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時のかけらたち
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時のかけらたち

須賀敦子(著者)

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時のかけらたち

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 青土社
発売年月日 1998/06/30
JAN 9784791756469

時のかけらたち

¥1,760

商品レビュー

4.3

8件のお客様レビュー

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2025/10/21

この人のヨーロッパ……主にイタリアの文化を、長く過ごすことや人との出会いを通じて落とし込んでいくような文章がすごく好きだ。でも書いてあることの半分も実感できていないと思う。わたしもこういう落とし込みを人生の中でできていけたらなぁと思う。

Posted by ブクログ

2025/10/21

『ミラノ霧の風景』を読んで頭をガーンとやられて、次に読んだ本。「時のかけらたち」というタイトルが気に入ったのである。私の場合、須賀さんの本に求めるものは、何と言っても、イタリアの詩である。本文に掲載されているイタリアの詩を拾い読みするのが楽しみである。そういう詩の中から、幾つか紹...

『ミラノ霧の風景』を読んで頭をガーンとやられて、次に読んだ本。「時のかけらたち」というタイトルが気に入ったのである。私の場合、須賀さんの本に求めるものは、何と言っても、イタリアの詩である。本文に掲載されているイタリアの詩を拾い読みするのが楽しみである。そういう詩の中から、幾つか紹介したい。 ●「月と少女とアンドレア・ザンゾット」の冒頭の詩  Luna puella pallidula  月、青白い少女。 須賀さんは、「こんなフレーズを、アンドレア・ザンゾットから送ってきた自選詩集にあった詩「1957年、9月13日(ヴァリアンテ)」にみつけたとき、こころの底がしずかに濯われる感じがしたので、これは覚えておきたいとノートに書きつけてから、枕もとの明りを消した」と述べている。 ●「サンドロ・ペンナのひそやかな詩と人生」の冒頭の詩  ぐっすりとねむったまま生きたい  人生のやさしい騒音にかこまれて。 須賀さんは、「20世紀のイタリアでもっとも心をやすめてくれる抒情詩のひとつを私たちにのこしてくれた」と述べている。 それから、1939年の第一詩集『Poesie詩集』より  人生は……夜明けの列車のなかの  かなしい目覚め、たよりないひかりが  窓のそとに見えて、どこもかも痛む  からだに、肌を刺す空気のまっさらで  とげのあるメランコリーを感じること。  だが、不意の解放を思い出すのは、  なによりもいとおしい。ぼくの  そばには若い水兵がひとり、制服の  ブルマリンと白、そしてそとには  いちめんの色がさわやかな海。 それから、「詩華集などによく出ている La veneta piazzetta という作品」から  ヴェネツィアの小さな  広場は古風で哀しげで、海の  香りを愉しんでいる。また、  ハトの飛翔を。だが、記憶に  残るのは――光はそのまま  恍惚をもたらし――自転車の  少年がさっと通りすぎ、友に  よびかける、眼に似た空気の  そよぎ。「きみ、ひとりなの?」 須賀さんは、「ペンナはいい詩人だ。そこまで教えてくれて、夫は死んだ。(略)ふしぎなことに、夫の死後、知的な意味からいって、私がもっとも近づいた友人のふたりが、ペンナの礼賛者だった」と述べている。 うーむ、須賀さんの詩のセンスはすごいなと思う。 お終い

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2023/10/19

もうずいぶん慣れ親しんだはずの須賀さんの文章が、今回はなぜかすんなりと頭に入ってこない。 舗石を敷いた道を革靴で歩いているように、でこぼこしていてなんだか読み難い。 読み始めてしばらく、そんな違和感を感じていたが、やがて懐かしい哀しみに出会うことができた。/ 【さらに、序文の...

もうずいぶん慣れ親しんだはずの須賀さんの文章が、今回はなぜかすんなりと頭に入ってこない。 舗石を敷いた道を革靴で歩いているように、でこぼこしていてなんだか読み難い。 読み始めてしばらく、そんな違和感を感じていたが、やがて懐かしい哀しみに出会うことができた。/ 【さらに、序文の書き手は、ナタリアの(略)自伝的作品について彼女自身が書いた、「小説はすでに書かれていた、それに存在をあたえるためには、それにかたちと肉を与えるためには、それ[すでに書かれているもの]を〈道具として使〉えばいいのだということを、私はさとった」というコメントを引用する。そして、いう。作者は、それまで小説は書くものだと信じていた。が、あるとき「読むように」書けばいいのだと考えつき、それが彼女のあたらしい文体の発見につながったのだろう。】(「チェザレの家」)/ 【河原の石が白いのか、それとも月明りで白くみえたのか。とげのある灌木の枝を手で分け、まばらな常緑樹の林をぬけたところに、それはあった。夏の満月に照らされ、白一色の光につつまれたポン・デュ・ガール、ちょうど二千年ほどのむかしに、古代ローマ帝国の人々がニームの街に水を引くためガール川に渡した水道橋だ。川幅いっぱいにかがやく三層の白いアーチは、まるで人しれず地上に降りて遊ぶ天の帆船だった。夜の鳥がひと声、するどく啼いて、暗い谷あいに消えた。 ー中略ー 昼間だと、あの上を渡れます。ジャックがいった。いいのよ、渡らなくても、このままで。これまでに見た、いちばん美しいものみたいな気がするわ。ジャックが頬をあからめたのが、月の光でわかった。もういちど、彼がいった。あなたをここに連れてきて、よかった。】(「ガールの水道橋」)/ この作品が、須賀さんの最後のエッセイとなった。 彼女が企図していた小説も書かれずに終わってしまった。 だが、 《有機体が死んでも生は残る。》(ジル・ドゥルーズ『記号と事件』) のである。

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