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賃金とは何か 職務給の蹉跌と所属給の呪縛 朝日新書963
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 朝日新聞出版 |
発売年月日 | 2024/07/12 |
JAN | 9784022952745 |
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商品レビュー
3.7
6件のお客様レビュー
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賃金の決め方や上げ方がどのように議論されてきたか,実際に決められてきたかの歴史的経緯を記した本。知らないことが多かった。特に,ベースアップが総賃金抑制の議論から出てきたこと,日本の船員がジョブ型の賃金の決め方であること等々。派遣労働者の労使協定方式における平均賃金の詳細も知らな...
賃金の決め方や上げ方がどのように議論されてきたか,実際に決められてきたかの歴史的経緯を記した本。知らないことが多かった。特に,ベースアップが総賃金抑制の議論から出てきたこと,日本の船員がジョブ型の賃金の決め方であること等々。派遣労働者の労使協定方式における平均賃金の詳細も知らなかった。 団体交渉で賃上げを主張するけど,支払い能力のことを気にしてしまって,どうしたものかと思っているときにこの本を読んだ。「産業横断的な連帯どころか,企業を超えた産業別の連帯すら極めて希薄な」(302ページ)中で,本書で書かれている歴史的な経緯を踏まえてどうしていくか考えていけたら…。
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日本の賃金制度の変遷を整理したもの。その記述は簡便なものであるが、明治期や大正期の賃金制度から始まっており、通史的に知ることが出来る。 ただ、自分の興味の対象は、主としてバブル崩壊期以降のもの、せいぜい広く考えても、第二次大戦後のもの。 大戦後の流れを簡単に整理すると、①電産型...
日本の賃金制度の変遷を整理したもの。その記述は簡便なものであるが、明治期や大正期の賃金制度から始まっており、通史的に知ることが出来る。 ただ、自分の興味の対象は、主としてバブル崩壊期以降のもの、せいぜい広く考えても、第二次大戦後のもの。 大戦後の流れを簡単に整理すると、①電産型生活給的賃金②経営側による職務給の提唱(実現せず)③職能資格制度をベースとした職能給体系(少なくとも大企業の多くはこの方に落ち着いたはず)、ここまでが高度成長期~安定成長期④オイルショック後、労使の関心が「賃金」よりも「雇用維持」に移行⑤うたかたのバブル期⑥バブル崩壊~経済低迷期での労務費抑制施策、ということだと理解している。 特に⑥の時代について言えば、相当の長い期間、ベアがほとんどの企業でない、あるいは、あっても低率・低額のものという時代が長く続き、また、非正規雇用の比率を上げることにより給与や社会保険負担や教育訓練費を節約し、バブル崩壊後の景気低迷期を、企業側が何とか乗り切ろうとした時代が長く続いた。この間、定昇(定期昇給)は維持されたため、その恩恵にあずかる大企業・中堅企業の社員は、それなりに給与は上がっていったが、定昇は理論的にはコストニュートラルなので、大企業・中堅企業でも平均的な労務費は上がらず、その恩恵にあずからない中小企業労働者なども含めると、日本全体平均的な賃金が上がっていない構造をつくってしまったことになる。 教育訓練費用を基本的にかけない非正規雇用の割合を増やし、また、実際に正社員の教育訓練費用も削減し、その分のコストは削減できたけれども、人的資本の充実が実現しなかったことも一因となり、日本の生産性は向上せず、賃上げ原資が確保できずに、コスト削減による利益確保という企業経営がずっと続いた。 それらの結果が、生産性の低迷・消費者支出の低迷(賃金上がらず、税金や社会保険は上がる)による日本企業の低迷であったと言えるのではないかと思う。ある意味で、自業自得的なことを日本社会全体で行ってきたということなのではないかとも思う。 ここからどうやって抜け出すか、である。 アベノミクスでは、異次元の金融緩和策をとり、金を余らせることにより、インフレを起こし、そこを起点に景気を回復させようとしたが、それは、あまりうまくはいかなかった。物価は上がったが、給与所得者の可処分所得は上がらず、生活が苦しくなっただけという状態が生れた(株高などが起こったので、資産保有者は豊かになったが)。実体のない錬金術的な政策は、やっぱりうまくいかないということだと思う。 システムを好転させる出発点は、生産性の向上だと思う。これがない限り、給料は上がらない(官製春闘で一時的に高ベア率を実現しても、生産性が見合って上がらなければ意味がない)。では、生産性はどうやって上げるのか、ということで言えば、地道に人的資本に投資すること、人々の教育水準を上げ、企業内での教育訓練を充実させること、これを、これまでやって来なかった分をカバーするために、少なくとも数十年間続けること、くらいしかないのではないだろうか。 人びとが知識を得て、スキルを身につける、そうやって、仕事の生産性を上げて行くという単純な話ではあるが。
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