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技術哲学入門 ポスト現象学とテクノサイエンス
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技術哲学入門 ポスト現象学とテクノサイエンス

ドン・アイディ(著者), 稲垣諭(訳者), 増田隼人(訳者), 沖原花音(訳者)

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技術哲学入門 ポスト現象学とテクノサイエンス

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 晶文社
発売年月日 2025/04/28
JAN 9784794974709

技術哲学入門

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2025/05/27

この文書は、アメリカの技術哲学者ドン・アイディによる『技術哲学入門 ポスト現象学とテクノサイエンス』の詳細な分析です。本書は、現象学とプラグマティズムを融合させた「ポスト現象学」という独自の視点から、現代の科学技術(テクノサイエンス)を理解しようとする試みです。アイディは北京大学...

この文書は、アメリカの技術哲学者ドン・アイディによる『技術哲学入門 ポスト現象学とテクノサイエンス』の詳細な分析です。本書は、現象学とプラグマティズムを融合させた「ポスト現象学」という独自の視点から、現代の科学技術(テクノサイエンス)を理解しようとする試みです。アイディは北京大学での連続講演を基に、従来の技術哲学が陥りがちなロマン主義的・ディストピア的傾向を克服し、具体的なテクノロジー経験の分析を通じて技術と人間の関係を捉え直すことを目指しています。 **ポスト現象学の構築プロセス**では、アイディは三つのステップを踏んでいます。まず、フッサールの現象学とデューイのプラグマティズムとの融合を図り、認識論的二元論の克服を試みます。次に、現象学の「変更理論」「身体化」「生活世界」という概念を用いて、テクノロジーの「多重安定性」(一つのものが多様な現れ方をする性質)を分析します。最後に、オランダの技術哲学者たちが提唱した「経験的転回」を取り入れ、抽象的な技術論ではなく、具体的なテクノロジーの事例研究を重視するアプローチを採用します。この三段階の統合により、修正されたハイブリッドな現象学としてのポスト現象学が完成されます。 **技術哲学の歴史的展開とテクノサイエンス概念**について、アイディは19世紀末から現代に至る技術哲学の変遷を概観します。初期の技術哲学は主に悲観主義的・楽観主義的な二極化した議論に終始していましたが、ハイデガーの道具分析や後期技術論、メルロ=ポンティの身体化された知覚論などの現象学的洞察により、より精緻な分析が可能になりました。現代では「テクノサイエンス」、すなわち科学と技術が不可分に結びついた状態が支配的であり、アイディは人間とテクノロジーの関係を「身体化」「解釈学的」「他者性」「背景的」という四つの類型で分析し、これらが多重安定的で相互変容的な「関係の存在論」に基づくことを示します。 **画像化技術の事例分析**では、ポスト現象学の「経験的転回」が具体的に実践されます。天文学の歴史を通じて、古代の肉眼観察から17世紀の望遠鏡による第一革命、そして20世紀後半の電波望遠鏡やデジタル技術による第二革命へと、画像化技術の発展が科学的知識の革命を引き起こしてきたことが示されます。現代の画像化技術は単なる知覚の拡張にとどまらず、センサーが捉えたデータをコンピュータ処理によって人間が認知可能な画像へと「翻訳」する「物質的解釈学」のプロセスを含みます。これにより、宇宙背景放射やブラックホールといった直接観察不可能な現象が「見える」ようになり、宇宙観の劇的な変容をもたらしました。 **物質的解釈学への拡張**として、アイディは前章までの科学技術分析を人文科学・社会科学領域へと応用します。伝統的解釈学が言語テクスト中心であったのに対し、物質的解釈学は「沈黙しているものに声を与える」ことを目指します。アルプスで発見されたミイラ「エッツィ」の事例では、言語的記録が一切ないにもかかわらず、炭素年代測定、CTスキャン、DNA分析などの科学技術により、5300年前の人物の詳細な生活史が明らかになりました。さらに、音響テクノロジーを用いたアート作品や、GPS衛星のデータを音楽に変換する試みなど、視覚以外の感覚モダリティを通じた解釈の可能性も探求されています。 **全体的な意義**として、本書は従来の自然科学と人文科学の境界を架橋し、それらを連続的なものとして捉え直す視点を提供します。ポスト現象学的アプローチにより、科学的知識の生産が本質的に技術的に身体化された営みであることが明らかになり、テクノロジーが受動的な道具ではなく世界認識を積極的に構築する主体的な存在であることが示されます。これにより、現代のテクノサイエンス時代における人間とテクノロジーの複雑で動的な相互関係を、より適切に理解するための理論的枠組みが提供されているのです。

Posted by ブクログ