商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 中央公論新社 |
発売年月日 | 2001/04/10 |
JAN | 9784121600042 |
- 書籍
- 新書
悲しき熱帯(1)
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悲しき熱帯(1)
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商品レビュー
3.9
52件のお客様レビュー
通勤電車の中で読もうとしたが、なかなか進まず。お盆休みで漸く読了。旅の話でない部分を噛みしめて読み進めていく書籍。
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50年近く前に読んだ本。正確には、室淳介訳の「悲しき南回帰線」を読んだ。 最近、なぜかレヴィ=ストロースがマイ・ブームなので、読み直したわけだが、驚くほど、内容を覚えていない。 以前に読んだのは、訳が分かりにくいと言われる「悲しき南回帰線」というヴァージョンで、旅行記感覚でわ...
50年近く前に読んだ本。正確には、室淳介訳の「悲しき南回帰線」を読んだ。 最近、なぜかレヴィ=ストロースがマイ・ブームなので、読み直したわけだが、驚くほど、内容を覚えていない。 以前に読んだのは、訳が分かりにくいと言われる「悲しき南回帰線」というヴァージョンで、旅行記感覚でわりとスラスラと読めた記憶があったのだが、今読むとわりと難しい。 かと言って、人類学についてそれなりに本を読んできたり、南アメリカのインディオの大量虐殺、そしてユダヤ系知識人のアメリカへの亡命など、背景情報はだいぶ詳しくなっているので、今の方がわかるはずなんだけど、どうしてだろう。。。。 多分、昔はブラジルでのフィールドワークの部分を中心に読んで、それ以外のところは流し読みしていたんだろうな。 この第1巻は、ブラジルでの調査は1つの部族のもので、それに続くものは第2巻となっている。第1巻は、レヴィ=ストロースが人類学者になる家庭とか、ブラジルへの船旅、ブラジルの都市(サン・パウロ)の印象、そして、アメリカに亡命する旅行などが主な内容。 が、これらは時系列になっておらず、アメリカへの亡命の船旅は第二時世界大戦中の話しで、ブラジルの大学への赴任や現地調査は30年代と時系列が入れ替わっている。また、ブラジルの話しがいつの間にか南アジアの話しになったりして頭が混乱してくる。 表現はわりと文学的な香りがあるが、だからといって読みやすいわけではない。 帯には「思想界に衝撃を与えた構造主義の原点」と書いてある。以前、読んだときの印象としては、構造主義というより、人類学的な旅行記というものであった。 しかしながら、今、読むと確かに構造主義的な発想で描かれているところも見えてきて、あながち帯のキャッチは嘘ではないことが分った。 だが、やはりそれ以上に、ブラジルで少数部族のフィールドワークをやっている時以外も、自分自身のストーリーも含めて、物事を人類学的に観察している冷めた視点が感じられた。 思ったより難しいけど、今、読み直してよかったと思う。 第2巻は、ブラジルでのフィールドワークの記述が中心なので、多分、もう少し読みやすくなっていることを期待したい。
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レヴィ=ストロースが百歳で没した五年前、哀悼の意をこめてとある読書会で本書を読んだ。書名の通り悲しい本である。この tristes というフランス語は「憂鬱な、暗い、うんざりする」という語感があるそうだが、まさにありきたりの感傷とはほど遠いずっしりと重たい本だ。「私は旅や探検が嫌...
レヴィ=ストロースが百歳で没した五年前、哀悼の意をこめてとある読書会で本書を読んだ。書名の通り悲しい本である。この tristes というフランス語は「憂鬱な、暗い、うんざりする」という語感があるそうだが、まさにありきたりの感傷とはほど遠いずっしりと重たい本だ。「私は旅や探検が嫌いだ」という紀行文としてはいささか異様な書き出しは象徴的である。「文明によって乱された海の静寂は、もう永久に取り戻されることはない」という幻滅、「人類の顔に投げつけられた我々の汚物」を目の当たりにする嫌悪、そして何より自らがその幻滅や嫌悪の元凶である西洋文明の一員であることから逃れられないという自己矛盾。旅がもたらすこのような痛ましくもある著者の内省が本書をどうしようもなく重たいものにし、それが読む者の胸に突きささる。 もちろん本書には未開社会への哀惜や西洋文明への批判に尽きない様々な顔がある。自伝的回顧に始まり、構造主義の生い立ちとエッセンス、著者の数少ないフィールドワーク、イスラムやインドを含めた比較文明論、良質の紀行文学等々、読者の興味によっていろんな読み方ができる。著者の愛したプルーストの文章を彷彿とさせる「日没」のきらめくような描写には眩暈すら覚える。しかし抽象度が高く極めて洗練されたその文体は寝転んで気軽に読める旅行記とはわけが違う。構造主義入門のつもりで本書を手にした読者も途方に暮れるに違いない。 本書の中で著者自身が言及しているように、構造主義がマルクス、フロイト、ソシュールからヒントを得ていることは確かだが、しばしば誤解されるように〈上部構造と下部構造〉〈意識と無意識〉〈パロールとラング〉といった二元論を前提に両者の決定論的な関係を考えているわけではない。そうした誤解は構造主義が人間をあたかも構造の操り人形と看做すものだという批判を招き、それがポスト構造主義の流れにもつながるのだが、少なくともレヴィ=ストロースに関する限り、その構造概念はもっと控えめなものだ。彼のトーテムや神話分析に見られるように、それは諸要素間の差異に基づく分類体系であり、世界解釈のコードとでも言うべきものだ。そうした分類体系は差異にのみ基づくものであるが故に、別の分類体系に変換可能であり、したがって様々な社会に観察される構造の間に優劣はない。未開人は未開人なりの合理的な「知の体系」を持っているということだ。 以上はレヴィ=ストロースの別の著作(『野生の思考』『構造・神話・労働』)やその解説書(小田亮『レヴィ=ストロース入門』)から学んだことを評者なりに再構成したものだが、こうした構造主義の基本的な考え方をある程度理解して臨めば本書の味わいも増すだろう。
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