を試験の道具としか見ていない私達の世代。当事者の話を聞き血を流し込まないと塵の如く流される。次に起こることを厳しく見張りたい。
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