ロブスター

篠田節子(著者)

• 販売会社／発売会社: KADOKAWA
• 発売年月日: 2024/09/30
• JAN: 9784041153291

商品レビュー

2024/11/02

きちんと現地取材をした”ほんものの”ルポを書く資金を得るために、フリーライターの寿美佳はある仕事を請け負う。オーストラリアで囚われの身となって強制労働をさせられている博士の夫を助け出してくれ、という妻の依頼を受けたのだった。さて、オーストラリアに着き、砂漠の中で鉱山を掘っている当の博士に会うと、自由意志でここにいるという。

博士はアメリカで原理主義の大統領の下、教義にあわない主張をして追放された。時は流れ今は違う大統領になっているから大丈夫だ、といっても聞き入れない。民衆はその時々によって揺り動かされるし、自分は今この砂漠の大地でクレーンを操り、夜はサソリを取って食べるのが幸せなのだという。表紙は乾いた小さい星で、サソリ～ロブスターを釣る博士と寿美佳。どこか星の王子様を思わせる絵柄。

その人にとって「幸福」、「平穏」とは何か、を篠田氏は問う。以前読んだ「エデン」に少し似ていると思った。「エデン」は日本の若者が就職前に旅行に行った先で囚われの身となり、そこで結婚し時間が経つ、という話だった。「エデン」を読んだ時、結婚も就職も、囚われ、絡めとられ、そこで時間が過ぎ、するとそこにある種の満足が得られるなあ、と妙に納得したのだった。

時代はほんの少し先の未来を設定。地球は温暖化が進み、自然の農産物もほとんどとれなくなっている。一方自動車や住居なども自動化が進んでいる、という世界。オーストラリアの砂漠と、そこにいる、訳アリの同僚たちにもそこに来るまでの背景を風刺をこめて描いている。

初出
「小説野生時代」2024年8月号、9月号

篠田節子さんインタビュー（カドブンnote　2024.10.3）
https://note.com/kadobun_note/n/nbb6184719021

「エデン」（「はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか」に所収）

2024.9.28初版　図書館

2024/10/25

作者は一体この作品を通して何を言いたかったのかよくわからなかった。
近未来小説であることには間違いない。

2024/10/13

温暖化の一層の進行でディストピアと化した未来の地球を舞台に展開される奇妙な物語。
主人公は“自称”ジャーナリストの寿美佳で、発生生物学のクセキナス博士の妻から「オーストラリアの鉱山から博士を救出してほしい」という依頼が届く。金のためにその依頼を受けた寿美佳は、オーストラリアに飛んだが……。
壮大なスケールの割にはこぢんまりした話である。圧巻は超巨大な掘削機の描写だ。本当はこれが主人公なんじゃないかと思うほど力が入っている。
この先、人類に未来はないのだろうが、それでも経済活動は続くという馬鹿らしさも感じた。