

商品詳細
内容紹介 | 内容:すべてのものに季節がある. 二度目の春. 冬の犬. 完璧なる調和. 鳥が太陽を運んでくるように. 幻影. 島. クリアランス |
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販売会社/発売会社 | 新潮社/ |
発売年月日 | 2004/01/30 |
JAN | 9784105900373 |
- 書籍
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冬の犬
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冬の犬
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商品レビュー
4.5
37件のお客様レビュー
カナダ生まれの作家。著者は、スコットランド高地からの移民が多く住む、カナダの東端ケープ・ブレトン島で育ち、そこでの生活体験を元に書かれた短篇は、ときにエッセイではないかと勘違いしたくらい事細かく描写されていましたが、おそらく翻訳もさることながら、元の文章もいいのでしょうね。それで...
カナダ生まれの作家。著者は、スコットランド高地からの移民が多く住む、カナダの東端ケープ・ブレトン島で育ち、そこでの生活体験を元に書かれた短篇は、ときにエッセイではないかと勘違いしたくらい事細かく描写されていましたが、おそらく翻訳もさることながら、元の文章もいいのでしょうね。それでも『二度目の春』は、読者を置いてけぼりにするくらいの細かさで、おそらくジェイムズ・リーバンクス『羊飼いの暮らし』(これはスコットランドのノンフィクション)みたいな文章を書きたかったんだろうなとふと脳裏をよぎったりしましたが。 それにしても、繁殖だの交尾だの射精や精液がどうのとか……ほとんどの短篇が、そこまで書かなくてもいいのにと思わされ、『完璧なる調和』や『島』のようないい話しが書かれていても、誰にもおすすめできないなと思いました。ただ、先頭の『すべてのものに季節がある』は、そのような描写もなく内容もよく考えられて書かれており、おそらく今後クリスマスが近づくたびに思い出すかもしれない名作。あと、タイトル作『冬の犬』は情景が目の前に思い浮かぶような筆力で書かれた名作だと思いますが、犬好きの人にはおすすめしづらいかな。 ところで、この短篇集は著者が残した短篇16作のうち、後半に書かれた8篇で、前半の8篇は『灰色の輝ける贈り物』に収録されているようですが絶版ですね。繋がりはないようですが、機会があれば読んでみたいです。 収録短篇: すべてのものに季節がある 二度目の春 冬の犬 完璧なる調和 鳥が太陽を運んでくるように 幻影 島 クリアランス
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舞台はカナダの東端にあるケープブレトンという島で暮らす人々をえがいた短編集。 感動された、元気付けられた、というハッキリとした感情ではなく、「美しい」という言葉だけが出てくるような、なんとも言えない感情にさせられた素晴らしい作品です。 島で暮らす登場人物たちの孤独や虚しさが描か...
舞台はカナダの東端にあるケープブレトンという島で暮らす人々をえがいた短編集。 感動された、元気付けられた、というハッキリとした感情ではなく、「美しい」という言葉だけが出てくるような、なんとも言えない感情にさせられた素晴らしい作品です。 島で暮らす登場人物たちの孤独や虚しさが描かれている一方、極寒の自然や、動物たちの生き生きと動く描写が魅力的に表現され、物悲しさと自然の美しさに読んでる側が惹き込まれるように書かれています。時々自分も同じ世界観に入りたいと、思わせるような。 普段の生活ではなかなか聞く事のない世界だからこそ、何回も読んで、また時間空いて読み直して、噛み締めたい、理解したい。2回読んでもそう思わされる作品でした。
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冬の季節に、もう一度読もうと決めていた。凛としたマクラウドの文章に相応しい気がして。 もちろん穏やかな関東の冬晴れは、カナダの凍える寒さとは比ぶべくもないのだけれども。 “当時のことについては、はまるで昨日のことのように懐かしく思い出される。それでも自分がどのくらい当時のままの...
冬の季節に、もう一度読もうと決めていた。凛としたマクラウドの文章に相応しい気がして。 もちろん穏やかな関東の冬晴れは、カナダの凍える寒さとは比ぶべくもないのだけれども。 “当時のことについては、はまるで昨日のことのように懐かしく思い出される。それでも自分がどのくらい当時のままの声で話し、どれくらいそれ以降の大人になった声で話すのか、よくわからない。クリスマスは過去と現在の両方が混在する時間であり、この二つはだいたい不完全に混じりあっているからだ。その時点での「現在」に足を踏み入れながら、大抵の場合、後ろを振りかえっているのである。” 『すべのものに季節がある』の冒頭に記されたこの言葉は、クリスマスに限らずマクラウドの短編のすべてに当てはまるだろう。 子供時代の思い出が、祖父母が暮らし父母が受け継いだ土地のにおいと景色が、ゲール語の歌に残る大西洋を隔てた遠いスコットランドハイランドの記憶が、そのすべてがありありと目に浮かび、季節と共に繰り返し繰り返し続いていくように思えながらも、時代は移ろいそのときには二度と戻ることは叶わないことが同時にわかっている 。 深い喪失の痛みが胸に沁みてくる。 ケープ・ブレトン島を舞台に描かれるのは牧歌的な理想郷の物語ではない。貧しく、過酷な労働の日々を誠実に生きる家族の暮らしそのものだ。 マクラウドは最後の語り部として、遠く離れた愛する故郷と、そこに生きる人々を書き記しておきたかったのだろう。 『クリアランス』で、変わりゆく時代に抗うではなくとも“俺たちは、こんなことになるために生まれてきたんじゃない”と呟きながら、遠きスコットランドの地でかつて出会った友の言葉を胸に、決然と一歩を踏み出す老人に湧き上がる誇り。 『完璧なる調和』で、金を得るために伝統を曲げた歌唱でコンサートステージに出ようとする一族の若い荒くれ者たちと対立しながら、一方で彼らの中にこそハイランダーの勇猛果敢な祖先の血が流れているとも感じる、伝承を尊ぶ最後の歌い手の胸に浮かぶ思い。 そして不意に放たれる“あのさ、俺たち、わかってるから。わかってる。みんなちゃんとわかってるから”という、言葉。 一つの時代は幕を下ろすとも、つながっていくものも確かにあるのだ。
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