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不正義の克服 アマルティア・セン『正義のアイデア』を本音で読み解く
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商品詳細
| 内容紹介 | |
|---|---|
| 販売会社/発売会社 | 明石書店 |
| 発売年月日 | 2025/05/22 |
| JAN | 9784750359229 |
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不正義の克服
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この文書は、アマルティア・センの『正義のアイデア』における**「実現比較アプローチ」**を中心とした正義論の包括的な解説です。センは、ロールズらの**「超越的制度主義」**(理想的な制度の追求)を批判し、現実の不正義を具体的に是正することに焦点を当てる新たなアプローチを提唱してい...
この文書は、アマルティア・センの『正義のアイデア』における**「実現比較アプローチ」**を中心とした正義論の包括的な解説です。センは、ロールズらの**「超越的制度主義」**(理想的な制度の追求)を批判し、現実の不正義を具体的に是正することに焦点を当てる新たなアプローチを提唱しています。アダム・スミスの**「公平な観察者」**概念を再評価し、個人の主観的偏見を超えた客観的判断の重要性を強調するとともに、1943年のベンガル大飢饉の事例を通じて、制度設計だけでなく実際の運用や人々の「声」が不正義の克服に不可欠であることを示しています。 センの理論的革新の核心は**「ケイパビリティ・アプローチ」**にあります。これは従来の所得や基本財の平等ではなく、人々が実際に「生きられる自由」や「達成できる能力」に注目する評価枠組みです。**マーサ・ヌスバウムの「ケイパビリティの10のリスト」**(生命、健康、教育、政治参加など)が具体的な指標を提供し、貧困を単なる所得不足ではなく**「ケイパビリティの剥奪」**として再定義します。このアプローチは、同じ所得水準でも年齢、性別、健康状態、地域環境の違いによって享受できるケイパビリティが大きく異なることを考慮し、個々のニーズに応じた政策立案を可能にします。 正義の実現において、センは**「公共的推論(public reasoning)」**と民主主義の役割を重視します。民主主義は単なる多数決ではなく、多様な意見を統合し熟議を通じて合意形成を目指すプロセスとして捉えられます。**ケネス・アローの「一般不可能性定理」**が示す社会的選択の困難に対し、センは人々の行動が自己利益だけでなく**「コミットメント」**(他者や公共の利益への配慮)によっても動機づけられることで、より広範な合理性概念による解決可能性を示唆します。また、報道の自由と言論の自由が飢饉防止に果たす役割を実証的に論じ、民主主義の実践的有効性を強調しています。 センの正義論において**「不偏性」**の概念は中核的位置を占めます。エドマンド・バークとメアリ・ウォルストンクラフトの対比を通じて伝統と理性の緊張関係を検討し、アダム・スミスの「公平な観察者」が個人の偏見や利害関係を超えた客観的判断を可能にすることを論じます。しかし重要なのは、自国の視点に留まらない**「開放的な不偏性」**の必要性です。16世紀のアクラル皇帝の**「ディーン・イラヒ」**(多様な宗教・思想との対話を重視した統治理念)を現代的に再評価し、異なる文化や背景を持つ人々の意見を取り入れることの重要性を示しています。 現代社会における正義の追求は、必然的に**グローバルな視点**を要求します。気候変動、感染症、経済格差など国境を越える問題に対し、センは**「人権の普遍性」**と**「グローバルな義務」**を強調します。人権は生命、自由、教育、医療などの基本的ケイパビリティを保障するものであり、国家のみならず企業やNGOなどの非国家主体にも「不完全な義務」を課すものとして位置づけられます。国連のSDGs(持続可能な開発目標)は、こうした人権とグローバルな義務を具現化する具体的枠組みとして評価されています。 センの正義論は、倫理学における**「帰結主義」**と**「義務論」**の統合を図る**「複合的アプローチ」**を採用しています。インド叙事詩『マハーバーラタ』のアルジュナとクリシュナの対話を援用し、行動がもたらす最終的結果だけでなく、その過程や動機・義務も総合的に考慮すべきだと主張します。これにより、理想的な正義の概念を追求するよりも、現実の不正義を是正するための具体的行動と、そのための公共的推論のプロセスを重視する実践的な正義論が構築されています。ケイパビリティ・アプローチは正義実現のための「材料」を、民主主義と公共的推論はその「推論の形」を提供する相互補完的な関係として整理されているのです。
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