1,800円以上の注文で送料無料

賃金とは何か の商品レビュー

3.7

6件のお客様レビュー

  1. 5つ

    0

  2. 4つ

    2

  3. 3つ

    1

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2024/11/07

配架場所・貸出状況はこちらからご確認ください。 https://www.cku.ac.jp/CARIN/CARINOPACLINK.HTM?AL=10280048

Posted byブクログ

2024/10/01

 賃金の決め方や上げ方がどのように議論されてきたか,実際に決められてきたかの歴史的経緯を記した本。知らないことが多かった。特に,ベースアップが総賃金抑制の議論から出てきたこと,日本の船員がジョブ型の賃金の決め方であること等々。派遣労働者の労使協定方式における平均賃金の詳細も知らな...

 賃金の決め方や上げ方がどのように議論されてきたか,実際に決められてきたかの歴史的経緯を記した本。知らないことが多かった。特に,ベースアップが総賃金抑制の議論から出てきたこと,日本の船員がジョブ型の賃金の決め方であること等々。派遣労働者の労使協定方式における平均賃金の詳細も知らなかった。  団体交渉で賃上げを主張するけど,支払い能力のことを気にしてしまって,どうしたものかと思っているときにこの本を読んだ。「産業横断的な連帯どころか,企業を超えた産業別の連帯すら極めて希薄な」(302ページ)中で,本書で書かれている歴史的な経緯を踏まえてどうしていくか考えていけたら…。

Posted byブクログ

2024/09/23

日本の賃金制度の変遷を整理したもの。その記述は簡便なものであるが、明治期や大正期の賃金制度から始まっており、通史的に知ることが出来る。 ただ、自分の興味の対象は、主としてバブル崩壊期以降のもの、せいぜい広く考えても、第二次大戦後のもの。 大戦後の流れを簡単に整理すると、①電産型...

日本の賃金制度の変遷を整理したもの。その記述は簡便なものであるが、明治期や大正期の賃金制度から始まっており、通史的に知ることが出来る。 ただ、自分の興味の対象は、主としてバブル崩壊期以降のもの、せいぜい広く考えても、第二次大戦後のもの。 大戦後の流れを簡単に整理すると、①電産型生活給的賃金②経営側による職務給の提唱(実現せず)③職能資格制度をベースとした職能給体系(少なくとも大企業の多くはこの方に落ち着いたはず)、ここまでが高度成長期~安定成長期④オイルショック後、労使の関心が「賃金」よりも「雇用維持」に移行⑤うたかたのバブル期⑥バブル崩壊~経済低迷期での労務費抑制施策、ということだと理解している。 特に⑥の時代について言えば、相当の長い期間、ベアがほとんどの企業でない、あるいは、あっても低率・低額のものという時代が長く続き、また、非正規雇用の比率を上げることにより給与や社会保険負担や教育訓練費を節約し、バブル崩壊後の景気低迷期を、企業側が何とか乗り切ろうとした時代が長く続いた。この間、定昇(定期昇給)は維持されたため、その恩恵にあずかる大企業・中堅企業の社員は、それなりに給与は上がっていったが、定昇は理論的にはコストニュートラルなので、大企業・中堅企業でも平均的な労務費は上がらず、その恩恵にあずからない中小企業労働者なども含めると、日本全体平均的な賃金が上がっていない構造をつくってしまったことになる。 教育訓練費用を基本的にかけない非正規雇用の割合を増やし、また、実際に正社員の教育訓練費用も削減し、その分のコストは削減できたけれども、人的資本の充実が実現しなかったことも一因となり、日本の生産性は向上せず、賃上げ原資が確保できずに、コスト削減による利益確保という企業経営がずっと続いた。 それらの結果が、生産性の低迷・消費者支出の低迷(賃金上がらず、税金や社会保険は上がる)による日本企業の低迷であったと言えるのではないかと思う。ある意味で、自業自得的なことを日本社会全体で行ってきたということなのではないかとも思う。 ここからどうやって抜け出すか、である。 アベノミクスでは、異次元の金融緩和策をとり、金を余らせることにより、インフレを起こし、そこを起点に景気を回復させようとしたが、それは、あまりうまくはいかなかった。物価は上がったが、給与所得者の可処分所得は上がらず、生活が苦しくなっただけという状態が生れた(株高などが起こったので、資産保有者は豊かになったが)。実体のない錬金術的な政策は、やっぱりうまくいかないということだと思う。 システムを好転させる出発点は、生産性の向上だと思う。これがない限り、給料は上がらない(官製春闘で一時的に高ベア率を実現しても、生産性が見合って上がらなければ意味がない)。では、生産性はどうやって上げるのか、ということで言えば、地道に人的資本に投資すること、人々の教育水準を上げ、企業内での教育訓練を充実させること、これを、これまでやって来なかった分をカバーするために、少なくとも数十年間続けること、くらいしかないのではないだろうか。 人びとが知識を得て、スキルを身につける、そうやって、仕事の生産性を上げて行くという単純な話ではあるが。

Posted byブクログ

2024/09/03

濱口桂一郎著『賃金とは何か : 職務給の蹉跌と所属給の呪縛(朝日新書 ; 963)』(朝日新聞出版) 2024.7発行 2024.9.3読了  岸田政権に入ってベースアップ率が急上昇したが、私は、これは2022年に入って円安が進行して輸入品目を中心に物価が上昇したことが主原因だ...

