えどめぐり 名所 時代小説傑作選 PHP文芸文庫

アンソロジー(著者), 宮部みゆき(著者), 朝井まかて(著者)

• 販売会社／発売会社: PHP研究所
• 発売年月日: 2023/10/11
• JAN: 9784569903484

商品レビュー

2025/11/13

宮部みゆきさんは、好きなので既に読んでいたが久しぶりに読んで新鮮に楽しめた。普段あんまり読まない恋愛話で『名水と葛』が良かった。江戸の風を感じられる良いアンソロジーだった。

2025/06/06

短編5編収録
「後の祭」朝井まかて
「名水と葛」篠綾子
「鐘ヶ淵ー往還」田牧大和
「両国橋物語」宮本紀子
「凍る月」宮部みゆき

個人的に好きだったのは「名水と葛」と「鐘ヶ淵」、「凍る月」であった。「両国橋物語」も好きだったのだが、最後が、なぜそのオチにしたのかと問いたくなる結末で泣いた。

「名水と葛」はほんのりと心温まる筋書きで、お鶴と仁助の幸せを願いたくなる物語だった。

「鐘ヶ渕」はどうやらシリーズらしい。その分設定は凝っているのだが、この作品が初見だと意味を汲み取り辛いところが幾つかある。しかし、話としては面白そうなので、「とんずら屋請負帖」シリーズを機会があれば手に取ってみようかと思った。
そういう点ではアンソロジーとしての役割をしっかり果たしていると言えるだろう。

「凍る月」は宮部みゆき「初ものがたり」の茂七が主役である。「初ものがたり」は読んだことがあるので、すぐに懐かしい気持ちになりのめり込むことができた。そして、久々のみゆき節である。
松太郎のクズさ加減、とくとご覧あれ、てなもんである。

現代にも残っている地名が随所に現れるので、脳裏に思い描きながら読んだ。
両国橋から神田まで歩くのか、いやまぁ歩けるか、と脳内でシミュレーションを繰り返す。
季節涼しい折に、歩いてみるのも乙なものかもしれない。

2025/02/09

アンソロジー、しばらくご無沙汰してましたが、久々読んでやはり良き。と。
恋物語が2作。「名水と葛」はもう、申し分の無い恋物語。薬草学者の彼が頭の中では超イケメン化されツンデレ具合も相まって最高です。
一方「両国橋」は悲恋だけど、ちょっと大人な深みのある男女の恋物語。橋の街江戸の悲喜が浮かぶ。
「鐘ヶ淵」は親子の縁、子を亡くす、親と会えない、今以上に複雑だけど、人が人を想う力は変わらないのかも。
そして「凍る月」。どうして宮部みゆきは「回向院の茂七」を書いてくれないのか？と常々思っている私にはとどめの一作。茂七の心の動きと言い、キャラの配置と言い最高なんだが。屋台の親父がめちゃくちゃカッコイイんだが。そして宮部みゆきの使う言葉の魅力。「頭に壁で穴を開けられそうなほど尖ってる」…笑ってしまうけど、一人息巻いてるピリピリ感をこんな風に表現するなんて凄すぎる。そして凍てつく空に「真ん中で割れたまま、放り投げられ空に引っかかった月」本当に見上げたら、寒い夜空にはこういう月が掛かるだろう。江戸に迷いこんだように。