図説 錬金術 新装版 歴史と実践 ふくろうの本

吉村正和(著者)

• 販売会社／発売会社: 河出書房新社
• 発売年月日: 2024/06/24
• JAN: 9784309763330

商品レビュー

2025/03/20

化学と医学に多大な影響を与えた思想である錬金術についての解説書です。
書名に図解とあるように、挿絵や図が沢山掲載されています。
錬金術の基礎知識、歴史、理論と実践、思想としての錬金術、の順に解説されています。
後半の実践あたりは魔術的で理解し難い内容となり読了に苦労しました。
錬金術は当初から学問というよりは思想として発展し、不完全なものを完全なものへ変化させることを目的に一貫していました。
人工生命体のホムンクルスや賢者の石の生成はキリスト教社会と錬金術が融合する中で醸成されたものです。
卑金属を貴金属に変えることが第一目標ですがその進捗が芳しくないことから様々な方向へ脱線して、科学から魔術へ変貌してしまったところに間違いがあったものと考えます。
誰が行っても同じ結果となる「検証」が不可能な不老不死薬やホムンクルスなどの与太話が錬金術を弱らせ、化学がとどめを刺すことになったのです。
とはいえ総合的な自然科学が発展していない時代に真理へ挑んでいた錬金術師たちは、決して愚か者ではなく尊敬すべき学者・技術者でした。
彼らの仕事がなければ今の世はあり得ず、本書を読んで改めて感謝されるべき偉人たちなのだと考えさせられました。