濱口桂一郎著『賃金とは何か : 職務給の蹉跌と所属給の呪縛(朝日新書 ; 963)』(朝日新聞出版) 2024.7発行 2024.9.3読了  岸田政権に入ってベースアップ率が急上昇したが、私は、これは2022年に入って円安が進行して輸入品目を中心に物価が上昇したことが主原因だと思う。輸入品目の価格上昇を抑えきれないと判断した官邸が、ベースアップで急場を凌ごうと考えた結果の急上昇だったのではないだろうか。  ベースアップがもともと賃金を抑制するための概念として生まれたという筆者の考察を前提にすれば、円高にシフトして物価上昇が収まれば、あるいは、このままインフレが高騰していけば、いずれどこかの地点でベースアップは頭打ちになるだろう。  こうした流れを打破するためにはベースアップという概念を捨てる必要があるというのが筆者の結論であり、その注目株が岸田政権が唱道する職務給ということになるのだろうか。  ベースアップを捨てれば、企業の賃金支払能力を超えた賃金交渉も可能になるとのことだが、そうすると倒産する企業も出てくるかもしれない。失業者も増えるだろう。その点を政府はどう考えているのか。  政府は賃上げ税制を行なっているが、これは赤字企業には何の恩恵もない政策であり、本音はむしろ「経済財政運営と改革の基本方針2023」で掲げている「企業の参入・退出の円滑化」なのかもしれない。  だが、問題は賃金の決め方だけでなく、新卒一括採用や企業別組合という枠組みも変えていかないとうまくはいかないだろう。  あと、驚いたのは、労基法4条が「男女同一価値労働同一賃金」から「男女同一賃金」に変更された理由が、社会党右派の西尾末広議員が反対したからだということ。一般的な労働法の参考書にはそのようなことは一切書いていなかったので驚いた。西尾末広といえば労働運動出身でありながらゴリゴリの反共主義者で、かつファシズムへの共感を隠そうともしない人物だった。仕事の量や質に結びついた職務給よりも家族数を重視する生活給を優先するという思想は皇国勤労観そのものであり、なるほど戦時体制下にあっても国会議員であり続けた西尾末広らしい考え方である。それにしても、日本は1967年にILO第100号条約に批准しているらしいのだが、労基法4条だけでどうして批准に至ったのか、その経緯が非常に気になった。 https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I033569911

Posted byブクログ

2024/08/27

前著『ジョブ型雇用社会とは何か』が秀逸だったので期待して読んだが、前著とは少し趣が違っていた。感想としては「今の自分には少し重い」という感じ。 内容は、戦前から戦中・戦後を経るなかで、日本の賃金体系がどのように変遷してきたかということを、淡々と綴っている。政府・経営者・労働組合...

前著『ジョブ型雇用社会とは何か』が秀逸だったので期待して読んだが、前著とは少し趣が違っていた。感想としては「今の自分には少し重い」という感じ。 内容は、戦前から戦中・戦後を経るなかで、日本の賃金体系がどのように変遷してきたかということを、淡々と綴っている。政府・経営者・労働組合それぞれが、その時々でどのような方針を打ち出して来たのか、豊富な引用を元に解説している。 全体的な流れとしては、戦前は職務に対して賃金が設定されていたのが、戦中の賃金統制を経て、戦後も職務ではなく所属給的な体系が温存される様が描かれる。ただ、著者の労働思想としては、欧米と同じく職務給(ジョブ型)の賃金体系を正しく導入すべきということなので、淡々とした解説の中に、たまに批判的な文言がちょこちょこ見られる。 個人的にはこれが少し気持ち悪くて、解説なら解説だけ、主張があるなら解説書に変に自我を出さずに、それをメインに書けば良いのに、と思ってしまう。(ただし、著者の主張自体には同意する立場。) なお、知見の少ない分野なので、個人的には内容が理解しきれず、後半は目が滑ってしまった。(漢字率高すぎだって)  あとは、日本における現状維持の重力強すぎだと改めて認識するなど。今も所属給的な賃金体系が残ってるのって、戦時下の賃金統制を引きずってるのって、本当になんだかなあ。という感じ。

Posted byブクログ

2024/08/18

日本で長年に渡り賃金が上がらない理由を明治から戦前、戦後の歴史と合わせて解説。 定期昇給があっても日本の賃金が上がらない理由として、賃金総額ありきで制度を適用しているからとあります。定期昇給で年々賃金は個々で、賃金は増えていくが、高い賃金を得ていた高齢の労働者が定年などで抜け、新...

日本で長年に渡り賃金が上がらない理由を明治から戦前、戦後の歴史と合わせて解説。 定期昇給があっても日本の賃金が上がらない理由として、賃金総額ありきで制度を適用しているからとあります。定期昇給で年々賃金は個々で、賃金は増えていくが、高い賃金を得ていた高齢の労働者が定年などで抜け、新たに新卒などの賃金の低い労働者が加わることで、賃金総額は変わらないためという。 また、日本は欧米のような個々のジョブ型雇用社会ではなく、企業ごとのメンバーシップ型雇用社会のため、個人と業務を結びつける職能級よりも職務級が適用されている部分も大きい。 日本は欧米の様な契約社会とは違うので(何となくその場の空気に流されている部分もありますが)、一概にどちらの制度が正しいかは、分かりませんが、かっての一度入社した会社で勤め上げるという時代でもなし、日本も世界の枠組みの中に組み込まれていることを考えると、ジョブ型雇用社会になっていくのは必然の流れかと思いました。 であれば、生涯にわたって、技術の習得ができる教育制度に誰もがアクセスできる環境もまた、必要かと感じました。

Posted byブクログ